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哀しき聖女に救いの手を  作者: 凪咲琥珀
1章傷だらけの君に救いを
2/25

契約

「お前はなんだ」


ノロイと名乗ったものにアランは問いかける

人の形を取ってはいるが瘴気が集まったものである

人の言葉を介しているのも理解出来ないし俺に語りかける理由も分からない

それにノロイの言葉はノイズが入っているようで聞き取りずらい


「見テノ通リ瘴気ノ集合体サ。ソシテオ前ハ瘴気ヲ吸イ込ム為ノ装置ヲ心臓二仕込マレテイルノサ」

「瘴気を吸い込む……?何だってそんなことを……」

「分カッテイルダロ?ココハ()()()、地下デ行ワレテイル実験ノ失敗作ヤ不用品ガ辿リツク場所。ダガココノ許容ノ限界ガ近イ。故二オ前二瘴気ヲ吸イ込マセ別ノ場所へ廃棄シヨウッテ魂胆サ」

「くそ、やっぱりあの実験はまだ続いてるのかよ……」


その実験というのは臓器の移殖による生物実験

ただの臓器ではなく、臓器に大して特別な処置を行い傀儡にしたり異形を作り出すものだ

何のためにそんな実験をしているのかは分からない

だが俺が知っているだけでも数年前から続いているようだ

そもそもこの実験は聖女様の肉体及び孤児の体を主に使って行われている

聖女様自身はどんな傷も回復する

それが()()()()であってもだ

そうして教会のやつらは聖女様の体を使い実験を行う

ただ欠損した場合回復するまで時間が少しかかる為その間に必要な部位は孤児を使用して実験を続ける

本当に気分の悪くなる話だ

もともとは孤児のみを利用していたらしいが聖女様が自らを使うよう進言して孤児を利用しないように約束させてのだが結局はどちらも利用している

もちろん聖女様には内密に


「ケケッオ前ヨク自我ヲ保ッテイルナ」

「どういうことだ?」

「今モ瘴気ヲ吸イ込ンデイッテイルハズダ。普通ナラ瘴気二飲マレテイルハズサ」

「……体は何ともないな。むしろ調子がいい」


自身の体を見回すが特に異常は見られないし感じない

逆に力が湧く感覚がある

普通に考えて瘴気を吸って力が湧くなんておかしな話だろう

だが好都合だ

今の実力じゃあの騎士には勝てなかった

なら何も使ってでも力をつける必要がある


「イイネェ、オ前オレト契約シナイカ?」

「……契約?何が望みだ?」


確かに何を使っても力は欲しい

でもそれは聖女様を助けるためである

聖女様を助けられないのでは意味が無い


「オレ自身ヲ取リ込メ。モチロン知識モ力モオ前二貸シテヤル」

「そんなの俺にしかメリットがないじゃないか」

「アア、ソレデイイ」

「なに?そんなの契約として成り立つのか?怪し過ぎるんだが」

「ケケッオレハココカラ出タイダケサ。オ前二着イテイクト飽キナサソウダカラナ」


明らかに怪しいのは目に見えているが今瘴気を吸い込んでいるからこそわかる

コイツを取り込めれば大幅に力を手に入れられる

そうすれば聖女様を助けられる


「いいだろう、正直信用は出来ないが借りられるものは借りてやる」

「ケケッ契約成立ダ」


そうやってノロイは俺の体に入ってくる


「アアソウソウオレハソコラ辺ノ瘴気以上二我ガ強イカラナ。飲ミ込マレナイヨウ気ヲツケロヨ?」


どんどん体に瘴気が入ってくる

そうして行くうちにたくさんの感情がせり上がってくる

悲しみ怒り妬み恨み苦しみ後悔――そして殺意


「ぐぁぁあ」


頭が割れそうになるほど痛い

視界が赤くチラつく感覚がある

手足が鉛のように重たい

息が苦しい

死んだ方が楽なのではないかと思うほど体中に電撃のような痛みが走る

――どれだけ時間が経っただろうか?

