4話 ソフトタッチ
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「ハイヒール!」
三度目の脱出挑戦アタックを終え、〈回復魔法〉でHP回復中にスキルレベルが上がったので使えるようになったちょっと上の魔法を使ってみた。
おお。HPの回復量がヒールよりも大きいな。MP消費も大きいことを考えてもこっちの方が効率がいい。
スキルの解説文によればこの魔法では大きく欠損した部分は治らないそうだが、欠損はDPを払えばダンジョンの機能で治せるし、そもそも霊の攻撃では欠損などしない。
出口を探しながら地下空間を調査し、霊と遭遇しても逃げながら調査続行。HPが危険域になってきたら〈転移〉で脱出するだけの簡単なお仕事。
それだけでマップがそこそこ埋まり、スキルが強化、そしてDPが貰える。
おかげで残念な貫頭衣だった俺が、今では立派なシティボーイに!
増えたDPを使って服や靴を揃えたけど変じゃないよな?
まだ地上には出られてないから街の流行りがわからないもんなあ。
それでもダンマス初期装備よりはマシか。
強化されたスキルはこう。3レベルぐらいまでは使っていればすぐに上がるみたいだ。
自然に上がったものも多いが、DPで購入したのもある。100分の1チートってありがたいな。
〈温泉作製〉LV2
〈鑑定〉LV6、〈鑑定妨害〉LV6
〈HP倍増〉LV3、〈MP倍増〉LV4、〈HP再生〉LV3、〈MP再生〉LV3
〈頑丈〉LV3、〈気絶耐性LV3〉、〈精神異常耐性〉LV3、〈吸収耐性〉LV3
〈光魔法〉LV3、〈回復魔法〉LV3、〈転移〉LV3、〈魔力操作〉LV2
〈感知〉LV4、〈鋭敏〉LV3、〈暗視〉LV3、〈霊視〉LV3、〈霊聴〉LV1
〈解錠LV2〉、〈施錠LV2〉
〈罠発見〉LV3、〈罠解除〉LV3、〈隠形〉LV3、〈壁歩〉LV3
これでも〈転移〉以外ではあの霊からから逃げ切れないんだから困ったものだ。
逃げてばかりなので攻撃系スキルが増えてないし。下手に戦おうとしたらすぐに捕まってしまいそうだから仕方がないけどさ。
あいつは亡霊の上位モンスター。種族が不確定なのは〈鑑定〉にまだ完全成功してないから。よほどランクもレベルも高いのだろう。
戦うよりもうちのダンジョンの頭上を守らせる路線のままでいい。
スキルのおかげで発見もしやすくなっているから危険度はぐんと下がってきた。次こそ地上に出られるはず。
それも今日はもういいか。疲れたので明日にしよう。
食事は街に出てからでいいかな。ダンマスやその眷属はDPの消費でエネルギーを補給することができるから。
なんで前世から持ち込んだ食料を消費しないのかというともったいないという理由だけではない。こっちの食事でのガッカリ感を少しでも減らしたいからだ。
二、三日食事しなければ残念な食べ物でも耐えられるはず。駄目だったら時はそれこそスキルも使って前世の物にお世話になろう。
◇ ◇ ◇
ふぁあ、よく寝た。
ダンマスにとって睡眠は必ずしも必要なものではないようだが、寝ることはできるし、頭の切り替えにもなる。
自分がダンジョン管理のための機械ではないと思うためにも、できるだけちゃんと睡眠は取ろうと思う。
ファントムのおかげでまともになってきた生活エリアの洗面台で顔を洗って今日の予定を考える。
目標は地下空間のマッピング完了と地上への脱出だ。
ウィンドウでマップを見ながら考える。
地下空間は大きな円形の空間を中心にいくつもの枝道に別れている。この道は入り組んでいて行き止まりだったり円形空間の周りを一周してるだけだったりとよくわからなかったが、マップを見て理解した。
通路自体が魔法陣的なものだったのだ。通路にも模様付きの三角タイルが貼られていたのもそのためか。
なんの魔法陣かはわからない。
もしかしたらあのファントムを封印している?
