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哀しき聖女に救いの手を  作者: 凪咲琥珀
1章傷だらけの君に救いを
22/25

聖都脱出作戦・最期

side.リリアナ


目の前でアランさんだった人が暴れている

フィンと呼ばれていた男はボロボロになっており、駆け付けた騎士は跡形もなく消え去っていた

どうしたらいいのかわからない

アランさんを失いたくなくて戻ってきた結果がアランさんの暴走を招いてしまった

自分に力があればどれだけよかっただろうか

思い返せば常に私は誰かに助けてもらってばかりだった

私は逃げ出すことを諦めて受け入れることばかりだった

そんな私を救ってくれた人たちには感謝しかない

だから私はある意味甘えてたのかもしれない

誰かが助けてくれる、誰かがこの現状を変えてくれるって

動いているのは常に周りで私は変える努力をしてこなかった

今更嘆いても遅いのかもしれない

どちらにせよ今私にできることはないのだから

でも、今はこの状況をどうにかしてほしいと願うしかない

これから私は足掻く努力をするから、誰か助けてよ


無力で未熟な聖女に出来るのは祈ることだけ

いかにそれらしい能力を持っていても今の状況は名ばかりの聖女には荷が重すぎるのだ

救いたい人を救えず、願うことしかできない少女の声が届くのは現状一人しかいないのだ


「全く、最近の若い子は元気だね」

「スザンナっ、アランさんが————」

「まあ任せんさいね。リリアナの初めての我儘くらい叶えてあげるさ」


そういって現れたスザンナは目の前の惨状とリリアナの状態を見ておおよそを理解する

スザンナはスザンナで力があってもリリアナを助けることができなかったことに悔しい思いをしていた

ようやくリリアナを助けてあげられることにうれしく思えた

なによりアランという少年もスザンナは気に入っていた

そういった意味でもやはり見捨てたくはない思いはあった

でも優先すべきはリリアナと子供だと決めていたのもあり、以前のリリアナのように天秤にかけるしかなかったのだ

だから何としてもとめなければならない


「ほんと老人使いが荒いもんさね」


どこか自嘲気味ではあるが少し嬉しく感じていた


「さてと、久しぶりに動くとしますかね」


軽い準備運動をして戦っている二人の間に割って入る

アランの体には力を込めて鳩尾へのパンチを見舞い、フィンには容赦なく切りつけ吹き飛ばす

アランはその場で崩れ落ち、フィンは瓦礫の中へと姿を埋める


「リリアナ、早くこの馬鹿者の目を覚ましておやり」

「あ、はいっ」


リリアナはスザンナの動きの速さに驚き一瞬呆けるもスザンナの声ですぐに行動を開始する


「アランさん、目を覚ましてくださいっ!私はあなたと色んな世界を見て回りたいんです!!」


リリアナは必死に声を掛ける

こういった時も自分の奇跡がアランに使えないことを悔しく思う

それでも気を失っているアランの体は音を立てて傷を修復している

先ほどまで纏っていた瘴気はいつの間にか霧散しており、体も鎧が剥がれている

何度も声をかけているとアランの体がピクリと反応した


「うぅ、ここは?」

「アランさんっ」


リリアナは安堵した

アランさんが帰ってこないと思うと……

でも何とか意識は取り戻してくれたようだ


「ほら、二人ともぐずぐずせずに早く移動するんだよ」

「え、スザンナは……?」

「まだ騎士がワラワラと湧いてくるからね。少しでも数を減らしたら追いかけるよ」

「わかった、待ってるからね?」

「何言ってるんだい、あんたらとはここでお別れだよ」

「え?」


どうしてそんなことをいうのかリリアナにはわからなかった

私はアランさんを置いていきたくはなかった

でもだからと言ってかわりにスザンナが置いて行かれるなんて望んでいない

そう思いその次の言葉を出そうとしたときスザンナから待ったがかかった


「最期まで話を聞きな。リリアナはそのアランと一緒に居たいんだろ?ならそもそも目的地が違うさね。あんた達とは別方向ですでに他の子たちには移動するように伝えてるからね。後は私がそっちに合流するだけさ。だからここでお別れなのさ」

「そう、なんだ」

「わかったらそのへばってる子を連れて行きな」

「また会えるよね?」

「さすがにここでくたばる気はさらさらないよ」

「わかった、またね」


リリアナはそういって未だ意識が朦朧としているアランを連れてその場を離れる

スザンナはフィンから目を離しその後ろ姿を目に焼き付けていた


———————

side.スザンナ


リリアナたちの背が遠のき門を超えて見えなくなる

リリアナにはふと思いついたように言ってみたがこのまま自分も逃げ切れるとは思ってはいなかった

でもああでも言わないと優しいあの子はまた戻ってきてしまうだろう

騎士がどんどん集まってくる

さすがにこれだけ暴れていれば駆けつけない人はいないだろう

よくもまあここまで酷くなるまで動き回ったもんだと感心する

元々思い入れのない土地だ

悲しくなることはなく、寧ろ清々するくらいだ


「さて、ここ先は何人たりとも通さないよ」


改めて自分に気合をいれるかのように宣言する

せめてあの子達の行く道が幸あらんことを











どれくらいの時間が流れたか

体は返り血に塗れている

目の前には騎士はもういない


「全く、老人を労わろうって気持ちはないんかね」


傷を負うようなことはなかった

それでも歳の影響かさすがに疲れてきたのがわかる

目の前には夥しい量の死体の山々

だがその中にはフィンの姿はなかった

あの時一度目を離した隙に隠れてしまったようだった


「早く出てきなっ。いるところはわかってるんだよ」

「ちっ」


スザンナはフィンが隠れていた場所に向かって転がっていた剣を投げつける

すかさずフィンは避けれも腕の先が千切れてしまった

そのままの勢いで距離を詰めようと一歩踏み出す


「うえええん」


急に鳴き声が聞こえ振り返るとスラムがあったと思わしき場所から一人の少女が現れた

その瞬間フィンはスザンナを狙わず、その少女に向けて斬撃を放つ

スザンナは咄嗟に動いて少女を庇い、左手をその代償に失う


「はぁ、お前なら、そう動くと思っていたよぉ。これで、形勢——」

「うるさいよ」


そういってフィンの言葉を待たずに距離を詰め喉元を引き裂く

そのままフィンは息絶え倒れる

スザンナは突如出てきた少女に近寄り右手で頭を撫でる


「こんなとこでどうしたんさね?」

「ぐすん、帰ってきたら家がなくなっていて……」

「そうかい、すまなかったね。ここは危ないから早く別の場所に移動したほうがいいさね」

「でも、行く場所はないし、おばちゃんはどうするの?」

「そうだね……」


無くなった左腕を見る

そこからはどんどん血が溢れている

意識が朦朧としてくるが、食いしばりその場で倒れまいとする


「ちょっと疲れたから家で休みたいね。よかったらあんたもくるかい?」

「うんっ」

「そうかい、ちょっと肩を借りてもいいかね?」

「いいよ」


そういってスザンナはその場を離れる

少女の力を借りながらふらふらと歩く

せめて倒れるならみんなと過ごしたあの場所へと向かうために

いかがだったでしょうか?

話に全然でてこない主人公……

未だ不甲斐ない部分は多いですが今後の成長に期待してくれればと!

日を跨ぐまでにエピローグを書く予定です!

お楽しみに!

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