このまま意識を手放せたらどれだけ楽だろうか



でもここで時間を食うわけにはいかない

まだ俺は何を成せていないから

あの子を助けて、守ってそしてあの子を幸せにしてあげたいから

だからこんなところで寝ている訳には行かない

あの子が本当に笑える日が来る時まで諦められないから


「――ァァ、ふぅ」


(ほう、存外慣れるのが早かったな)


体の中からノロイが直接語りかけてくる

今までと違って言葉がハッキリと聞こえる


「お前取り込まれたのに意識はあるのか?」

(あぁ、言っただろ?オレは我が強いんだよ)

「そうかよ、でもそれなら便利そうだな」

(それとオレの声はお前にしか聞こえてないから気をつけろよ)

「おい、役立たねぇな」

(お前は馬鹿か?お前が声に出さなければ良いだけだろうが)

「どういうことだ?」

(お前の考えはお見通しってことよ)


なるほど、声に出さなくても考えは伝わるのか

うん、なら便利だな


(手のひら返しの早い事で)


あー便利だけど不便だな

なんというか気持ち悪い感覚だ

とにかく早くここから出て助けに行かないと


(ちなみにだがまだここには瘴気が残ってる。全部吸い込んでから行くのをオススメするぜ)

「なんでた?お前だけでも十分だろ?それに時間もかかるし」

(備えあれば何とやらってヤツよ、ここは教会の真下だぜ?あれから時間も経ってるしパラディンが1人だけとは限らないからよ)

「それもそうか……準備に2年かかったしここでヘマするよりかはマシか」

(ま、そういうこった。全て吸い込むなら目算で3時間ほどか。我慢しろよ?)

「あぁ、ここまできて失敗はしたくないからな」


今まで1人で行動してたから時間もかかったし計画の穴も大きかった

もちろんそれをゴリ押せるよう力もつけたつもりだ

でもこうして誰か――瘴気の集合体ではあるがいてくれるのは助かる

もちろん信用している訳では無いがコイツが言っていることにおかしいと思う点は今のところない

当然外に出るというのが目的らしいからそこに関しては協力はしてくれるだろう

とにかく今は猫の手も借りたい状況だ

ノロイの力を借りない手は無い


(そうだな、3時間ほど待つのもアレだから即席だが剣を教えてやるよ)

「お前剣扱えるのか?」

(オレは瘴気の集合体ではあるが基本的に人の負の思念体のようなもんだからな。ここで力尽きた実力者の記憶も才能も多少は持っているんだよ。ソイツをお前に授けてやるってわけさ)

「なるほどな、確かにボーッと待つのは嫌だから頼むか」

(いいぜ、ただオレは甘くないから覚悟しとけよ?)


そうやって即席ではあるが剣の型から動き方を教わった

もともと飲み込みが早かったからかすんなりと覚えられた

最適(ベスト)とは言わないが無難(ベター)なものにはなったと思う

ノロイ自身教えるのが上手いというのもあるだろう

……もちろん本人が言った通り甘くはなかったが

ただこうして思うのがコイツノロイとか瘴気の集合体とか言ってるが悪いやつには見えない

いや、いい存在であるはずは無いのだろうが

ただ今のところ目的がだいたい同じ方向に向いているからこそ協力的なだけなのかもしれない

というかそういう契約だからな

聖女様を助けて守って幸せにする、それまでは力を貸してくれるはずだ

その後は……

まぁ今考えても仕方ないしこの考えもどうせ筒抜けだろうから下手なことは考えないようにしておこう


「さてそろそろ全部吸い込めたか?」

(あぁ、ここに瘴気は残ってないな)

「そうか、ならそろそろ行くか」


そうして地下を歩く

その姿はここに放り込まれた時とは変わっていた

黒かった髪は半分以上白く染まり右目は黄色く異形のものと化していた

体調自体は問題ない

体の変化はさすがにここ一体の瘴気を取り込んだことで影響が出たようだ

本当にどれだけの瘴気が溜まっていたのか……

どれだけ犠牲になった人がいるのか……

全くもって教会の連中は腐っている


さてそれでは始めようか本当の浄化作業を


そうして俺は地下から抜け出した

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