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3.全て



コールドローズ家から勘当された事も、恐らく死んでしまった事も。

頭が痛い内容に変わりはないのだけれど、赤ん坊の私に為すすべは無い。

皮肉にもたっぷりある時間の中で、今までとこれからのことを色々と考えることができるのが、不幸中の幸いと言った所か。



私は、コールドローズ家1人娘のリベラ・コールドローズ。

お父様とお母様の愛を一身に受けて育ち、生まれて8年目の冬にクレイグ様と婚約を結んだ。

初めてクレイグ様を見た時、恋に落ちた。

恥ずかしがり屋だった私には、クレイグ様に話しかけることすら出来なかった。

しかし、公爵であるお父様と当時第一皇子だった現国王との話が弾み、私とクレイグ様は婚約を結ぶこととなった。


婚約を結んでからは、クレイグ様に見合うようにと、マナーから始まり詩に及ぶまで教師を付けられ、毎日追われるような日々を過ごした。

9歳の秋には、第一皇子であったクレイグ様のお父上が国王となり、クレイグ様が第一皇子となった。

その頃から以前の比にならい程忙しくなったが、他でもないクレイグ様の為になるのだと思えば全く辛くはなかった。

(今となれば、無駄なのだけれども)


11歳の春にエントウィッスル学園初等部に入学し、13歳で中等部、15歳で高等部と順調にクレイグ様との学園生活を送っていた…筈だ。

(私はどこで間違ってしまったのかしら)

クレイグ様に相応しい婚約者である為に、勉学も身なりも手を抜いたことは無い。

コールドローズ家の娘として、クレイグ様の婚約者として。


(──あぁ、そうか)


婚約を破棄され、コールドローズ家を勘当された私が1番に感じた喪失感は、これだったのだ。

自分の生きる意味が、目的が、何もかも無くなった事への虚無感。

あの瞬間、私には生きていく理由も無くなった。

(……こんなこと、気付きたくなかった…)


今まで生きてきた全てを、自分で否定しなければならなかった。

けれど、その否定した自分、リベラさえももうこの世に居ないのなら。

私は一体、何処にこの気持ちを置けば良いのだろう。


これはきっと、不安だ。不確かな自分への、不安。どうしようもない、どうするべきでもないもの。


不安に押し潰されそうで、涙が出る。抑えようとしても、自然と泣き声は上がる。

そうして当たり前のように抱き上げてくれるこの腕の中に居ることが、きっと今の私の全てなのだ。



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