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11話 ライドオン

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「おはよう、ドンナス、シーナ」


「なにがおはようだフーマ、もう昼ぞい」


「やはり今日もきましたね。おはようございますフーマ。そちらの彼女は?」


 コルノをドンナスの店に着くと、ドンナスだけでなくシーナもいた。俺を待っていたというのは自意識過剰かな。


「シーナにぼっち扱いされたのを否定するために連れてきた。可愛いだろ、ふふん」


「ボク、コルノだよ」


「ほほう。たしかにこれは美しい。大きければ私と競うこともできたろうに。……いや、この大きさだからこその美もあるとすれば」


 シーナは俺の時のようにずいっと仮面を寄せてコルノを観察し、ぶつぶつと悩みはじめてしまった。


「やれやれ。名乗り返さんのは美しくないのではないかの? ワシはドンナス。見てのとおりのドワーフでフーマの心友ぞい」


「むぅ、ドンナスに指摘されるとはたしかに美しくないです! これは失礼しましたね。私はシーナ。美の探求者です。貴女とは仮面同士だ、仲良くしましょう」


「う、うん。よろしく」


 シーナの差し出した指を両手で持ってぶんぶん上下させるコルノ。眼帯を仮面扱いされたのは気にしないのか。

 あとさり気に心友アピールをするドンナスにはもう慣れた。


「ほら、コルノが美少女だって証明されたろ」


「も、もう、またフーマはそんなこと言って」


 ぽかぽかと両手で軽く殴られました。

 げふっ。見た目は可愛い動きなのに、威力はけっこうあるんですよ、これ。さすが魔王。


「イチャイチャと見せつけてくれますね」


「なるほど。二人はそういう仲であったか」


 なぜかドンナスとシーナが微笑ましく、そして生暖かい目で見ている気がする。

 そういう仲ってどんな仲さ?

 俺はすぐ勘違いしちゃうぞ!


「俺みたいにコルノも冒険者ギルドに登録したいんだけど、そのために登録料を稼ぎたいんだ」


「そうですね。これほどの美を誇るコルノ嬢ならばフーマ以上に捕獲を狙う者が増えることは確実かと。ギルド登録はいい考えです」


「ボク、簡単に捕まらないよ。でも、冒険者になるのは楽しそうかも!」


 魔王コルノは味方にならないルートの延長みたいだから、冒険者ってポジションは初めてなのだ。

 でも俺たちはちっちゃいから冒険者で活動ってのもねえ。

 身分証明として、車も持ってないのに免許だけ取るという前世の行為と同じつもりなんだけど。


「俺でもできそうな仕事ってある?」


「冒険者ギルドで依頼を探すにしても討伐依頼は無理だろうとすると、採集依頼か? だがのう、その大きさではあまり運べそうにないぞい」


 考え事の時の癖らしく、またも髭をくるくると指にからめながらのドンナスの指摘にコルノは反論する。


「ボク、戦えるよ。こう見えてけっこーやるんだよ」


「おう、お前さんたちはダンジョンの出だったな。ならばウサギぐらいは倒せるかのう」


 ゴブリンみたいなモンスターと戦うのかと思ったらウサギ相手か。そりゃ普通の野生動物もいるなら、そっちの狩りもあるよね。

 可愛い生き物を殺すのは気が引けるが仕方ないのか。

 というかだよ、戦闘以外に稼ぐ方法ってないかな。


「細かい細工ぐらいなら手伝えるんだけど」


 小さな自分自身のために必要な物を作れるようにってクラフト系のスキルもそれなりに習得している。〈ガラテア〉を使うためにも〈彫刻〉スキルだって持っているのだ。


「ドワーフにむかってそう言ってのけるとは頼もしいが、最近は大物が流行りでのう。小さな装飾をわかってくれる者も少ないぞい」


「むー」


 残念。フィギュアブームはこの世界にはまだきていないようだ。

 新たなフィギュアの入手は自分で作るしかなさそうだな。


「ともかく、冒険者ギルドに行くぞい。フーマをギルドの職員に見せにゃならんし、行けばきっとなにか仕事も見つかるぞい」


「ならばコルノ嬢は私に乗るといいです。ここならば捕獲しようとする連中も手出しはできません」


 シーナはそう言ってコルノを自分の胸アーマーの片乳に座らせた。いくらでかいからってそんなとこ座らせちゃうのか!

 たしかにそれならうかつに手は出せない。痴漢扱いされてしまうからね。


「おっきぃー」


「乗り心地はどうです?」


「けっこー揺れて面白いねー」


 シーナの胸(っぱい)の弾力は胸アーマー程度では抑えつけられずによく揺れるもんなあ。


「フーマも乗ります? まだ片方空いていますよ」


「乗れるか!」


 むしろ挟まりたいわ!

