中世ヨーロッパをモチーフとしたファンタジーな異世界
ナーロッパと決別し、中世ヨーロッパを再現した舞台を作りたい。その為に様々な切り口で調査を重ねました。その結果わかった事があります。
中世ヨーロッパはよくわからない世界だと言う事がわかりました。
調べれば調べるほど分からなくなります。そもそも中世という時代区分はとても広い。非常に原始的な時代から、貴族文化の花開く時代に、ルネサンスの時代。貴族がほとんど消滅して絶対王政になり中世が終わっても、ファンタジーの舞台になりそうな文化が続いていて、このイメージも引きずってしまいます。
中世の一言で括ると、どうにも掴み所がありません。
私は内政チートを描きたい。それなら中世前期の終わり頃だろうと考えました。そうやって時代を絞ってみましたが、それでも納得できる形が見えません。
私の知りたい日常風景に関連する研究が、題目によってはあまり進んでいないような感触もあります。目隠しをして手で探りながら象を理解しようとしている気分です。困りました。それでも決めるべきを決めなければ、物語の舞台が見えてきません。
不明な点を想像で補い、内政チートを仕込む形で調整し、これは中世ヨーロッパかと自問する日々。どうにも納得できません。どうしよう…
アニメを見ました。
今年の春頃に放映された、ルネサンス期に没落貴族の令嬢が絵画職人を目指して奮闘する物語。何となく興味を惹かれて録画し、そのまま放っておいた物です。
衝撃でした。
中世ヨーロッパを忠実に再現すると、歴史物になるのです。ファンタジーではありません。思えば当たり前の事です。どうしてこんな当然の事に気付かなかったのでしょう。
悟りました。
現実にはあり得ないファンタジー要素を並べ、文明は中世のレベルを考慮し、おおよそヨーロッパのような雰囲気で纏める。それで良いのでしょう。
エルフやドワーフなどの亜人、広大で危険な自然林、王と貴族と平民、社会の統治と徴税の方法。家の形や服装などは読者の想像に任せましょうか。
一気に進みました。
舞台を考察し、チートのネタを検討し、物語の流れを考えて、登場人物を練りました。あちらを立てたらこちらを修正。並行して魔法の在り方も検討。様々なファンタジー要素を作り込みました。
しかし、…物足りない。
ある日、歴史に詳しい後輩が教えてくれました。中世ヨーロッパには4つの特徴があるとの事。
1. 異民族の移動
2. 宗教
3. 領土問題
4. 王位継承問題
天啓を得た思いです。私の設定に足りなかったのはこれかも知れません。
そういえばゲルマン民族の大移動という歴史の転換点がありました。高度な文明を誇った古代ローマ帝国が滅亡しました。キリスト教会が平民も貴族も王族も従えて傲慢だった時代でした。
王位継承問題は、王家の血筋が確立してからになるでしょう。後で考えます。それ以外の要素を可能な限り盛り込む事を目指して、まずはファンタジー要素モリモリの歴史を作りました。
ファンタジーな種族が散在する有史以前。魔法で高度な文明を築いた古代の帝国。その力が衰えて、各種族が大移動する混乱期。人族の天下。王族と貴族の確立。そして人の王国が分裂。
折角だから分裂も一捻りしましょう。国家の分裂と言えば、銀河系を舞台に2人の天才がぶつかるスペースオペラがありました。ここから分裂の過程と結果を拝借しましょう。
かのスペースオペラにはイデオロギーの対立も描かれていました。中世ヨーロッパの史実にも、共和制に近い形での平民自治が実在したようです。これも拝借します。
イデオロギーの対立と言えば、王侯貴族をイデオロギーで二分するという手もありそうです。私は人間関係の考察が苦手ですが、これなら貴族の派閥争いも分かり易い。
この流れの上に現在の王族事情を考えました。中世ヨーロッパの王侯貴族は一夫一婦制だったようです。どうやらキリスト教の影響らしい。最近は沢山の妃を娶るなろう小説ばかりなので、差別化の観点からも丁度良い。私の世界では王妃様は一人だけとします。
王妃様は一人だけですが、王子様王女様は沢山います。そして陰謀が無くても命を落とす王子様は多い。中世ヨーロッパは乳幼児死亡率が高いですから。しかしここに貴族の派閥争いを重ねれば、何も仕掛けが無くても大騒動でしょう。
ここまで来たら内政チートに拘らなくても私は満足できそうです。ここまで作った歴史と社会をそのまま紹介するだけで良い。異世界転生者がチートで無双?そんな無理をしなくても、いくらでも話が転がります。むしろ黙って傍観していた方が面白いでしょう。
事ここに至って私はやっと不満の根源を悟りました。アイデア一つで書き始めてしまう事による促成栽培のような設定、それが私の不満の根源でした。思えば私が高く評価したのは、作り込んだ大きな世界観を感じる作品に偏っていたような気がします。極論すればトールキン先生にラノベを書いて欲しい。うわぁ我ながら無茶を言ってるなぁ…
さて、歴史と社会の紹介と言っても、学校の教科書では面白味がありません。文学の体裁はとりたい。とすると紀行文が良さそうです。しかし私の筆力では迫力を出せない事が予想されます。紀行文と言うと語弊がありますが、旅に関して迫力のある作品と言えば、蒸気機関車で星々を巡るSF名作漫画が思い浮かびます。あの構成を参考にしましょう。
趣味丸出しで心行くまで作り込んだ歴史。その流れの先にある今の為政者達の思想と派閥の関係。これらの上で描かれる物語の基本構造。後は具体的な人物とその関係を詰めれば、黙っていても話が動き出しそうです。
しかし、ここまでネタをバラしてしまってどうしましょう。
こんな所まで公開するつもりはありませんでした。それでも私は、創作における小さな飛躍、予想外の部品の組合せ、それを支える連想、これらの具体例を提示したかった。抽象論に終始しては結局理解できません。具体例の無い方法論の解説書には私も困る事が多かったものです。
それに、敢えて詳細には触れませんでした。まだまだ概要とも言えないような抽象的なアイデアの羅列に過ぎません。抽象的な枠組を具体化する過程では、個性が大きく反映されます。ここまでが同じでも、この先の具体化の作業によって作品の味はいくらでも変わります。なるほどここはこうやって料理したか、これは思い付かなかった、と言っていただけるような作品になるよう頑張ります。
なお、記事が私の現状に追い付いてしまいました。今後は投稿ペースが非常に落ちます。設定に足りない部分が多いので、作業はまだまだ残っています。これからは活動報告代わりに投稿させていただきます。