表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
訣別の痕  作者: 紙野七
13/13

epilogue

 あれから、僕は当て所ない旅を続けている。

 今まで語ってきたのは、もう遥か遠い昔の話だ。

 二人の友人を失い、行き場所さえも失った僕は、生きることも、死ぬこともできず、ただ彷徨い続けるしかなかった。

 自分の罪を決して忘れぬため、そして今もどこかで戦っている彼らのことを忘れぬため、僕はこうして一編の物語を書き上げた。しかしこれを語ることは、贖罪ではない。ただの自己満足で身勝手なままごとだ。

 時折、旅の途中で幸せについて考える。どうしてこの世界は万物が幸せに生きることを許さないのだろう。セルマや、レヴィや、ニルスのように、救いのない道へと進む者を容認するのだろう。

 世界はあまりに理不尽だ。だから人間は身勝手にならざるを得ないのかもしれない。いや、これもまた身勝手な考えでしかない。

 未だに僕はあのときの答えを見つけられていない。僕は何をするのか。何をしたいのか。何をすべきなのか。すぐ目の前にあるはずの答えを、まだ見つけられずにいる。もしそれが見つかったら、もう一度ニルスに会いに行こう。そんな無意味な妄想を重ねる自分に思わず笑みがこぼれた。

 さあ、次の町へ行こう。この旅路はどこまでも続いている。

胸の傷痕に手を当てる。真ん中にぽっかりと空いた穴。これが僕の生きる唯一の理由だ。こんなことを思うのもまた、独りよがりな現実逃避なのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