6.予感
「………君、だれ?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、私より少し背の低い男の子が、まっすぐな瞳で私を見据えていた。
「私は…私は、メイリア。あなたの名前は?」
「……セシル」
「良い名前ね。セシルはどうしてここに?」
「ぼくの家、あっちなんだ。メイリアこそ、どうしてこんな所にいるの?」
あっち、と言って指差した方向には、小高い丘がある。まさか人が住んでいるとは。
「私は下の街…ほら、ここから見えるでしょう?あそこに住んでいるの。散歩をしていたら、森の入り口にある小道を見つけて、その小道からここに着いたの」
「…そっか。ぼく、街に行ったことないんだ。街って楽しい?」
「えぇ、すごく楽しいわ!賑やかで、キラキラしてて、楽しい音楽も聴こえて、良い匂いもするのよ!セシルが街に来るなら、私が案内するわ!」
「…ほんと?」
「私、嘘はつきません!」
「…ありがとう、メイリア。今日は、ぼくがここを案内してあげる!」
「えっ!ちょ…」
私の手を握ったセシルが走り出す。
足がもつれて転びそうになったけど、どうにか耐えた。嬉しそうに走るセシルの横顔に、なんだか私も嬉しくなった
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「メイリーって、なんだかおとなっぽいよね」
「…そうかしら?」
「その喋りかたも!きぞく、って感じ」
「変、か…な?」
「変じゃないよ!メイリーっぽくて、ぼくは好きだなぁ」
「ふふ、ありがとう」
近頃は、毎日セシルと遊んでいる。
こうして布を広げピクニックをしたり、草原にいる虫を捕って来て見せ合いっこをしたり。
セシルといると、すごく楽しい。
(弟、ってこんな感じなのかしら)
リベラも、メイリアも1人っ子だ。6歳だと言う一つ下のセシルは、可愛い弟の様に感じるのだ。
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セシルと出会って2ヶ月が経ち、その日もピクニックをしていた。
「…あ、雨降って来ちゃった」
「ほんとだ」
「見て、あの雲。この後は嵐が来るわ、早く片付けましょう」
「…もう、帰っちゃうの?」
「セシルのお家で続きをし……」
「メイリー?」
この高台にある草原からは、街が良く見える。私のお家も。
「知らない人が、家に入ってった…」
「知らない人?」
「うん、知らない人…ごめんなさい、セシル。帰る」
「えっ、メイリー!あしたも、来るよねっ」
家に入っていく見知らぬ影に、嫌な予感がした。
セシルの問い掛けには、振り返らずに「うん」と応えたが、それが聞こえていたかどうかは分からない。