2話 弱点は鏡
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転生とダンジョン作製をおえた俺は、ついに転生先に現界する。
コアルームとして創った最奥の部屋のはずだがやけに暗い。
ってそうか、照明をセットしてなかったな。それでもぼんやりとだが見えるのは〈暗視〉スキルのおかげか。クチコミには必須ってあったけど取っといてよかった。
まあ、〈光魔法〉も取っといたからあまり使わないかもしれんけどさ。
スキルは持ってれば本能的に使い方がわかるようだ。取り扱い説明書を記憶に記録されている感じだろうか。
「ライト!」
試しに天井に照明魔法を設置してみた。戸惑うことも失敗することもなく簡単に魔法が発動する。初めてなのに全くそんな気がしない。呼吸のようにできて当たり前ってスキルって凄いな。
100分の1しかDPを消費しないからってスキル習得やステータス向上にほとんどの所有DPを回してしまったが、これは間違いではなかったと自分を褒めていいだろう。
えらい俺! スゴい俺!
まあ、そのせいでダンジョン分に回す分や衣類の分のDPがなくてショボイんだけどさ。シティボーイの住居や装いではないのが玉に瑕だ。
高揚した気分をさらに盛り上げるためにステータス、スキルを確認してみることにする。
うん。ステータスウィンドウもちゃんと開くな。視界には空中に浮かぶ画面。首や視線を動かしてもちゃんと追随している。
名前:フーマ 種族:スクナ 性別:男
LV:1 DLV:1 クラス:ダンジョンマスター
STR:200 INT:264 AGI:200
DEX:200 VIT:500 MIN:999
HP:1400/1400 MP:2526/2526 CP:1499/1499
転生スターターに表示されたヒューマンの初期値はSTRやINT等の三文字能力値の数値が全部10だった。それから考えればとても小人とは思えない値だ。
まあ、ヒューマンでも高レベルだととんでもないやつもいるようだが。
あれ、種族ランクが表示されていないな?
ステータスウィンドウのバグ?
SRとかSSRってソシャゲのレアリティのような分類があるはずなんだが。
種族が同じなら種族ランクも同じだから表示を省略してるのかも。【スクナ】の種族ランクを知りたかったのになあ。
スキル
〈ダンジョンマスター語〉LV1、〈標準小人語〉LV1、〈農業〉LV1、〈酒造〉LV1、〈調合〉LV1、〈温泉作製〉LV1
あ、〈農業〉なんてシティボーイには不要ってツッコミはナシな。これ、【スクナ】の種族スキルで最初っから持ってたやつだから。
〈アイテムボックス(10000キロ増量)〉、〈前世の記憶〉、〈前世のアイテム(100キロ増量)〉、〈地図〉、〈鑑定〉LV1、〈鑑定妨害〉LV1
この辺は必須だろう。アイテムボックスはDP100分の1チートでかなり増量して前世のアイテムをいろいろ持ち込んだ。よく考えるとDPでその物品を購入した方が節約できたかもしれないが……。
〈ガラテア〉LV1、〈複製〉LV1、〈セーフルーム〉LV1
100分の1じゃなかったらとても入手できそうにない高価なスキルだ。その分性能も高く、〈ガラテア〉と〈複製〉はオンリースキルという習得できるのは「世界で一人だけ」という超レアスキルだ。この二つだけでもほとんどなんとかなるんじゃないかと思えるほどの壊れスキルなのである。タイミングよく購入できてよかった。
あとはまあ、便利そうなのを適当に選んだので使う時に思い出すだろう。たくさん取り過ぎたのでこれ以上の考察は時間が惜しい。暇な時に確認して悦に入ろう。
スキルは使用しているとレベルが上がるようなので、DPを消費してのレベル上げは行っていない。
ふう、生まれ変わった自分の強さを堪能したというにはちょっと不足だけど、油断してダンジョンの防衛を疎かにすることもあるまい。ダンジョンの確認もしなくては。
照明魔法はけっこう明るいな。天井自体が光っている。
コアルームはこの身体だとそこそこ広い。
俺の心臓ともいえるダンジョンコアは空中に浮いていた。赤くて大きい球体だ。俺と同じくらいだから直径は、って今の俺のサイズがわからんな。ステータスには表示されていなかったから、あとで測らないと基準にならない。
身長は不明だが体型はだいぶスリムのようだ。細マッチョ一歩手前ぐらい。学生の頃よりも引き締まっている。STRやVITを特盛りにしたおかげだろうか? 弛んだ腹が引っ込んで嬉しい。
これってもしかして、さ。
アイテムボックスから前世の鏡を出す。これも違和感なく自然に使えたけど、出したい物を迷うことなくすぐ出せるってスゴくない? そこそこいろんな物が入ってんのに。
フィギュアの展示に使っていた小さな鏡なんだけど、今なら全身が映る姿見である。
ふむ。やはり若返っているようだ。見た感じ二十歳前後ぐらい。
ダンジョンマスターとして全力を出せるようにってことなのかな。そういやスターターで外見年齢のプラスマイナスもあったような気もする。調整にはDPがかかるし、おっさんのままでもいいと思ったけどこれは嬉しい誤算かな?
