42.暴走車
「おい! ターゲットを確認したぞ!!」
少女はそう言うと隣りにいた大柄な女性に声をかけた。
「ああ、ターゲットに間違いないな」
「ふん、馬鹿面下げて立ってやがる」
少女の方は小柄で手にはスマートフォンのような端末を持っていた。一方大柄な女性は見た目は少女の姉のようにも見えるが、口ぶりからするとこの二人は友達の関係だろうと推測できた。
少女たちの視線の先には別の少女が仲間とともに立っていた、おそらくどこかの星の皇女だろう。
「よし、それでは行動を開始するぞ」
「ああ、うまくやれよ」
二人はターゲットにしている少女に近づいていった。ターゲットの少女は一台のハイカーに仲間とともに乗り込んだ。
大柄な少女の名前はルージュで小柄な少女はキルといった。どちらも惑星ドロイドのゼノアという皇女のガーディアンをしていた。二人は惑星ドロイドの高官から司令を受けていた。ゼノア皇女の護衛と惑星プレア皇女の誘拐である。
そう二人の視線の先にいたターゲットといわれた少女がそのプレア皇女だった。
二人には特殊能力があった。大柄なルージュはダークエネルギーを使用することができた。グロリアと同じ惑星ドロイドの出身で彼女と同じ力が使えた。一方小柄なキルの方は天才的なハッカーであった。彼女の祖父は全宇宙で指名手配になっているハッカーで彼女も祖父の血を色濃く受け継いでいた。
二人はそのままプレアの乗ったハイカーに近づくとルージュが、ダークエネルギーを使って車の動きを止めた。宙に浮いているとはいえハイカーの動きを止めることは容易にできることではない。しかもハイカーにふれることなくダークエネルギーのみで止めるという芸当はジークとルーシーのようなエイシェントを覗いたらこの宇宙中を探しても数人しか居ないだろう。
ルージュがハイカーを止めている間にキルが懐から端末を出してハイカーをハッキングした。
「もういいわ、ルージュ出して」
「了解」
そう言うとルージュはダークエネルギーの使用をやめた。途端にハイカーは走り出した。この間わずかな時間だった。
ハイカーは少し道路を走ったところで停止して運転手が降りてきた。アクセルを踏んだのに動かなかったことで何か違和感を感じたのだろう、運転手はハイカーをしばらく調べていたが、異常がないことを確認し再度走り出した。
「上手くやったか?」
「誰に言っているんだ。当たり前だ」
二人はお互いに笑い合うとそのまま姿を消した。
ハイカーの運転手は別段何も異常がないことを確認するとそのままハイカーに乗って走り出した。
しばらく走り出すと運転手が異常に気づいた。
「あれ! おかしい!」
「どうしたの?」
プレア皇女はかなり焦っている運転手を心配して声をかけた。
「は……はい……そ……その……さっきからブレーキを踏んでいるのですが……効かないんです」
プレア皇女を乗せたハイカーは緊急事態を知らせるランプを灯しながらコントロール不能の暴走車となった。
◇
俺たちはパルタとカレンとラディアの四人で学園を出たあと街に来た。エレオノーラとルーシーとガスパールの三人もこの街で合流する事になったので、合流時間まで俺たちは街をブラブラとウインドウショッピングすることにした。
「すごいわ! ここにある物全部本当に無料で持って行っていいの?」
カレンは目を輝かせながら高級店のウインドウに飾られた服を見ていた。街の大通りを俺たちはあるいていた。この場所にある店は素人目に見ても高級店とわかるほど立派な店が通りの両脇に並んでいた。
「嘘だと思うならこの店でも入って何か貰ってきなさいよ」
パルタが意地悪そうにカレンに言った。
「そ……それもそうね……、わかったわ、この店に入ってあのバックをもらおうかな……」
カレンはそう言うと高級ブテックの前に立って重厚なガラスの扉を開けて入ろうとしたその時。
『ブゥーーーーン!!!』
一台のハイカーが猛スピードで俺たちの横を通り過ぎて行った。
「あぶないなー! どういうつもりだ?!」
暴走車をにらみながら言った。すぐにサイレンを鳴らしながらパトカーのような警備車両が先程のハイカーを追いかけて行った。
「あのハイカー制御不能みたいね」
「なに? どうして?」
「大変! 人が……皇女とガーディアンが乗ったままになってるわ」
「助けよう!」
俺は走り出そうとするとパルタがあの店に入ってと言った。その店の看板にはフライボードと書かれていた。何が売っているのかよくわからない店に入るとパルタがスケボーのような乗り物を指差してこれに乗って追いかけて、といった。俺はわけが分からずそのフライボードを持って暴走車を追いかけることにした。
スケートボードのようなフライボードは地面に置くと起動して少し宙に浮いた状態になった。俺はフライボードに乗ると地面を勢いよく蹴って暴走車を追いかけた。
地面を蹴るとものすごいスピードが出てあっという間にパトカーの後ろに追いついた。
パトカーは前方のボンネットからミサイルのようなものを発射した。パトカーから発射されたミサイルは暴走車の後ろのバンパーに当って突き刺さった。ミサイルには鎖が付いていて、パトカーと暴走車は鎖で繋がれた格好になった。おそらくこのままパトカーの速度を落として暴走車を止めようとしていることがわかった。
警備車両の思惑通り暴走車は徐々にスピードを落としていった。このまま停止すると思っていると突然暴走車の後ろのボンネットからレーザーガンのような物が飛び出してきて、ビーム砲を発砲した。
