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哀しき聖女に救いの手を  作者: 凪咲琥珀
1章傷だらけの君に救いを
16/25

作戦決行~前日~

昨日の夢が何故か脳裏から離れない

寝起きで印象が強かっただけだと朝は思っていた

でもずっと頭の中であの光景が繰り返されて離れない

なんだろうあの時のエルフの少年がずっと呼びかけて手招きしているような、そんな感覚に襲われる

ノロイに聞いてみようかと思ったが、やっぱり反応がない

そもそも自分の内側の存在と話すことが出来ていたのが不思議な出来事ではあったのだ

それでもこのタイミングでこうも反応がないと少し不安になってくる

何かが自分の身に起きているのではないかと、そう思わざるを得ない

でもそんな考えとは裏腹に体調はいい、良すぎるといっていいほどには。

だからこそ不安が拭えない

どうしたものか、と頭を抱えるも自分では答えを出すことができない

そうしてどんどん焦りが募る

何せもう近々……


「アラン、話を聞いているのかい?」

「——あぁ、ごめん。なんだっけ?」

「全く、そんなぼーっとしてて大丈夫なのかね?」


そういってスザンナは呆れたようにこちらを見てくる

リリアナは心配そうに、そして申し訳なさそうに見ている

それが逆に申し訳なく思ってしまう

確かに不安なことはあるがそれでも今はこの聖都を出る作戦を成功させるほうが大事だ

頬を両手で自分で叩き気合を入れる

今はこちらに集中しよう

無事に脱出してそれからこのことは考えよう

そうしてアランは昨日の夢のことを後回しにすることにした

未だにエルフの少年は何かを語り掛けてくるがそれを無視して意識を反らす

若干気になるがそれでも今は必要ない情報をシャットアウトしなければならない

それだけこの作戦は重要なのだから

失敗は絶対にできないのだから

リリアナの未来のためにもスザンナやここにいるシスター、子供たちのためにも絶対に成功させるんだ


「まあいいさね。とりあえずこちらで調べた聖都の警備の巡回パターン。これを元に明日この聖都を出るよ」

「わかった」


明日一時的に警備が薄くなる

というのも南から要人がくるらしくその為に騎士が護衛に向かうのだとか

ただでさえ俺が騎士を削ったことで聖都の人手不足は尋常ではない

それでも要人であるため護衛は必須

そうして聖都は一層警備が薄くなる

でも——


「ただ、一人だけ上位騎士(パラディン)が帰ってきたようさね。だからこそ警備が薄くなっても問題ないとの判断だろうね」

「てことは最悪そいつとやりあう可能性もあるというわけか……」


最悪の場合は当然多くの騎士を相手にすることになるだろうが、それでも上位騎士が一人いるというだけで作戦の成否に関わってくる

それだけ上位騎士は厄介だ

それにしてもスザンナはよくこれだけの情報を集めたなと巡回パターンの地図を見ながら思う

上位騎士が帰ってきたというのも重要な機密事項だとは思うのだがどうやって手に入れたのだろうか?

とても助かるので敢えて聞くようなことはしないがそれでも少しは気になる

なによりスザンナ自身とても強い

初めて会った時からこの人には敵わないとそう思わさた

でもこちらに敵意を持っていないのも確実だ

だから今信用してこうやって話し合っている

そんな人の機嫌を損なうことなんてできるわけがない


「そんなことが起きないように行動は気を付けるんだね。情報が正しければ序列六位の【断風の騎士】フィン、今のあんたじゃ手に負える相手じゃないよ」

「なっ!?」


その名前を聞いて心臓が跳ねる

あの悪夢で聞いた断風という単語をまさかここで聞くことになるとは思わなかった


偶然だろうか?


いや偶然にしては出来すぎている

さらに心臓の鼓動が早くなる

そしてまた耳に囁くような声が聞こえる


殺せ殺せ殺せ


意識が持っていかれそうな気分に襲われる

せっかく意識を別に向けようとしていたのに意味がない

とにかくこれは普通じゃない

絶対に接触するわけにはいかなくなった

実際にその騎士と対面したときに自分がどうなってしまうのかわからない

名前を聞いただけでこれなら絶対にただでは済まないと思えてしまう


「騎士様?大丈夫ですか?なんだか顔色が悪くなってきているような……」

「……大丈夫、気にしないで」

「……ふむ、よくわからないがその状態なら下手に手を出すつもりはなさそうだね」


これは何としても作戦を最適な状態で遂行する必要がある

上位騎士に見つからずにこの聖都を脱出する

難易度は馬鹿にならないがそうしなければ皆が無事に脱出する手立てはない


きっついなぁと自分でも思う

それでも——


「無理はしないでくださいね?騎士様が無理するところはあまり見たくないですから……」


そういって苦笑しながら微笑むリリアナ

この子の為に心から笑えるような場所を作って見せよう

その為ならばこのくらいの無茶は通して見せる


「わかったよ」


保証はできないけどもそれでもせめてリリアナが今安心できるようにと最大限笑って見せる

よかったとリリアナは安心したのかそれ以上は何も言わない


そんな様子を呆れたようにスザンナは見ていた

アランの考えそうなことは何となくスザンナには透けて見えていた

だからこそリリアナのためにもアランには自分を大切にしてほしいものだがねぇとため息をつく

二人も含めてここにいる子供たちの未来が掛かっている

最年長の自分が支えるしかないと密かに心に誓う


「ほんと嫌な世界になったもんだね」


誰にも聞こえないその呟きは子供たちの元気な声にかき消されたのだった

さて前日とタイトルにあるように次回からは作戦が決行されます

無事に皆は都市を脱出できるのでしょうか?

お楽しみに!

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