プロローグ
悪いな勇者、このダンジョンは小人用なんだ の分岐ルートです
実験的に始めてみました
よろしくお願いします
短めの連載の予定
大いなる神が創った遙かなる世界クラノガイアス。
人々とともに小さな妖精たちが大陸中で暮らしていたのは遠き昔。
今では妖精といえばエルフやドワーフ等の人類種かゴブリンやトロールのようなモンスターばかり。
わずかに見かけるとしてもそれはダンジョンの中で、その数はとても少ない。
小さな妖精はその大きさと同じく力も小さくとても弱かった。生存競争に敗れたのだ。
わずかに生き残った者たちも世界に満ち始めて何百年と経つ瘴気によってその身を変えられてしまう。虫や草花と同じく小さな身体の生物は瘴気の影響で変化するまでの期間が短いからだ。
もはや小さき隣人はいなくなってしまった。
異世界より召喚された勇者たちはなげく。「妖精たんぺろぺろ(注)したかったお」と。
彼らは絶滅したのだ。
だが私は諦めない。
小さな妖精たちが集まり船に乗って去ってしまったという物語も各地にある。それぐらい彼らは人々に愛されていたのだろう。
物語の真偽はともかく、もしかしたら人類やモンスターのいない島でなら生き残っているかもしれない。
いつか私は彼らと巡り会えると信じている。
――ある小型妖精研究家の手記より。
(注)ぺろぺろとはいかなる行為であるか不明だが異世界勇者たちにはとても尊い行為らしい。
◇ ◇ ◇ ◇
クラノガイアスには五つの大陸と無数の島がある。
それぞれ右手大陸、左手大陸、お腹大陸、右足大陸、左足大陸と呼ばれる大陸にはその名のとおりの地形であり、大地母神の身体が大地になったと信じられていた。
右足大陸の膝付近に位置するコーラヘヴン王国。
数百年前、異世界より召喚された勇者が建国したという国だ。その都シオシエでは最近とある小人が話題になっていた。
人類種である妖精のハーフリングやドワーフよりもはるかに小さな人型生命体。
大陸では絶滅したはずの小型妖精かと多くの街人は噂している。
その小人には一般的に小さな妖精の代表格であるフェアリーの証である翅はなく、大きなぐるぐる眼鏡で顔のほとんどがわからないが、服装から見てたぶん男性。
ふらっと街中を歩いていたり、商店の中をうろついたり。
時には興味深く長い時間鏡を見つめていることも。
たいていは屋根の上を散歩していてよく猫たちに追いかけられている。
いや、猫だけではない。
物珍しい希少生物であれば好事家や学者が高く買い取ってくれるだろうと、多くの者がこの小人を捕獲しようと狙っていた。
しかし小人は素早い。
翅がないからか空を飛びはしないが、その身長からは信じられないほど高く跳び、そして壁や天井をまるでヤモリのように自在に走り回る。
眼鏡や服を着用していることからもわかるとおりに知能も高いのか、仕掛けられた罠にもかからない。
噂が都に拡がりしばらくたって、声を上げて笑うことはあっても街の住人の話しかけに応えなかった小人が喋るようになった。
それもたどたどしいながらも右足大陸語である。
彼は自分のことはあまり話したがらないが名前を尋ねると「フーマ」と名乗った。