……小さいおじさんになれなくてちょっと残念だったりなんかしてないぞ。
顔は、むう。前世の面影はあるけど間違いなく美形だ。
フィギュアサイズのせいかアニメ顔にも見えるが。
シティボーイを名乗るに相応しいビューちフォーなフェイスに大満足した分、着ている物が気になり出す。
あまりにも安っぽい貫頭衣だ。ううむ、これはいけない。靴もなく裸足だし、それどころか履いてない。
クチコミにはパンツ買えって書きこみなかったのになあ。まあ、そんなこと書くやつもいないか。
だがさしたる問題は無い。
こんなこともあろうかと〈裁縫〉スキルも習得しているのだ。今はLV1だがいずれ流行にのり遅れないファッションにしてみせる。
しかし、このイケメンはいつまででも見ていられるな!
◇ ◇
はっ!
鏡を見ていたらまた時間が過ぎてしまった。ヤバイ、イケメンマジヤバイよ。
生まれ変わった俺ってばもしかしてナルシスト?
でも美しいのも確かなのだ。美しいという言葉はこの顔のためにある!
むむむ、小人だとしてもこの美貌では人間たちがほっておかないかもしれん。勿体ないが仮面か覆面で隠すことも考えるべきか。
俺目当てでダンジョンの侵入者が増えすぎても困るし。ああ、美形なのも悩ましい。
っと、自分にばかり注目してもいけないな。
イケメンシティボーイの住居を確認しなくては。
城の地下深くにある我がダンジョン最奥のコアルーム。だが土壁ではなく壁、床、天井は石造り。ヒビや継ぎ目のない綺麗な平面だ。
地味な気もするが悪くはない。テクスチャの変更にはDPがかかりそうだし、しばらくはこれで我慢するか。
ダンジョンコアのそばにある事務事務した外見のこれはパソコンデスクだな。
ちゃんと小人サイズではあるがちょっと古すぎない? ブラウン管ディスプレイにFDドライブなんて。USB端子どころかCDドライブもついてないのはちょっとなあ。
いや、小人サイズのCDなんてないのかもしれんけどさ。
電源は壁のコンセントからか。このサイズでは前世から持ってきた家電は使えそうにないのが不満だ。
備え付けの椅子だってキャスター付きの安っぽい事務椅子。
いかん。これはいただけない。オシャレなオフィス感がゼロだ。
ガッカリしながらもPCの電源を入れる。ああ、真っ暗なディスプレイに反射する自分の美顔に癒やされる……。
って、遅すぎ。
いくら旧式PCでもこの遅さはないだろ。OSが起動するまでに10分以上かかってるんじゃないか?
カラーだけど発色も悪いし、ユーザー登録を続ける気にもならないんだが。
これはあれだ。イライラしながらこのポンコツを使うより、DPを貯めて新しいPCを買った方が結果的に早くすむ気がする。
うん、きっとそうに違いない。だって100分の1チートがあるのだから。
そうと決まればダンジョンの外に出るとしよう。
通路も確認できるし、なによりも外の人間たちの顔を確認したい。
イケメンじゃん、って浮かれたらこの世界じゃありふれた顔でそんなでもなかったなんてのだったらショックだから早く確認しなければならないのだ!
PCの電源を切って出発の準備を始める。
悩むのはダンジョンコアだ。
とても人類種が入ってこれないような小さい小さい我がダンジョンではあるのだが、ネズミや小動物等は入ってこれるだろう。俺の心臓をかじられては困る。
だからといって「俺がダンジョンだ!」ってダンジョンコアを自分の身体に吸収して外出するのも怖い。
ダンジョンマスターはダンジョンコアさえ無事なら身体が死亡しても復活できる。DPはかかるが復活できるのは大きい。
なにより、現在は初心者ダンジョンマスター応援キャンペーンとしてダンジョンレベル10までならば、復活が無料なのだ。これは大きい!