 でもそんなことして緩んだ顔を見せるわけにもいかないだろ。


「ならばワシの兜じゃな」


「いいのか?」


「飾りにもなって面白かろう」


 俺は「愛」の文字やムカデ扱いか。人形付きの兜って売れるかな? 造形には協力するぞ、有料で。



 ◇



 飾り扱いはあれだが、いかにもドワーフ装備といった感じのバイキングヘルムはなかなかに乗り心地がよかった。大きく湾曲した二本の角が両手で掴むのにちょうどいい高さにきてて安定感があるのだ。


 二人に乗った俺とコルノはかなり目立っていたようで、注目の的だった。

 貴族の小さなお子さんが指差して「あれほしー」ってやってる。捕まってたらああいう子のために売られた可能性もあったんだろうなあ。


「すごい騒ぎぞい」


「フーマは有名人なんだね」


「明日、いえもう数時間もすればコルノ嬢も街中の噂になりますよ」


 たしかにコルノは座っている場所が場所だけに男どもの視線が集中しているもんな。俺があっちに座っていたらかなり居心地が悪かったに違いないな、嫉妬の念でさ。


「ほれ、ここが冒険者ギルドぞい」


「知ってるよ。俺のデンジャーゾーンの一つだったから入ったことはないけど」


「これからは問題ないですよ」


 言いながらシーナが西部劇の酒場のような上下に隙間のある両開きの扉を開けて冒険者ギルドの中へと入っていく。ウェスタンドアだったかスイングドアだったかな?

 取っ手のないこの扉は荷物で両手が塞がっていても出入りできるようにと、冒険者ギルドでも採用されているそうだ。


 まあ、そういうハンズフリーな便利ドアも高さが人間用なので俺とコルノだと扉が頭上。開け閉め関係なくさらに楽々で入れてしまうのだけどね。

 ちなみにドンナスみたいな標準的ドワーフの高さだと顔の位置に扉がきて兜の上の俺が開けるいい感じだったり。



 俺たちが入ると冒険者ギルド内でも視線が集中し、喧騒も激しくなった。

 数人が近寄ってくるのをドンナスは手で制し、受付のカウンターへと進む。


「ギルド長はおるかの? 見てのとおり、話題の新人を連れてきてやったぞい」


「は、はい。お待ちくだひゃい」


 なにを緊張したのか、受付の眼鏡の女の子は椅子から起ち上がりながら転んで、痛かったのか目に涙を浮かべながらもギルドの奥へと走っていった。


「ドンナス、イジメちゃ駄目だよ」


「今の、ワシが悪いの? ち、違うぞい、ギルド長に会うのが嫌なんぞい! あやつは顔が怖いからのう」


「でも急いで向かったみたいだけど」


 怖がる相手のとこに行く感じではなかったように見える。なんか頬も赤かったし。


「ドンナスは知らなかったようですね。あの娘はギルド長にお熱なんですよ」


「ほう。あの強面(こわもて)にか。物好きもおるもんぞい」


「ドンナス、男は顔じゃないんだよ」


 えっ、コルノには美形の効果なしなの?

 せっっっかく俺にも春がくるかと喜んでいたのに!

 ……なんてね。顔だけでモテても長続きしそうにないから気にするほどじゃない。こう言っても負け惜しみの(ひが)みっぽくならないのは美形になったおかげさぁ。


 すぐにさっきとは違いにこにこした眼鏡受付嬢が戻ってきて「こちらです」と俺たちを連れていく。

 応接室? どうやらギルドのお得意さんと話をしたりする場所のようで調度品も安物じゃないな、これ。


「ほお、お前さんが噂の小せえやつか。初めて小人を見たがマジでちっこいな。俺がここのギルド長、ジャック・ドルドレーンだ。んん? なんか増えてんぞ、ドンナス」


「おう、どうやら一人じゃなかったようぞい」


 分厚くて高そうなテーブルの上に移動した俺たちを指差すジャックにドンナスが肯く。

 うん。ドンナスが言うようにジャックはスゴイ強面だ。顔中に傷跡もあるスキンヘッドの長身のマッチョマン。顔だけじゃない、俺たちに向けた太く毛深い手にもその毛を分けるように傷跡がいくつも走っている。


 こりゃ前世で会ってたらビビったろうなぁ。

 そんなジャックに臆せずコルノは名乗りを上げる。まあ、魔王様なんだしもっと強烈な見た目のやつも知っているか。


「ボクはコルノ。ま……まだこっちにきたばかりのフーマの仲間の妖精だよ」


 おい、今、魔王って自己紹介しそうになったでしょ。まったく、ダンジョンマスターの強制力で魔王ってことは隠すように頼んでおいてよかったよ。


「俺がフーマだ。冒険者ギルドに登録してくれて、ありがとう」


 コルノの失敗に気づかれないように俺も名乗りとギルド登録の礼を述べる。

 あ、やっべぇ。こんな時は菓子折でも持ってくるべきだったか?

 だけど小人がそんな物を持ってくるのも不自然かもしれない。ドンナスにこっちの常識を聞いておけばよかった。


「礼はいらん。冒険者ギルドは来る者は基本的に拒まない。ほっとけば犯罪者になるようなやつらの受け皿という側面もあるんだ」


 冒険者ギルドってハローワークだったのね。





Tips

 シーナの戦闘力は90超え



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