9-実戦
「では実戦へ向かいましょう」
昼ごはんの後アーロが急にそう言いだした。
……実戦って? もしかしてもうあの平原に戻るの?
「いやいやまだ早いんじゃ~。だって昨日この国に来たばかりだよ」
「でも、戦闘を経験しないと強くはなれませんので。それにいつまでも休んでいるわけにもいきませんし」
そんなこんなで俺の必死の抗議も意味をなさず国から出ていった。
そしてついた場所はこの前の平原ではなく、国を出てすぐの森だった。
「この森はいろんな野生動物が住んでいますが、軍がよく討伐していますので魔獣はあまりいません。この森なら戦闘経験を積むのに適しているでしょう」
どうやら実戦は国の近くの森で動物狩りらしい。
……よかった。すぐに保存食ばかりの生活になると思ったよ。
というわけで野生動物狩りが始まった。まあやることは隠れて動物を見つけ動物に向かって魔法を放つだけだが。
「まずはお手本としてフィンを見ていてください」
フィンは木に何かを書き茂みに隠れ始めた。木に書いたのはただの二重丸だった。そして数秒後隠れた茂みとは違うところから火の弾が飛んできた。
木の二重丸の内側の部分だけが黒くなり、火が飛んできたところからフィンが出てきた。
「今フィンの動きが見えましたか?」
「いや」
「フィンは今足音を立てず素早くばれないように移動し、魔法を放ちました。そして魔法は木が燃えないよう威力を抑え的の部分だけが燃えるようにしました。」
「フムフム」
「これをいまから動物に向けてやれるようになってもらいます」
魔法はフィンから教えてもらった。『ファイアボール』というただ火の球を放つだけの魔法らしい。これは炎系の魔法使いがよく使う魔法だそうだ。ただこの魔法の火力、速度などを調整できるようにならないといけないらしい。
……いた。
目の前には一匹のウサギがいた。ウサギは地面の草を食べている。
ばれないように少しずつ魔法で狙える位置へ忍び足で向かう。靴の効果があっても流石に走ったりしては足音がなってしまう。
狙える位置についた。ウサギはまだ気づかず草を食べたままだ。
……よし、いける。
腕をウサギの方へ向ける。
「ファイアボール」
腕に火の球が生成される。そして、ある程度大きくなると発射される。しかし、放った魔法はウサギに当たらなかった。ウサギは俺が魔法を放とうとしているときに気付きすぐに逃げていた。
「ファイアボール」
逃げていくウサギに追撃で魔法を撃つがそれでも魔法は当たらなかった。
「また、失敗か……」
これで7回目の失敗になる。
「でもやっと魔法が撃てた」
6回目までは隠れながら近づくところで気づかれた。どうやら少しは成長していると思いたい。
そして初めて魔法を撃って気づいたことがあった。それは魔法の発動時間の遅さだった。ファイアボールと唱えてから魔法がでるまでにタイムラグがあることに気付いた。
ファイアボールを唱えると火の球が形成される。これがすごく遅い。体中から熱を集めているから小さかったらすぐにたまるが小さいと飛ばしたらすぐ消えてしまう。
反省をしているとライアンが俺のところへ来た。
「今日はもう日が暮れる。もう帰るぞ」
訓練1日目は成果は何もなく終わった。
国に帰る道で今日の成果についてみんなで話し合った。他の3人も狩りをしていたようだ。
アーロは鳥を、ライアンは鹿を、フィンはウルフを狩ったそうだ。
少ないと思うがこれには理由がある。3人は交代で俺の監督を行っていたからだ。俺が危険に動物とエンカウントしたときに助けるため。俺が迷子にならないため。
そしてもう一つに狩った動物はその場で血抜きを行わないといけなかったからだ。せっかく狩っても血抜きをしないとすぐ腐ってしまって食べれなくなる。だからその場で血抜きをし、空いた時間に肉の加工まで終わらせていたようだ。
その晩はライアンが狩った鹿を使ったステーキだった。酒場では素材を出せば安く料理を調理してくれるみたいだ。
その晩俺は酒場のマスターに尋ねた。
「火の魔法を練習できるところか?」
俺の魔法は熱ということで場所を気にしないといけない。部屋の中でやったら火災が起こってしまう。だから酒場のマスターに魔法の練習ができるところがないかを聞いてみた。
「ふーむ、練習ができるかどうかわからないがとりあえずついてこい」
そういってマスターはがやがやした店内を他の従業員に任せて俺を連れて出ていった。




