聖都脱出作戦・開始
街中は人で溢れている
今日は『聖火祭』の日であり、作戦決行の当日だ
『聖火祭』は一年に一度開かれ、クラヌス神に捧げものをする日だ
その為各地から多くの商人が商品を持ち寄り販売する
それを目当てに多くの人が集まるのだ
そして夜には聖火を灯しクラヌス神へ祈りを捧げる
この時多くの人が聖都中央の広場に集まり騎士たちもその場の警戒に当たる
もちろん騎士もクラヌス神へ祈りを捧げる
今回の作戦はこの祈りを捧げる時を見計らって行う
この聖都に生きているものは大抵信心深い信者ばかりだ
むしろ祈りを捧げないものは非難を浴びる
だから多くの人は信者であろうとなかろうと祈りを捧げる
その分周りへの警戒は薄くなるがそういうものがでないよう徹底して排除されているのが現状だ
なので今回の脱出にはうってつけだ
俺たち以外は広場に目が行っている
だから失敗する確率は低いと睨んでいる
だが、油断は禁物だ
スザンナから聞いた情報にあった騎士、序列六位のケインは上位騎士の中でも特にいい噂を聞かない
性格が破綻しているだとか、忠誠心を持っていないだとか、己の快楽の為に騎士になっているとも言われている
なにより先日の夢が気になる
あの夢を見ているとあながち間違いではないと思わされるような噂ばかり
今回はこの聖都の信心深さをつくような作戦ではあるが、ケインはお構いなしに町を出歩いている可能背は高い
できるだけ周りには注意をして抜け出すべきだろう
「大丈夫でしょうか?」
リリアナは不安そうに周りにいる子供たちの頭を撫でながらそう呟く
子供たちも不安そうにしている
俺が考えこんでいるのが不安そうに移ったのだろうか?
いや、そもそも皆この聖都から出たことがないようなものばかりだ
不安になるのも当然か
「大丈夫さ。なにかあれば俺が守るから」
そうやって笑顔で返す
はいとリリアナは頷き、子供たちはこちらの笑顔に返すように笑う
今のところ自分の力で何かを守れたという自覚が全くない
なにせ一度は死んだようなものだ
そうしてたまたま出会ったノロイの助力でこうしてリリアナを助け出せた
だからこそ今回はなんとしてもやり遂げたい
外は日が落ちついに聖火が中央広場に灯される
聖火が灯されると同時に無数の花火があがる
とても綺麗で思わず足を止めてしまいそうになる
だが今は足を止めるわけにはいかない
自分に鞭をうち、見とれている他のみんなに声をかける
「よし、作戦開始だ」
それぞれのグループに分かれ行動する
そして北の門で最終的に集合する
さすがに大人数で移動するわけにはいかないからだ
俺とリリアナと子供数名、スザンナと子供の多く、シスター達と残りの子供で分かれている
この配分は戦える大人と戦えない大人達、そして戦える俺で無理のない範囲で子供を引率させる形になっている
万が一に備えて戦えるものは殿を務めることになっている
問題なく脱出できればいいんだが……
そんな淡い期待を持ちながら行動する
街中は普段と変わって閑散としている
皆広場に集まっているのが見て取れる
ただ、教会も警戒しているのか数名の騎士が巡回をしている
未だに教会から脱走した聖女と俺を捕まえられていないのだから当然といえば当然なんだろうけども
ここで騎士を減らしてもいいのだが、できるだけ安全に脱出したいので見つからないよう細心の注意を払う
リリアナと子供たちにも気を使いながら北の門を目指して動く
だが、騎士は少ないには少ないがなんだか嫌な予感が拭えないのは何故だろうか
そうこう考えているともうすぐ北門に到着する
どうやら俺たちのグループが最後のようだった
安心して合流しようとしたその時、後ろから不気味な声がかかった
「やぁやぁ、どうやら当たりを引けたみたいだねぇ」
「ちっ……」
思わず舌打ちをしてしまう
異様な雰囲気を持つ剣を持った男が後ろに立っていた
どうやら最後の最後で厄介な奴に見つかってしまったようだ
「そんな嫌そうにしないでよ、こっちは会えて嬉しいんだからさぁ。改めて上位騎士序列六位ケイン、君たちはどんな声で鳴いてくれるかなぁ?」
リリアナと子供たちを背にしてケインと対峙する
本当に嫌な予感は当たってほしくないものだと改めて思う
お待たせしました!
日付またいでしまった……
また明日からも投稿しますのでお楽しみに!!