ダンジョンの出口は城の地下。そして城下街。
近衛兵や強い冒険者に遭遇したり、不慮の事故で死んでしまう可能性があることを考えたらダンジョンコアを持って動くのはないだろう。
逆に考えればダンジョンコアの安全を確保さえできていれば、いくらでも無茶ができることなのだから。
無理ができるうちに街の状況を知る方が後々助かるだろう。
ダンジョンレベルは保有DPが一定値に達するとレベルアップする。
幸い、俺の100分の1チートは必要DPが低くなるだけなので急速なレベルアップはないだろう。入手DPが100倍でなくて本当によかった。
DPは早めに使うようにしていればダンジョンレベルもそうは上がるまい。
さて、どうやってダンジョンコアの安全を確保するかだが、ダンジョンコアを強固な箱にでもしまうのが無難か。
ダンジョンコアは密閉されるとダンジョンと隔離されてしまい、ダンジョン機能を発揮できなくなってしまうが、それはコアを吸収したダンマスがダンジョンから離れても同じことなので気にするまでもない。
ダンジョンコアが機能しなければダンジョンが瘴気を吸収できずDPが発生しなくなるが、ダンマスや眷属はその身に瘴気を吸収、貯蔵できる。
帰宅後にダンジョンコアを箱から出してダンジョン機能が回復できればコアがダンマスや眷属から瘴気を吸収してDPが発生するからだ。
問題はダンジョンコアが中途半端に大きいこと。これ絶対、普通サイズだよね。ちゃんと小人サイズにしてくれればいいのに。
これだと入れ物に困る。むう、こんなことなら冷蔵庫も前世から持ってくるべきだったか。重いから断念したんだけどさ。
スキルの〈前世のアイテム〉って重量制限があるんだよ。DPで運べる量は増やしたんだけど、さすがに冷蔵庫は重すぎた。
ダンジョンの壁で囲んでしまうか?
だがそれだと帰ってきた時にダンジョン機能を回復させるのが難しいんだよなあ。
ダンジョン機能が使えないと壁の解除もできないし。破壊しようとがんばってダンジョンコアまで破壊しちゃったら笑えない。
あ、前世からの持ち込み品のあれがあったか。友人から貰った中古の炊飯器。小さな料理店をやってるやつなんだけど、ガス釜のいいの買ったってんでそれまで使ってた電気式の二升炊きのくれたんだ。
前世の俺は一人暮らしだったから大きすぎるんだけど、炊飯のためじゃなくてフィギュアのディスプレイに使えるってね。腹ペコキャラのフィギュアにはピッタリだったよ。
この炊飯器も重いんだけどギリギリ持ってこれた。
「炊飯ジャーに封印ってあの大魔王っぽいよなぁ」
ちょっと使い込んだ見た目だけど、それなりに頑丈なはず。大きさもちょうどいいみたいだ。
……うぐっ、ダンジョンコアを入れて蓋を閉めたら力が抜ける感じがする。コアとの接続を遮断されたってことか。まあ、これぐらいならすぐに慣れる。
あとは簡単に開けられないように〈施錠〉スキルで鍵をかけておく。このスキルは鍵がない物にも鍵をかけられる便利なスキルだ。
〈施錠〉のクチコミ
・ブラザーX (【ダークエルフ】 男 31歳)
施錠にはMPが必要。開ける時には施錠した本人ならMPはいらない
・匿名希望 (【アークダンピール】 男 51歳)
〈解錠〉スキルと相殺になるのでレベルは高い方がいい
これならば簡単には開けられまい。俺、〈解錠〉スキルも持っているんでそのシナジーもあって同レベルの〈解錠〉スキルじゃ開けられないんだよね。といっても、まだ〈施錠〉スキルも1レベルなんだけどさ。
それと、もしも人間に見つかっても誤魔化しが効くようにステータスも偽装しておこう。〈鑑定妨害〉のスキルを使えば〈鑑定〉されてもダンジョンマスターだってバレずにすむ。
〈鑑定妨害〉のクチコミ
・ダスケ (【ハイヒューマン】 男 29歳)
人類種にも〈鑑定〉持ちがいるので村や町に出るなら必須
・匿名希望 (【アークダンピール】 男 51歳)
〈鑑定〉スキルと相殺になるのでレベルは高い方がいい
匿名希望さん、クチコミをコピペしてません?
