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31.溜息



少し迷ったが、ハンカチはリベラから贈られた物なので、一応報告することにした。


「申し訳ございませんお嬢様、頂いたハンカチを貸してしまいました」

「いいのよ、有効に使ってくれているなら」

「ありがとうございます」


リベラに飲み物を掛けた女の子に、とは言えなかった。

言う必要も無いと、少し胸に残った痼りには気付かないふりをした。





リリー・メレスにハンカチを貸して1週間。

そろそろ、あのハンカチが無いと落ち着かなくなってきた。かと言って催促することも出来ないので、ここ最近歯痒い日々を送っている。


(どうしたものかしら…)

あれ以来リリー・メレスを見掛けていないし、あちらからの接触も無い。

はぁ…と無意識に溜息を吐いていることに気付き、急いで息を大きく吸う。

(ダメよ溜息なんて、幸せが逃げちゃうわ。それにリベラに見られたら心配をかけてしまう)

両手で頬を軽く叩き、いつもの図書館へ向かう。

今日は何を読もう、次はラザフォード様に何をお勧めしようと考えていると沈んだ気持ちも少しは明るくなる気がした。


「待って」

「はい?…ぁ」


もうすぐ図書館だと言う時に、背後から呼び止められる。

不思議に思いながら振り向くと、この前ぶつかった霜髪の男の子が居た。


(制服は貴族科のようだけど…どうしてここに居るのかしら)

今貴族科は授業中の筈だ。しかしそれよりも、彼がどうして私を呼び止めたのかが分からない。

もしかして、前ぶつかった時に怪我を負わせてしまったのだろうか。

(あの時は大丈夫だと言っていたけど…後からやはり怪我をしていた、とか)

そうならば大変だと頭の中で慌てていると、霜髪の男の子が綺麗に微笑む。


「じゃあ、また」


何故かそれだけ言うと、男の子は踵を返して去って行ってしまった。


(な、何だったの…?)


何の微笑みだったのか、何故私を呼び止めたのか、どうして特に何も言わずに去って行ったのか。そもそも、誰なのか。


何もかもの意味が分からず、図書館に入った後も本に集中することは出来なかった。



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