それならばダンジョンの通路を通せないのもわからないでもないが、ここまで大がかりになるものだろうか。
俺が小さいからそう感じるだけなのかもしれないけどさ。
考えようにも情報が足りなすぎるか。
地上に出ないと話ができる相手もいなさそうだし。さっさと街に出よう。
マップの空白地帯の付近にファントムがいないことを祈りながら〈転移〉する。
すぐに〈感知〉に意識を集中するがやつは少し離れた場所にいるようなので、気づかれないよう〈隠形〉スキルを使いながらこそこそと空白地帯の調査開始。
もしここがファントムの封印だったら出口なさそうだけど、この空間のマップが完成すればそれを避けてダンジョンの通路を通せばいいだけだ。
音を立てないように気をつけて壁を歩く。
俺はまだ飛行関係の能力や魔法はないが〈壁歩〉というスキルを持っている。
これは垂直な壁だろうと普通に歩けるようになるスキルだ。レベルが上がると走ったり止まったりしても落ちなくなり、天井すらも足場とすることができるようになるスキルだ。クチコミに書き込んでいたのは忍者みたいな名前のやつばかりだったな。
これを使えばあの窓くらい余裕でたどり着ける。
地面を歩くように壁を歩けてしまうが、視点が90度変わるのでそっちは慣れるまでちょっと違和感あり。酔うほどではなく、けっこう面白かった。
だがスキルレベルが1レベルだと走ると落ちる。
昨日はゆっくりと歩いてなのでファントムに捕まりそうになってしまって、つい走ってしまい落ちてダメージを受けてしまった。
幸い死ぬことはなかったが、落下死はサンドボックスゲームでもよくある死因だったし、これは早めに飛行関係をどうにかしないといかんね。
レベルが上がって走っても落ちなくなった〈壁歩〉スキルはさらに便利だ。ファントムもまさか天井付近にいるとは思うまい。
ダンジョン作製すら防ぐタイル壁のおかげで霊がやりそうなすり抜けもしてこないし、〈感知〉と〈霊視〉のスキルも上げているから先にむこうを見つけることだってできるはず。
考えてみればこのタイルいいな。あとでうちのダンジョンにも貼ってみようか。
ファントムは最初に会った時よりも姿がはっきり見えるようになった。ぼやけていた輪郭がしっかりしてきたのは、スキルでそう見えるようになっただけなのか、それとも俺からHPを吸収しているせいだろうか?
その分以上に瘴気を奪っているはずなんだが。
おっ、気づかれたかな。こっちに向かってきている。それじゃ離れた場所に〈転移〉してその先を調べよう。
気づかれないようにがんばっているのに、あいつはすぐに見つけてくれるんだよな。移動も速いし。よほど高い〈感知〉スキルを持っているのかも。〈鑑定〉もまだ失敗するし、生前とんでもなく強いやつだったのかも。
◇ ◇
隠れんぼをしながらを調査を続けること数時間。今回はまだ接触されずにいる。DPはオイシイけどあの力が抜ける感じはやはり嫌だ。
あのファントム以外にこの空間から瘴気を感じないのは魔法陣タイルの影響があるかもしれない。そうなると、ファントムを倒すわけにはいかない。DP入手の手段がなくなる。
DPに余裕があるうちになんとか地上へと行かなければ。
まあ、もう出口見つけちゃったんだけどね!
厳重に閉められた扉。鍵と魔法でがっちりと施錠されているこの扉。
間違いない。ここが出口だ。
どうしようかな?
スキルレベルをDPで上げて強引に〈解錠〉してファントムが出てくる前に〈施錠〉するか。
だがそれでは、この扉を管理しているやつが異常に気づく可能性がある。こんな封印をするやつに俺とダンジョンの存在を気づかれるのは面倒だ。
やはりダンジョンの通路をこの先に繋げた方がいい。
ならば仕方がないか。通路作製のためにもうちょっとDPを稼ごう。
「やっぱ嫌だなぁ」
思わず声が出てしまったが、ファントムに見つかるつもりなので問題はない。
案の定、俺の声が聞こえたのかファントムがかなりのスピードで向かってくるのが〈感知〉スキルで伝わってくる。ぽっちゃりのくせに速すぎるよ。
「……」
ん? 誰かの声が聞こえた。
これはまさかファントムの声だろうか。
そういえばさっき確認した時に〈霊聴〉ってスキルが増えていたからそのせい?
「……こ」
小さくかすれた声だ。よく聞き取れない。
今までもなにか喋っていたのかも。とくに聞きたいとも思えないけどさ。
「……こ……ら」
転生後初めて聞いた言葉がお叱りの声とか。
「住処を荒らしてるって言えなくもないけどさ、壊れた壁修復してあげたじゃん! それともお前が壁を壊したのか?」
返事はない。
そりゃそうか。思わず日本語で言っちゃったもんな。むこうもなに言ってるかわからないだろ。
会話をする気もないので自分からファントムに急接近。大きな腹に手を伸ばして。
「瘴気吸収!」
つい、また声に出してしまった。わからなだろうけど、こっちの意思を伝えられる相手がいて嬉しかったのかもしれない。
ファントムは回避しようとしたが、的が大きいので狙いとは違った場所だがタッチして吸収に成功した。
「……ぁぁぁぁあああああん!」
ファントムが大きな声を上げた。しかもイヤーンなポーズで。
そりゃタッチしたトコはおヒップだけど、もしかして女だったの?
これではまるで俺が痴漢したみたいじゃないか!
いたたまれなくなった俺は〈転移〉で逃げ出した。
Tips
ハイヒールはヒールの上位の〈回復魔法〉
より大きくHPを回復
残念ながら大きく欠損した部分は再生できません




