41.学園都市
俺たちはハイカーと呼ばれる車のような乗り物に乗って学園都市に移動していた。このハイカーという車は反重力装置で少し空中に浮いていたので非常に乗り心地が良かった。
湖の上に浮かぶ一本の白い道の上を通り過ぎるとやがて桜の木が両端に並んでいる道をハイカーは進んでいた。次々と通り過ぎる美しい景色にカレンは声もなく見入っているようだった。しばらく進むと棚団のように整備されたビル群が見えてきた。
「あのゲートを通って中に入ると学園都市となります。」
アンドロイドのメルがハイカーを運転しながら案内した。目の前の坂の上を見るとゲートがあった。
ハイカーは緩やかな坂を登るとゲートを通過した。ゲートを抜けるとそこには多数のビル群が立ち並ぶ都市があった。
俺たちはそのまま都市の中心部に向かってひたすら進んでいた。中心部には巨大な建物が立っていた。
「ここが目的地?」
カレンが恐る恐るメルに聞いた。
「そうです。ここがセンチュリオン皇女学園です。」
巨大な壁に囲まれた建物は学園と呼ぶにはあまりにも不釣り合いで、巨大な砦や要塞のようだった。
「何か? 要塞みたいね」
カレンがボソリと言った。やっぱり誰が見てもそう思うだろう。
「ええ。そうですよ」
「え?!」
「ここの学園は宇宙で最も強固な要塞の一つですよ」
「な?…‥なんでそんな…‥物騒な…‥」
「各惑星の皇女様を集めて居るのですよ。有事の際はここが最終的な砦の役目を果たします。」
「そのために頑丈にできているのね」
「そうです」
「んーー、本当にかなり強固にできているわね。私でも中央の情報センターにアクセスできないわ」
パルタが不思議そうに言った。
「ここの中央コンピューターは全宇宙の中で最も優秀なゼンと呼ばれる、コンピューターを使用しています。どんなに優秀なAIや高度な技術を有したハッカーでも情報を取り出すことは不可能です。」
「パルタでも不可能なのか?」
「ほぼ無理ね。中央コンピューターがある制御室に入って直接ゼンにアクセスすればなんとかなるかもしれないけど」
「そんなに……」
「まあ、だから安心して皇女様が住むことができるのよ」
「それもそうだな。情報が漏洩するようなところに皇女を預けることはしないだろう」
俺はひどく納得した。そうこうするうちに俺たちは城壁を抜けて学園の中に入っていった。
◇
俺とカレンとパルタとラディアの四人はハイカーを降りて学園の中に入っていった。前方から知らない顔の三人組来たので端に避けたが、その中のひとりがすれ違いざまに俺の近くによってきていきなり匂いを嗅いできた。
「ん? お前なんかいい匂いだな」
俺はびっくりしてその女の顔を見た。頭からフサフサの耳がでていて犬のような少女だった。
「ミルキ! コラやめなさい、その方は女性ですよ」
前方を歩いていた女性がミルキと言って犬女を怒った。おそらくこの怒った女性が皇女でこの犬女はこの皇女のガーディアンだろう。犬女は皇女に注意されても匂いをかぎ続けていた。
「プレア様でもこの人すごいオスの匂いがします♡♡♡」
『ドキリ!!!』
俺は心臓が止まりそうなくらいドキリとしたが、どうにか平静を装って犬女に言った。
「そ……そうだ、や……やめろ……お……わ…私は女よ!!」
俺がそう言っても犬女は抱きついていつまでも匂いを嗅いできた。
「どうにかしてくれ!!」
「ミルキ!! いい加減に離れなさい!!」
プレア皇女はそう言って無理やりミルキを俺から話して謝ってきた。
「うちのガーディアンが迷惑かけてすみません」
「い…。いえ……」
「私はプレアと言います。今日ここに来たということはあなたもこの星に来たばかりですね」
「あなたもということは? もしかして?」
「そうです。私も今日この星に来たばかりなの、今後ともヨロシクね」
「こちらこそよろしくおねがいします」
プレアはキルギル星から来た皇女様だった。ガーディアンは犬女のミルキとロイという無口な女の三人組だった。プレアとカレンは自己紹介を終えるとそれからしばらく話して打ち解けたようだった。俺は犬女がずっと俺を凝視していたので、一刻も早くここから離れたかった。
