ひとまずの休息
「っ……」
話を聞き終えてアランとスザンナは顔を顰める
教会から連れ出す時から酷いとは思っていた
だが、想像以上の酷さに2人は声を出すことが出来なかった
「ごめんね、何もしてあげられなかった私を許しておくれ」
そう涙混じりにスザンナは言いリリアナを抱きしめる
リリアナも抱きしめられながら涙を流す
「お姉ちゃん大丈夫?」
2人が泣いていたことに気づいた子供たちが遠くから駆け寄ってくる
「大丈夫ですよ、少し安心しただけですから」
「そっか、ねえねえ!良かったら少し遊んぼうよ!」
「はい、構いませんよ。すみません2人とも少し子供たちと遊んできますね」
「分かった。今日のところは話し合いはここら辺で辞めておこう」
「すまないね、子供たちを頼むよ」
はい、と笑顔で言うリリアナ
そのまま子供たちに連れられて行った
「アラン、あんたには本当に感謝しないとだね」
「いえ、俺も結局間に合わなかったので……」
2人を囲む空気が落ち込んでいく
スザンナはリリアナを連れ出したかったがさすがに教皇の娘を教会から堂々と連れ出すことは出来なかった
他にも連れ出さないといけない人達が多かったからだ
それを踏まえてリリアナとその人達を天秤にかけリリアナを選ばなかった
教会はとても用心深い
そういった意味ではそんな教会からリリアナを連れ出してくれたアランには感謝しかない
だが、アランは結果的に後悔していた
何も力はない自分だったがそれでも無理に連れ出すべきだったのではないかと思わざる得ないのだ
結局タラレバではある
それにここで終わりではない
聖都を抜け出して安全な場所へリリアナを連れていく
これが何より大事なのだ
「一旦ワタシも風に当たってこようかね」
「分かりました。俺は少しここで1人残ってます」
「分かった。あまり無理しないようにね」
そう言ってスザンナは席を外す
ふぅと息をつき今後のことを改めて考える
とりあえずここを出たらラステの樹海に向かうことにしている
だがすぐには動かない
今は騎士の警戒が強すぎるからだ
それらが一旦騒ぎが落ち着くまでスザンナにはお世話になるつもりだ
そうして今度は南の方で少し噂を流す
噂が真実かどうかわからないにしても半端な数では無いはずだ
なので南へ騎士が派遣されるのを待ち、そこで北方へ脱出して村を1度経由して食料を確保してから西のラステの樹海へ向かう
杜撰な計画だと思うがこれくらいしか方法を思いつかない
(まぁ悪くはねぇと思うぜ)
ノロイはどうやら計画に乗ってくれるようだ
(ただそこの計画に追加したいことがある)
追加?なんだろうか
(ラステの樹海の更に奥にある霊峰天の剣を目指せ)
霊峰!?ノロイの指示に驚くアラン
そもそもラステの樹海は入ると惑わされると言われている
とても危険ではあるがその性質は身を隠すのにも有用だと考えラステの樹海を目指すことにしていた
だが霊峰となるともっと話はややこしくなる
霊峰天の剣はラステの樹海の奥に聳え立つ
外から見ることは出来るが実際に霊峰を訪れることが出来たものはいないと言われている
だが、多くの財宝が眠っているだとか神が住まう土地だとか言われよく物語に使われているような場所なのだ
いくら何でも無茶ではないか、それが最初の感想だ
(気持ちはわからなくもないが大丈夫だろう。つうかあそこに行けないくらいじゃ強くなれねぇ)
惑わされるのに強さ関係あるのかとも思ったがノロイが睨んできたのでこれ以上は言わないでおく
(あそこでお前には力をつけてもらわなきゃならねぇ。今のままじゃ何も為せやしないぞ)
そこまで言うか……
一応騎士ひとりは倒せたのに
(あれは闇夜の呪鎧のおかげだろうが。あれに頼り着るのはやめろ)
そう言われると耳が痛い
確かにアラン自身の強さはそうでもない
(このままだと意識を持ってかれる可能性もあるし命を失う可能性もあるからな)
どういうことだ?
(そもそもオレは瘴気の集合体だ。色々あってオレが纏めてはいるが一枚岩ではねぇ。瘴気中には強い怨念を持っているやつがいるからな。そういう奴らが表に出たらお前は抑えられないだろ?)
確かに今は大丈夫だが闇夜の呪鎧を使った後はキツかった覚えがある
(それに闇夜の呪鎧には感情を増幅させる性質がある。だからこそより気をつけなければならねぇ。そして言ったと思うが生命力が削られる大体2割くらい減って1割は休んで回復できると思ってくれていい。つまりだ、後あの鎧を使えるのは7回だと思っておけ)
7回!?そんくらいしか使えないのか!?
(そりゃお前使い切ったら死ぬからな……とにかく使い所考えろよ)
これは確かに鍛え直さないといけないな……
呪鎧に頼りきるつもりは無かったがそれでも安心していた部分はある
回数制限を考えると鍛えるために霊峰に向かうべきなのかもしれない
また考えることが増えたアランは頭を悩ませたのだった
今日明日でもう1話投稿予定です!
思った以上にほのぼのしなかったので……えぇ。ほのぼのする予定だったんですよ。ほんとに……
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