こっちの相殺も同レベルで見破られてしまうのだが、〈鑑定妨害〉スキルは〈鑑定〉スキルのシナジーが働く。同レベルでは看破はしにくいだろう。
このスキルでクラスに表示されているダンジョンマスターを遊び人にでもしておこうか。いかにも小さな妖精っぽいよね。いや、このイケメンだと別の意味の遊び人になっちゃうかな。
高い能力値も低く偽装しておく。小人は弱いらしいからな。
あ、種族も変更しておくか。珍しい種族だと狙われてしまうかもしれない。うーん、【小人】でいいか。
あれ、偽装工作しているうちになんか微妙に感覚が変わったような。〈鑑定〉スキルで自分を見た時の感じが偽装した箇所が鮮明になってニセモノ感が薄れたみたいだ。
ステータスウィンドウで確認したらやはり〈鑑定妨害〉スキルがレベルアップしていた。
ふむ。スキルレベルが低いからか、けっこう簡単にレベルアップするね。これはスキルを使いまくった方がいいかな。その分MPを使うけど。〈鑑定妨害〉スキルも使用するとMPを消費するみたいだ。
ま、俺のMPはDPで増やしているし関連スキルもあって多いんだけどね。
〈MP倍増〉のクチコミ
・ヴァイオレット (【エルフ】 女 278歳)
LV1でも基本MPが倍になるので取っておくべき
・清貧リッチ (【リッチ】 男 777歳)
HPは魔法で回復できるのでこっちの方が重要
俺は100分の1チートで余裕で〈HP倍増〉と〈MP倍増〉の両方を習得したけど、普通は必要DPが2000。最初に持っているDPが10000だから習得に迷うかもしれないスキルかも。
せっかくレベルアップしたのでMPもまだあるから〈鑑定妨害〉をやり直して偽装をより練り上げておく。
目立ってしまうイケメンフェイスは伊達眼鏡で隠すか?
ただの美形眼鏡男子になるだけか。あでも、瓶底眼鏡ならつけていたフィギュアがいたな。あとで試してみよう。ベタだが眼鏡を外すと美形ってのをやってみたい。
とりあえず今回は手近な布をアイテムボックスから出して、マフラーみたいに巻いて鼻の辺りまで隠せばいいか。勿体ないけど!
コーディネイトが微妙だが仕方ない。
照明用に〈光魔法〉を使いながら通路を歩いていく。壁、床、天井ともコアルームと同じ石造りだ。大きさは作製時に小人用通路のサイズとして知った40~60センチ四方。だが整いすぎている。
これではネズミの巣には見えない。あとで土壁にしなくては。田舎道みたいでシティボーイとしては大いに不満だけどさ。
通路はくねくねと時には上り下りの坂になりながら続く。
コアルームは最奥だが、最深ではない。浸水が怖いからな。いくつかの坂の底に排水口を設置して排水できるようになっている。
もちろんDPで購入した物だが、排水口の奥は魔法の光球を近づけても真っ暗いままで全く見通せない。どこに繋がっているんだか。
あ、ダンジョンコアを密閉してると、この排水口も使えなくなるのかも。
むう。だが、ダンジョンの出入り口は室内のはずだ。いきなり浸水することもないか。
マップウィンドウを表示し、道を確認しながら進む。〈地図〉スキルのものだが、自分のダンジョンなら未踏地でもマップは埋まっている。
〈地図〉スキルはレベルが存在せず、自分が通った場所がマップに記録されていく。うん、最近のゲームじゃ標準装備が当たり前なオートマッピングだね。
ダンジョンから出たらマップを埋めるためにも少し歩きまくるか。お高いスキルである〈転移〉スキルも100分の1チートで余裕で習得したのだが、〈地図〉スキルと連動しており、マップが表示されている場所でないと瞬間移動できない。
……あれ?
よく考えたらダンジョンコアを壁の厚い部屋に密閉しても〈転移〉を使えばその部屋にいけるんじゃね? 自分のダンジョンってことでマッピングもされてることになるし。
「むう、あとで試してみるか。メモメモ」
メモ帳ウィンドウはダンジョンの機能ではなく、個人の能力なので助かるな。その分、書き込める量はかしこさの値で決まるが。
他にも思い付いたことはメモっておこう。転移先を増やすためにもマップは埋めまくりたい、と。まあ、眷属が通った場所もマップが埋まっていくから「偵察用の眷属を用意」とメモしておく。
偵察眷属はネズミかスズメか、街中をうろついていても気にならないやつがいいな。それも今回の外出で確認したい。
できればもう少し大くて、俺の愛車代わりになってくれるのがいるといいんだけど。
「やっと出口か」
小さなダンジョンなのだが、確認しながら移動すると思ったより時間がかかったな。
Tips
このフーマはシティボーイ()なため自分をおっさんとは呼びません