しばらくしてプレアとミルキとロイの三人と別れたあと、俺たち四人は学園の一室に通された。
部屋に入ったと思ったら周りに草木が生えていたので、屋外に出たのかと思っていたが、天井を見上げるとガラス張りになっていて太陽の光が燦々と照りつけていた。どうやら俺たちが通された部屋はサンルームのようだった。
大きなサンルームを歩いていると中央に一人の中年の女性が立ってこちらに向かって微笑んでいた。女性は俺たちに気づくとニッコリと微笑んでもっと近くに来るように言った。
「ようこそあなたが、アル=シオンの皇女のカレンさん?」
「は……はい、あなたは?……」
「ここの学園の学長を努めています、ユリエと言います」
「は……はじめまして、お世話になります」
「ふふふ、礼儀正しいのね。この学園についてどこまで知っています?」
「まだ何も知りません。私は何をすればいいですか?」
「ふふふ……ここの学園の目的は皇女同士のコミュニケーションの形成を目的にしています」
「コミュニケーション?」
「そうです。それなので学園という名前でありながら一般的な授業という概念はありません」
「学園なのに授業がないのですか?」
「ええ。授業というものは無いのですが、カリキュラムとして親しくなった皇女様たちとキャンプをしたり海に行って海水浴をしたり、山でハイキングをして思い思いにバカンスを楽しんでコミュニケーションを形成していただきます」
「そ……それだけ? ただ皆と遊んでいれば卒業ができるんですか?」
「ええそうです。びっくりされるかもしれませんが、それがこの学園の目的なのです。遊びを通じてその人となりを理解し合い良好な人間関係を構築することがこの学園の目的であり、ゆくゆくはこの宇宙の平和につながるのです」
「あ……は……はい」
カレンはわかったようなわからないような返事をした。
「他に何か質問はありますか?」
「あ……あの……バイトはできますか?」
「バイト? なんですかそれは?」
「あ……はい、その……お金を稼ぎたいので、バイトは禁止されてますか?」
「お金? それは紙幣のことですか? この星には紙幣という概念はありませんよ」
「紙幣という概念がない? どういうことですか?」
「ここの星にある物は宇宙中の超巨大企業がスポンサーになっていて無料で提供されていますので、飲食物から装飾品においてありとあらゆる物は全部無料でご使用いただけます」
「全部無料! そんなことができるんですか?」
「そうです。皇女様に使用していただくことで宣伝効果になるので、気に入った物があればどんどん使用してください。この星にあるものは生活雑貨や食事に至るまで最高級のものが宇宙中から集まってきていますので、きっと満足されると思いますよ」
「自由に遊んで、自由に物が手に入るって……ここは天国なの?」
「そうおっしゃる皇女様も多いですが、ここの生活を終えて母星に帰ると日々の公務に追われて自由な生活はできない方が大半を占めています。せめてここでの教育期間中は仲の良い友人たちとバカンスを楽しんで自由を満喫していただきたい。そういう側面もあるのです」
「そ…そうですか? わ……わかりました」
「とりあえず明日は皆様のお披露目会をしますので、指定された時間と場所に集合してください」
「お披露目会?」
「ええ、新しい仲間として皆さんに紹介します」
「そ……そうですか? 緊張するな」
「大丈夫ですよ。皆さん用事があるのでそんなにたくさんは来ないと思いますので緊張しなくてもいいですよ」
「あ……はい。わかりました」
「取り合えす私からの説明は以上です。このあとは皆さん揃って街に出てショッピングでもして楽しんでください。まあショッピングと言っても目に見えるものは全部タダですけどね」
そう言うと俺たちはユリエ学長と別れて街に行くことにした。
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