37.地球にて
俺はカーテンの隙間から差し込む日差しで目が覚めた。ベッドから起きようとしたが、胸に違和感があることに気づいた。シーツをめくると人間の頭があった。またかと思いつつ胸に抱きついている人物の肩を掴んで揺らして起こした。その人物は妹のルーシーだった。
「ムニャ……ムニャ……、兄さん。おはよう♡」
「おはようじゃないよ。また勝手に俺のベッドに入ってきて……」
ルーシーを怒っていると後ろから誰かに抱きつかれていることに気がついた。後ろを振り返るとカレンがいた。俺はカレンを揺らして起こした。
「お…おい、起きろ。カレン!」
「ムニャ……ムニャ……、ジーク。おはよう♡」
「な……なんでカレンも俺のベッドに入ってきてんだよ!」
「え……だって、ここの家大きくて迷子になりそうだもん♡」
「いや、関係ないだろ。大きな家だろうが人の部屋のベッドに入ってくる言い訳にはならないぞ……、って……言っている側から寝るなよ。おい! 起きろよ」
俺とカレンは別々に暮らしていたが、あの一件以来カレンの存在が広まったことにより危険に晒される可能性があるためパルタの提案により俺の家で一緒に住むようになった。それというのも俺の任務はカレンをある人物から守ることだからである。
俺がカレンを起こすために足を伸ばすと足に柔らかな感触があった。再び足を伸ばすと「キャ!…」と言って足元のシーツが動いた。もしかして?と思ってシーツを勢いよく捲り上げると裸のエレオノーラが寝ていた。そのことに気づいたルーシーがエレオノーラに詰め寄った。
「エレオノーラ。何を勝手に入って来てるのよ!」
「ダメなのか?」
「当たり前でしょ。勝手に家の中に入るのは不法侵入でしょ」
「ルーシーお前もだぞ」
カレンが起きてルーシーに言った。ルーシーはカレンとエレオノーラを見て怒鳴った。
「あなた達がなんで兄さんのベッドの中に入ってるのよ! 早く出てって!!」
「「ルーシーも勝手に入っているのでは?」」
二人も負けじと応戦している。
「いい加減に三人ともでていけ!!」
俺は三人を部屋の外に追い出した。
◇
「ちょっと! そんなにくっ付いたら兄さんが歩きづらいでしょ!」
「お前もそんなにくっ付いて。兄妹で気持ち悪いぞ!」
「仲がいいんだから仕方ないでしょ。ねーー♡。兄さん♡」
右腕にカレン、左腕にルーシーがくっ付いて来てお互いに歪みあっている。相変わらずいつもの登校風景だった。あとは近くにパルタとエレオノーラを含めた五人で俺たちは高校というところに通っている。
しばらく五人で歩いていて、あと少しで高校に着くところでパルタの足が止まった。俺がどうした?と聞くとパルタが何か見つけたようで、そこの角を曲がるわよ、と言った。
俺たちは町外れの河川敷に着いた。ここはこの時間誰もいないのだが、川の近くで少女が立っているを見た。その少女は甲冑のようなものを着て金髪のロール髪を風に靡かせていた。遠目からでもこの星の住人ではないと想像できた。
俺はいつでも戦えるように用心してゆっくりと少女に近づいて行った。少女の方も俺たちを見つけるとゆっくりと近づいて来た。
「どの人がライカ王のお嬢さんなんだ?」
「あんたは何者だ?」
「これは失礼した。私はアル=シオンのラディアです。ライカ王のお嬢様を探しに来ました」
俺はパルタを見た。パルタは俺に頷くと口を開いた。
「心拍数に異常なし、嘘はついてないようね。それに……先ほどデーターを照合して間違いなくアル=シオンのラディア隊長ね。グロリアの後を任されているようね」
「君は?……あなたがネオAIのパルタなのか?」
「そうよ。なぜ知ってるの?」
「グレンに聞いたんだ。あなたがアル=シオンからエージェントが訪ねて来たら居場所を教えるように言ってくれていたから私がここに来れたんだ」
俺はそれを聞いてびっくりした。なぜそんなことを言ったのかパルタに問いただした。
「ライカ王もドミニクも居なくなった今、ライカ王の娘を探すのは当然のことでしょ。アル=シオンとしては、遅かれ早かれカレンを表舞台に立たせざる得ないのよ」
