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哀しき聖女に救いの手を  作者: 凪咲琥珀
1章傷だらけの君に救いを
20/25

聖都脱出作戦・暴走

side.リリアナ


目の前でアランさんがボロボロになりながらも立ち上がる姿を何度も見た

自分たちを庇っての行動というのはわかっていた

それでもこの場を動くことができずにいた

一歩でも動くとすぐに斬撃が飛んできて子供たちは死んでしまうだろう

それくらいの緊張感があった

でも、アランさんは何とか隙を作ろうと何度も立ち上がりフィンに挑む

何もできない自分が歯痒い

アランさんからすれば私を守る為だから気にするなと言うだろう

そんな言葉に甘える自分が嫌だった、それ以上に邪魔になるようなことはしたくなかった

だから今は時が来るまで大人しくしていた

子供たちを励ましつつ必死に守ってくれているアランさんの姿を見続けていた

そうしてスザンナが合流してくれて門まで到着することができた

スザンナはアランさんが時間を稼いでくれている間にここを離れるよう言ってくる

つまり、アランさんを置いていくということだった

そんなのってない、出そうになった言葉を呑み込む

今が絶望的な状況なのはわかっていた

だから、最悪の場合は事前に殿役を誰かが務めることは決まっていた

アランさんの決意を無駄にすることはできない

せめて今のうちに遠くに逃げなければ、それが今できる最善だ


でも、そんな時間は長くは続かなかった

ついにアランさんはその場で動けず立ち尽くしてしまった

そうしてフィンがこちらに近づいてくる

スザンナが私たちの前に庇う様に立つ

あぁ、こんなことになるならやはり私は希望を抱くべきではなかった

多くの犠牲の上に生き延びても悲しいだけだ

いつかはと願ったその未来は見ることはできないのだろう

絶望が身を包む


「リリアナ、スザンナ。後は頼んだっ」


そんな時アランさんの声が聞こえた

アランさんの周りに瘴気が蠢いている

これはあの時見た鎧を出す気なのだろう

アラさんの体が音を立てて修復されていき鎧を纏う

その時、スザンナが手を引き門を出るよう言ってくる

せめてアランさんの無事を見たかった

でも、スザンナもシスターも子供たちも余裕がないように見えた

そりゃそうだろう、瘴気が周囲に漂っているのだ

この場で影響を受けずにいられるのはアランさんと私くらいのものだ

後ろ髪がひかれるような思いでその場を後にする


「このまま東にある旧王族が住まう都市を目指すよ」


そういってスザンナ達は行動を開始する

でも、門の内側から多くの轟音が聞こえる

見えないが激しい戦闘が起きていることはすぐにわかった

ついには門が半壊状態になり、人がかろうじて通れるような状態になっていた

既に子供たちは外に出ることができたし、準備もできている

これなら私一人戻っても逃げることはできるだろう


「ごめんなさい、やっぱり私はアランさんを置いてはいけません。私のことは気にしないでください」


そういってその場を離れる


「リリアナっ!!」


スザンナの静止の声が聞こえるが、その声を振り切り門を超える

その時アランさんが壁に打ち付けられるのが見えた

何としても間に合わせる

その思いでフィンとアランさんの間に入るよう夢中で走った



—————————————————

side.アラン


「えっ……?」


目の前にリリアナが立っている

服はボロボロになり血も垂れている

すぐに再生が始まり傷はふさがっていく

それでも今の状況が理解できなかった、したくなかった


「どう、して」

「私の騎士様、私を置いていくなんて許しません。それに約束したではありませんか、私を助けてくれると。あなたがいないと私はきっとまた希望を失ってしまいます。だから———」

「へぇ君、面白いねぇ?」


リリアナの言葉を遮るようにフィンが歪な笑みを浮かべていた


「どれくらい壊れないのかなぁ?どれくらい持つのかなぁ?アハ、あハハハハハ。次は君を切り裂いてあげるよぉ」


そういってフィンが次々と斬撃を飛ばしてくる

そのままリリアナは俺の目の前で傷ついていく


「もうこれ以上は、アランさんを傷つけさせません」


何度も何度も目の前でリリアナが切り裂かれていく

その度にフィンの笑う声が大きくなる

聞きたくない見ていたくない

なんの為に、彼女に誓ったんだ

何のためになんのために……

結局俺は無力なままだったんだろう

ただただその現実に絶望し、怒る

許せない、彼女を傷つけるものを許さない

彼女を守れない自分を許さない


あぁ()()()()()()()()



そうして俺は、意識を手放した



—————



そうして僕は、覚醒した


「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


目の前の少女は目を見開いていた

視界の奥にいる害虫は不機嫌そうな顔をしていた


「お前にはもう飽きたんだってば———あ?」


何か言っていた虫を吹き飛ばす

ボロボロの服を纏った傷がない少女は悲しそうにこちらを見ていた


「なん、なんだよ、お前」


必死に起き上がる虫を何度も何度も弄ぶように傷つける


「AHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA」


それはいつかの恨みを晴らすかのように悉く近くの騎士を蹂躙していく

建物も動物もお構いなしに暴れまわる


リリアナ目の前にいたのは暴虐の化身だった

アランさんの姿に黒い()()()を持つ姿は、普段の彼の行動にはとても思えなかった

それが例え騎士に怒りを抱いている彼でもここまでの惨劇を見過ごせるような人ではない

自分に止めることはできるのだろうか?

ただ早く帰ってきてと願うしかなかった

夜中にもう一つ投稿予定です!

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