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27 再開(1)

 照りつける陽光が眩しい、とある昼下がり。


 外の空気はかげろうで歪んでおり、嫌がらせにも取れる暑さをキープしているようだ。


 カウンター内の司令塔であるオウガさんは休憩に入っており、今は俺がにぎり担当、ガトウが軍艦巻き担当として待機していた。


 ざっと店内を見渡す。先程までの混雑ぶりが嘘のように客席は閑散としており、誰一人いない。おやつ的な時間帯なのでしようがないと言えばそうだが。


 包丁を拭いている俺に、手持ち無沙汰っぽいガトウが近付いてきた。


「暇ですね」


「ああ」


「静かですね」


「ああ」


「閑古鳥が鳴いてますね」


「ああ」


「千羽くらい」


「逆にうるさいだろ!」


 しょうも無いやりとりのあと再び沈黙が訪れた空間に、天井に備え付けのスピーカーからラジオの音が色を添えるように鳴り響く。


 ――ピッ、ピッ、ピッ、ポーン。

『三時になりました。ユーメルツのオールアフタヌーンラジオ。パーソナリティのシャルロットです。今日も暑いですけど皆さんいかがお過ごしでしょうか?』


 あれ、確かこの人は――この間ウチの取材に来ていた新人アナウンサーのシャルさんじゃないか。テレビだけじゃなく色んな仕事やってるんだな。


『では早速お便りを紹介します。ラジオネーム、匿名希望のユナ・アイリークさんからのお便りでーす』


 おい! 匿名希望なのに名前言っちゃってるぞ!

 取材の時から薄々感じてたが、シャルさんって結構アバウトな人だな。


『シャルさんこんにちは。ハイこんにちは! あたし、実は今気になってる男性がいます。スープに毒を盛ったりバズーカ砲打ち込んだりと猛烈アピールしていますが、中々振り向いてもらえません。このもやもやした気持ちはどうすればいいのでしょうか? ――うーん、なるほど。甘酸っぱい青春の一コマといった悩みですねー。やっぱり当たって砕けろの精神ですよ。真っ直ぐに想いを伝えてみて下さい。私なら100%振られると分かっていても、残りの1%に全てを賭けますよ!』


 いや、1%も残ってないじゃん! 相談の返事が適当すぎないか?


『匿名希望さん、少しは参考になったでしょうか? ではココで一曲聴いて下さい、亜魔エビ48でイカリングゲット』


 ナーナーナーナナナ ナーナーナー♪

 イカリングゲットだぜーイェイ――


 ユーメルツで今流行っているらしい曲が流れ出した。

 平静な俺と異なり、ノリノリなガトウ。どうやら振り付けを覚えてるらしく、不思議な踊りを披露する。


「いやーやっぱりいい曲ですね」

「俺のMPを消費しそうな踊りをやめろ」


 ガトウは関節の可動域がどうかなっているのか分からない程カクカクとした動きを見せる。

 こいつの事は放っとくとして、いつ来るか分からない客を待っていても仕方がない。俺は水まわりの掃除をする事にした。

 備え付けの布巾を水に濡らし、目に付く汚れを拭いていく。


「そういえば、もう仕事始めて一週間か。早いな」


「僕はもう結構経ちましたね。まだやったことがない仕事はホールくらいです」


「ガトウにホール係やらせたら、女性客をナンパしたり気に入らない客の頭に貝汁ぶちまけそうで危険だ」


「いやいやいや危険じゃないですYO!」


 ガトウはフレミングの法則を両手で表現するが如く、親指、人差し指、中指を突き立てるとラップ口調でノリノリになる。

「僕がホール! 仕事は放る! だからA・N・ZE・N!」


「仕事はしろよ!」


 そんな折、ピンポーンと来客を告げる合図とともに一人の客が入ってきた。

 大きな黒のサングラスにシックなデザインの服装な女性。


「いらっしゃいませー……あ」

 ――この人は。

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