奇跡を宿す少女
リリアナは2つの奇跡を身に宿している
1つは『治癒の奇跡』
これは重症であろうとも傷を治してしまうというものだ
腕が落ちようが首が飛ぼうが心臓を貫かれようがリリアナが奇跡を行使することでその傷は無かったことになる
とても便利で強力な力だ
ただし、万能というわけではなく古傷や死んでから1日経過していると治すことは出来ない
2つ目は『結界の奇跡』
これが私に教皇が触れられない理由でもある
全ての脅威から対象を守る力
昔から私はこの力のおかげもあって教皇に避けられていた
ただ最近日によって波があるようで結界が薄なっているような気がする……気の所為だろうか?
これらが私の持つ奇跡
生まれながらにして身に宿していた力
そして聖女として呼ばれる所以でもあり、ひとりぼっちになることが多い原因でもある
だから私はこの奇跡は好きではない
誰かのために力を使えることはとてもいい事だと思う
イリスが話してくれた物語の英雄のようで憧れる
でも私はそれ以上に誰かと平凡に暮らせる日常を望んだのだから
スザンナがいなくなってから外が騒がしくなった
なんでも多くの人が教会から離れたのだそうだ
その中には孤児も含まれていたのだとか
大丈夫なのかなって思ったけど自分で決断したのだとしたらそれはとても羨ましいなって思った
私には決断する自由すらないのだから
あれから部屋に引き篭っていたらなんと教会内を自由に動ける許可を1日だけ貰えた
どういう風の吹き回しか分からなかったがそれでも自由に動けるというだけでとてもわくわくした
思えばこの時もっと考えるべきだったと思う
スザンナも言っていたように教会は信用できない
だから絶対何か裏があるはずだと
浮かれていた私は本当に馬鹿だったと思わざるえない
さすがに1人で行動は許されなかったので護衛としてナルサスという騎士が着いてきた
「リリアナ様あまりはしゃがれないようお願いしますね」
「分かりました」
ほんとうはもっと走って色んなところを見て回りたかった
でもさすがに騎士が近くにいるのにそんな真似はできない
この騎士が信用できるとも限らないのだから
少し探るために色々ナルサスに聞きながら移動していた
ナルサスはなんでも丁寧に答えてくれた
ナルサスは学校を首席で卒業したらしくその頭脳と腕を買われて騎士になったのだとか
実際に南の氏族鎮圧任務にも出たことがあり、その指揮を任されたらしい
ただその際は地の利が悪かったこともあり任務は失敗
そうそうに分が悪いと撤退したことで被害は無かったが周りからは臆病者と呼ばれることになったらしい
それでもナルサスは何を言われても皆を守れたからそれだけで自分を誇れると言っていた
それで今は謹慎中らしく他の騎士は出払っているためこの護衛も手が空いてるナルサスに白羽の矢がたったのだとか
多分この人は悪い人では無いのだと思う
それがナルサスに対する印象だった
だからこそ彼との別れがより辛く感じたのだろう
教会を回っている際に偶然地下に通じているであろう扉を見つけた
ナルサスも知らないらしい
覗こうとしたらナルサスから止められた
なんでも不気味だとか
止められたから仕方ないと思っていたら扉の奥から悲鳴が聞こえた
ナルサスと慌てて扉の向こうへ進んだ
私もナルサスも悲鳴を聞いて大人しくできなかった
そうして進んだ先には瘴気が溢れていた
私はナルサスと自分に結界を張り奥へ進んだ
するとそこにはガスマスクをした白衣の男達とバラバラになった子供の姿があった
それを見た瞬間私は動くことが出来なくなったと同時に結界が揺らいでしまった
ナルサスはすぐに行動し白衣の男達を取り抑えようとするも結界が揺らいだことで瘴気を吸い体が重くなってしまった
私たちに気づいた男達は奥から異形の生物を連れ出して私たちを捕まえたのだった
その後ナルサスはそのまま取り残され私は教皇の元へと連れていかれた
私は意を決してあれはなんなのか教皇に尋ねた
「あそこは実験施設だな。孤児や犯罪者を使っての実験をしてる場所よ」
「そんな……孤児は皆あんなことに使われるために拾われてるんですか!?」
「いやいやまさか、あれだけに使うなんて勿体ない。奴隷として売りに出したりあとは必要な部位だけを売ったりもしてるな」
「っ……」
リリアナは言葉が出なかった
教会が信用出来ないとは思っていたが自分の予想以上に酷かった
「な、ならイリスは、スザンナは……」
「さて……?誰だったか?もう覚えてないな」
「そ、んな」
スザンナが言っていたことを不意に思い出す
こうなるとイリスが無事なわけない
スザンナも最初警戒していたのが理解出来た
そしてスザンナがいなくなったこと……
そうなるとナルサスもこれでは無事では済まないだろう
「ナルサスはどうなるんですか!?」
「ふむ、ちょうど次の実験にあれくらいの青年が欲しかったところだからな。そこで使うことになるだろう」
「なんとも思わないんですか!首席で卒業して騎士をめざしていた人に対して酷いです!」
「いやいや、だからこそ思うのだよ。素材としても優秀だと」
「っ……やめてください!」
「やめる?なぜ?そもそも君に交渉するだけの物を持ってないだろう?一方的にやめろといわれてもやめるわけがないしやめる理由もないな。だったら君が実験に強力してくれるのかな?」
「そうです……それで構わないです。ナルサスが助かるなら」
もうこれ以上誰かがいなくなるのは嫌だ
だから私は教皇の条件を呑むことにした
これでもう孤児もナルサスも犠牲にならずに済む
それでいいじゃないですか
それから私は地下に連れていかれ四肢を固定され口には轡をはめられた
それからどれだけの苦痛にあっても声を上げても体を切り刻まれ続ける日々を過ごした
何せ私には奇跡があるのだからすぐに体はすぐ元に戻る
自分の身を守ろうにも守るための結界も上手く行使することが出来なくなっていた
後から教皇に知らされたのだがこの結界は心の強さに比例するらしい
当然今の私に心の強さなんて微塵もなく粉々に砕けた物が残るだけだ
何故そんなことを知っているのか疑問だったがもう今の私の状況ではそんなことを気にする余裕がなかったのだ
「あぁそっか。ずっと私はこの為に教皇に踊らされていたんだろうな」
その呟きは誰からも聞かれることも無くただ夜へと消えていった
お待たせしました……
親知らずようやく抜き終わって落ち着いてきました……
ほんと2回目でもこの痛みは慣れないですね……
これからは出来るだけ投稿ペース上げていく予定です!
年内には1章終わらせたい!