警備車両と暴走車を繋いでいた鎖に命中し、鎖が切られて暴走車は鎖を引きずりながらどんどんスピードをあげて行った。
鎖を切られた警備車両は反動で後ろに飛んできた。俺は咄嗟に避けると地面を蹴ってフライボードのスピードを上げて暴走車のスピードが上る前に伸びている鎖を掴んだ。
俺はフライボードに乗りながら鎖で暴走車に引っ張られる格好になった。暴走車に引きずられながら鎖を両手で手繰り寄せて暴走車に近づこうとした。徐々に暴走車との距離が近づいたところで暴走車のレーザーガンの銃口が光ったかと思うと足元にレーザーが当たった。たまらず鎖を持つ手を緩めて暴走車との距離をとった。すると暴走車の攻撃がやんだ、どうやら近づくとセンサーが反応して自動で発砲してくるようだった。
どうやって攻撃すれば良いのか悩んでいると耳元でパルタの声がした。
「早く私の渡したレーザーガンで後ろのセンサーを破壊して!!」
びっくりして後ろを振り返るとパルタが俺の首にしがみついていた。
「わ……わかったよ……」
俺は懐からレーザーガンを出して暴走車のボンネットにあるセンサーに向けてレーザーを照射した。
『ビューーーン』レーザー光線は青い光をまとってセンサーに向かってまっすぐ飛んでいったが、『バシューーーン』という音とともにセンサーに当たる前にバリアに跳ね返された。
「ダメよ、距離が離れすぎているわ! もっと近づいて攻撃しないとバリアに跳ね返されるわ!!」
「無茶言うなよ!! これ以上近づいたら蜂の巣になっちまうよ!」
俺とパルタが言い争いをしていると、暴走車が左カーブを曲がった。俺は右に大きく弧を描いて反対車線に飛び出した瞬間対向車がこちらに突っ込んできた。
「危ない!!」
俺は咄嗟にフライボードと一緒に飛び上がった。対向車の上をフライボードで滑走して交わすと今度は大型のワゴン車が突っ込んできた。
今度もフライボードと一緒に飛び上がろうとしたが、無理だと判断して自分だけワゴン車の上に飛び上がった。地面に足がつく瞬間にワゴン車の下を通過したフライボードの上にタイミングよく乗ることができた。
このまま対向車線にはみ出していては命がいくつあっても足りないと思い、急いで左車線に戻ろうと思い勢いよく反動をつけて左車線に戻ったところで、今度は暴走車が右カーブを曲がった。
今度は左に大きく弧を描いて引っ張られたと思ったら、大型のトラックが左から突っ込んできた。
俺は思わずフライボードでジャンプすると大型トラックの荷台の側面をフライボードで滑走した。フライボードと荷台の側面が擦れて火花を散らしながら俺はトラックの荷台の上に飛び乗った。
大型トラックの荷台から見下ろすとトラックが段々と暴走車に近づいていた。このまま行けばレーザーガンの光線が当たる距離まで詰められると思った。
(よし、このままのスピードで近づいてここから暴走車のセンサーを撃ち抜こう)俺がそう思っていたらパルタが叫んだ。
「あぶないジーコ! 前をみて!!」
俺が前を見るとすぐ先に歩道橋が見えた。
(やばい! このままだと暴走車に攻撃する前に歩道橋に衝突してしまう)と思った俺はトラックの左側に飛び降りた。
右手に鎖と左手にフライボードを抱えたままトラックの荷台から宙吊りになって歩道橋の下を通過した。
歩道橋を通貨した俺はトラックの荷台の後ろから飛び降りて再びフライボードに乗って地上に降りた。このままでは埒が明かない、そう思っているとパルタが耳元で囁いた。
「この先にトンネルがあるわ!」
俺はトンネルと聞いてある作戦が思い浮かんだ、おそらくパルタも同じ考えだろう。
「よし! そこで決着をつけよう」
しばらく進むとパルタの言うようにトンネルが見えてきた。先程から対向車がパタリといなくなった。後方から来る車もいなくなった。おそらく警備隊が道路を封鎖しているのだろう。これからの作戦を考えるとその方が好都合だった。
暴走車はそのまま猛スピードでトンネルの中に入った。俺はトンネルに入るのを確認すると右にフライボードを降るとすぐに左に旋回して遠心力をつけてものすごいスピードで左に突っ込んだ。勢いよく道路脇のガードレールをジャンプして交わすと、トンネルの側面をフライボードで滑走してそのままの勢いでトンネル上部に登っていった。トンネルの上部まで来ると鎖を両手で手繰り寄せ逆さまの状態で落下していった。
暴走車のセンサーは思ったとおり反応しなかった。先程トラックの荷台にいたときセンサーが反応しなかったのでもしやと思っていたが、あのセンサーは上空の物体に反応しないようだった。
俺は逆さまに落下しながら、再度懐からレーザーガンを取り出して暴走車のセンサーめがけて引き金を引いた。レーザー光線は青い光を放ちながら暴走車のセンサーを見事に撃ち抜いた。
センサーを失った暴走車はやがて推進力も失い徐々にスピードを落としていきやっと止まった。俺たちはハイカーから無事にプレア姫達を救出できた。
事件を解決できたのは良いことだが一点失敗だったのは、この行動によりアル=シオンのカレンとそのガーディアンの名声がセンチュリオンの皇女たちに広く知れ渡ってしまったことだった。
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異世界恋愛物語も新たに連載スタートしました。
題名:不滅のティアラ
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