19-安請け合いしすぎた⁉
「なにこれ?」
予約したカレーの店の前まで来た俺とルーカスは目の前の光景に仰天した。そこには長蛇の列が作られていたのだ。
……なぜにこんなに。もしかして夜は混むのかな? やばい、せっかく予約したのに待つとか残念すぎるよ。
「キリュウさん、すごい行列ですね。こんなの初めて見ましたよ」
そこへアーロたちが合流してきた。アーロたちもこの行列に困惑しているようだ。なぜに楽しみにしていた日にこんなことが起こるのか。こんなトラブルは少女漫画の世界限定ではないのだろうか。
「……これ」
困惑しているなかフィンが看板に指をさした。
『”先着100名限定アイゼンベアードカレー”ある傭兵の手によって倒されたアイゼンベアードを交渉のすえ手に入れた。こんな高価な肉は今日限定‼ お値段はなんと小銀貨1枚。一生に一度食べられるかわからないよ。さぁ、早く、早く‼』
看板にはそう書かれ、宣伝されていた。結構あまるだろうと思っていたけどまさか、100名分もあるとわ。
……小銀貨1枚ってもしかして、安請け合いしすぎた⁉
ただ、困った。店の前は長蛇の列を作っていてかってに入るとあとが大変そうだ。でも、予約したのに並ぶのもなんかな~。日本なら店員に言えばすぐ通されるのに外に店員がいないから尋ねることもできない。
「すみません、すみません。キリュウさんですか?」
背後から名前を呼ばれた。振り返るとこのカレーの店の制服を着た男がいた。
「はい、そうですけど」
「来て下さい」
俺たち5人はその店員に連れられ店の横にある路地から店の裏側に通された。店の裏側は暗く生ゴミがたまっているのか結構臭ってくる。
「すみません。本来こんなところお客様に通すところじゃないんですが」
「しょうがないですよ。あれだけならんでちゃ」
裏口から店に入るとそのまま2階の部屋に案内された。その部屋には長机と椅子が5脚おいてあった。机の上に蝋燭が置いてあるだけで壁には何もなく、うす暗く寂しい感じすらある。
案内されるまま席に座ると昨日予約したときの店員がやってきた。
「いらっしゃいませ、店長のアダンです。今回はアイゼンベアードの肉を譲っていただきありがとうございました。おかげで大変繁盛することができました。本日はお礼として最高級のカレーを提供します。どうかお楽しみください」
そういって、店長と店員は出て行った。
「すごいね~。まさかこんな待遇を受けるなんてお金持ちになった気分だよ」
店員たちが出て行くとルーカスは真っ先に話し始めた。
「正面からはいれないからこの部屋が割り当てられただけじゃないんですか」
「まぁ、それも理由のひとつだろうけど個室を割り当てられるなんて貴族や富豪しかイマージないからね」
「あぁ、おいらも21年生きてきたがこんな待遇初めてだ」
俺の疑問にルーカスとライアンが答えてくれた。
……まぁ、お金持ちみたいな待遇をされるのは気分がいいのはわかるけど個室が珍しくなかった日本で育った俺にはなぁ~。
この部屋は机、椅子、燭台などの最低限のものしかない。知り合い以外いないのはうれしいけどせっかくのカレーのにおいがしてこない。カレーというものは食べるときがおいしく一番いいのだが、待っているときにその匂いに楽しみに思えるのもある。しかも、窓があるわけではなく外の景色が見えず、部屋が暗いのだ。
そんなことを思っていると店員たちがカレーを持ってきた。
……あぁ、この匂いだよ。
カレー特有の匂いが部屋中に漂ってきた。
5人分のカレーとパンが机に置かれると店員はすぐに出て行った。相当忙しいのだろう。
「「「「「いただきます」」」」」
「うまっ、うまっうま。」
ライアンがものすごいスピードでカレーを掻き込む。
「これは、肉汁がすごいですね。噛めば噛むほど肉汁があふれてきます。カレーと相性もよくすごくおいしいです」
アーロは味わいながらゆっくり食べる。感想もすごく丁寧に。まるで食レポのようである。
フィンも無言でもくもくと食べている。
「キリュウくんこんなおいしいもの食べさせてくれてありがとう」
ルーカスはすごい感謝してくる。
俺も食べるがこの肉はすごい。語彙力がないからすごいとかやばいとかしか言えないけど。
そんな感じで各々アイゼンベアードカレーを堪能した。
食べ終わったあとはルーカスがアイゼンベアードとの闘いの話が聞きたいというのでお酒を堪能しながら俺とアーロそれぞれの視点での話をした。また暴れるわけにはいかないから俺だけ水だが。
そんなこんなで時間はあっという間にたって気づいたら店じまいの時間になっていた。
「キリュウさん今日はありがとうございました。おかげで開店以来最高のお客量でした。またのご来店お待ちしています」
「こちらこそありがとうございました。カレーすごくおいしかったです」




