4
もう、雪が降り始めてきた。
学校が終わり、だんだんと暗くなっていく道を歩く。肩に積もった雪が次々に溶けていく。まだ気にならない程度だが傘を持ってこればよかったなと少し後悔した。
家に帰るにはいつもバスを使っている。晴仁とはバス停までの方向までは一緒だが、その奥にある電車に乗って帰る。バス停まではいつも一緒に帰る。
「勉強どんな感じ?」
「そこそこかな。」
ここ最近は同じような会話しかしていない。いつも勉強の進捗状況の話だ。いい加減この話にも飽きてきたところだ。
雪が勢いを増して来た。僕たちはつまらない話をやめバス停まで走る。途中で何度も横断歩道に引っかかる。気温とは裏腹に体温はどんどんと上がっていく。自分についた雪はコンマ1秒で溶けていく。
学校をでてから20分ようやくバス停についた。
「じゃ。またな。」
僕は晴仁にそういい別れた。
いつも乗っているバスが止まっている。ギリギリ間に合いそうだな。水たまりを右によけながら歩き続けた。
「きゃっ」
という声とともに背中に衝撃が走った。バランスボールが当たった感覚だ。あっちの方が押し返された。
僕はあわてて後ろを振り返る。
「あっ」
思わず声が漏れた。同じ学年の名前も知らない彼女だ。
「ごめん」
彼女は小さい声で言った。
「こっちこそ。」
反射的にこっちまでつられて言ってしまう。
「バス、行っちゃった。」
前を見ていた彼女が言う。よく見てみると彼女はびしょびしょに濡れている。
「くしゅん。」
不意にくしゃみを彼女は」した。少し赤面している。自分の体をふくようにもっていたタオルを彼女に渡す。
「これ使っていいよ。」
「キミも濡れてるじゃん。」
「もう一枚あるからさ。」
僕はないものを言葉一つであるものとした。
「大丈夫だよ。」
「いいからさ。使って。」
彼女の手を持ち、タオルを握らせた。
僕はくしゃみをしながらバス停に並ぶ。
その横に彼女が並ぶ。
「バス停がちがったら少しかっこよかったのにね。これじゃ気まずいでしょ。」
「え?なんでいるの?」
「さっき行っちゃったバスにいつものってるの。」
彼女とは乗るバスが一緒だった。でもこれまでこのバス停で一回も彼女を見かけたことがなかった。運が悪かったのだろうか。
「初めてみる。ずっとこのバス停使ってる?」
「私は何回かキミを見たことあるよ?キミ結構目立つし。いい意味で。」
「いつもズバズバと言うよね。傷つくひともたくさんいるだろうに。」
「いわないよりはましじゃない?でもほとんどが考えずにスッて出るんだよね。」
「ふーん」
「なに?その反応。」
「いや、いつも考えてからしか言葉をいわないから僕とはちがうなって。」
「ふーん」
彼女は僕の真似をした。
「今、まねしたなって思ったでしょ。自意識過剰だよ。」
「素直に言うことはいいとおもうけど、悪口と素直って違うんじゃないかな?」
「なんでそんなの言われなきゃいけないの?別にそうおもわれてもいいし。」
「とがってるね。」
「は?どこがよ頭おかしいんじゃない?」
彼女はこっちをにらみつけた。僕は顔を引きつりながら無理に笑う。
20分おきのバスが来た。
彼女は先に並んでいた僕を抜かしてバスに乗った。
「ええー」
これ以上はなにも言わなかった。なにか言われそう、そんな気がしたからだ。彼女は振り向きもせずに席に座った。
僕も彼女に続いてバスに乗る。隣に座ってやろうかと思ったけど勇気がなかった。彼女のいる方向に一歩足を踏み出すが、スッとその前にだした足を引く。
人がどんどんバスの中に入ってくる。もう冬だというのに湿気が高く、人も多いので暑い空気が閉じ込められる。真夏のようにだらだらと汗をかく。タオルは彼女に渡してしまったのでカッターシャツの袖で汗を拭く。
窓はひんやりとしている。まだ車内の熱気には負けていないようだ。体を冷やすため窓にもたれかかる。
何十分とバスにゆられる。まだ窓にもたれかかっている。バスが止まった。誰かが下りるみたいだ。
バスから見覚えのある女の人が下りる。彼女だ。彼女はこっちに気が付く。僕が貸したタオルをこっちにみせ
「ありがと」
そんなことを言っているような口の形をしていた。僕は手でOKの形を作る。それを確認していった彼女は歩いて帰っていった。なぜだか外は暗いのにあそこだけ明るい気がした。
どんどん人が下りていく。さっきまですごかった、熱気がなくなっていく。人がどんどん動き人口の風が送られてくる。
僕の体温はどんどんと下がっていった。一時間近く僕を冷ましてくれていた窓は僕の体温と引き換えに温かくなっていった。
窓越しにちらりと牛丼屋が見える。降りる駅の目印だ。僕は降車ボタンを押す。
「次、とまります」
車内にアナウンスされる。僕は降りる準備をする。
バスが止まった。熱かったぼくのヒートシンクがわりの窓にお別れをする。少し濡れた通路の上をあるきバスを降りた。