「カレン?!……ライカ王のお嬢様はカレンという名前なのか?」
「ああそうだ」
俺がラディアにそう言うと彼女は向こうに振り返った。肩が小刻みに震えているように見えた。
「どうしたの?」
パルタが聞くとなんでもないと言って涙を拭いてこちらを向いた。
「亡くなったあなたのお姉さんの名前ね」
「ど……どうして……それを?……」
「私はアル=シオンのビッグデーターにアクセスできるのよ。あなたのお姉さんはライカ王を守るために殉職したのね」
ラデイアはそれを聞くと泣きながら話した。
「ラ……ライカ王は……姉さんを忘れていなかった……私の姉が亡くなった時に本当に悲しそうに泣いてくれた。まさか自分の娘の名前に姉さんの名前をつけてくれるなんて思わなかった」
「ライカ王はそういう人さ……」
俺はライカ王の優しかった笑顔を思い出して言った。
「カレンを探し出してどうするつもりなの?」
パルタがラディアに聞いた。
「カレン様には皇女教育を受けてもらいます」
「何ーーー!! 皇女教育を受けさせるだとーー!!」
俺はラディアの言葉を真っ向から否定した。
「無理、無理、無理、そんなところに行ってカレンを危険な目に合わすことはできない」
ラディアは否定されてキッと睨んできた。
「守れる自信がないの?」
「何が言いたいんだ?」
「本当にアナタみたいな腰抜けが宇宙最強の戦士なの?」
「なんだと? 試してみるか!」
「いいわよ。相手になるわよ!」
俺とラディアはお互い睨み合った。一触即発の空気をパルタが壊した。
「やめなさい二人とも! いい機会だわ、カレンを皇女教育に参加させましょう」
「は? 本気かパルタ? そんな所に行って危険じゃないのか?」
「大丈夫よ。各惑星の皇女たちを集めて教育を行う惑星センチュリオンは鉄壁の要塞のような星よ。しっかりとした身分の者しか惑星に近づくことさえ不可能な宇宙で一番安全な星よ」
「俺たちも入れるのか?」
「一皇女につきガーディアンと呼ばれる護衛が三人まで入星できるから、カレンには私とジークとラディアのメンバーで入ることにしましょう」
「え? 私はどうなるの?」
ルーシーが不安そうな顔で聞いてきた。俺と離れるのは絶対に嫌だという顔をしている。
「私のガーディアンとして入る?」
エレオノーラがルーシーに言った。
「そういえばあなたも皇女教育期間中だったわね」
「ええ。途中で抜け出してきたからいつでも入れるわ」
「だったらエレオノーラにはルーシーとガスパールの二人をガーディアンとして一緒に入りましょう」
「ありがとう。エレオノーラ。私が絶対にあなたを守るわ」
ルーシーは嬉しくなってエレオノーラに抱きついて喜んだ。抱きつかれたエレオノーラはふと疑問を口にした。
「そういえば……、ガーディアンは必ず女性でなければならないという条件があったはずですけど……?」
「「「えーーーー!!」」」
みんなの目が一斉に俺に注がれた。
「なんだよその条件は? どうしてそんな?……」
「間違いがあると困るからよ。でも大丈夫よ」
パルタが冷静に答えた。
「大丈夫? ダメだろう。女装でもして潜入しろとでも言うのか? さすがにそれは無理だろう」
「私を誰だと思っているの。本来私はここには存在していないけど、存在しているように君達の脳に直接幻影を見せているんだぞ」
「そ……それと女装になんの関係があるんだ?」
「つまり男を女に見えるように幻影を見せることなど造作もないと言うことだ」
そう言うとパルタは指を鳴らした。俺を見ていた者の顔が変わったので嫌な予感がした。俺はすぐに自分の体を確認した。案の定俺の予想は当たっていた。自分の体の出ていたところは無くなり、出てなかったところが出ていた。エレオノーラが鞄から恐る恐る鏡を出して俺に渡してくれた。
鏡を見て俺は絶句したそこには女になった自分が映っていた。
楽しかった。
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