18.軽食
リベラは無事意識を取り戻し、今はベッドで安静にしている。と、リラに聞いた。
聞いたは良いものの、私は今だにリベラの部屋を訪れられないでいる。
(合わせる顔がないわ…)
偉そうにリベラの為だとのたまった言葉を思い返すと、申し訳なさと自分の傲慢さにうんざりしてしまう。
屋敷に仕える人達には、すれ違う度に漏れなく「大丈夫?」と声をかけられてしまう始末。昨日も酷い顔だったが、今日は殊更に酷い筈だ。
掃除をしたりベッドメイクをしたり料理長にちょっとした軽食の作り方を教わったりしたが、頭の片隅では、ずっと顔色の悪いリベラが私を責め立てていた。
「メイリアのせいで、私は倒れたのよ」なんて面と向かって言われてしまったら、立ち直れる気がしない。
「これならリベラお嬢様も喜んでくれるだろ!頑張ったな」
「…はい」
「何だ?ちょっと不恰好かも知れねぇが、味は俺が保証してやるから!そんな心配そうな顔しないでくれ、な?」
リベラが好きな、たまごのサンドウィッチ。困ったように笑う料理長のディックさんはそう言ってくれたが、出来上がったそれはどうあがいても美味しそうには見えない。
(同じように作ったのに…)
隣に並べられた料理長お手製のサンドウィッチは、こんなに綺麗で美味しそうなのに。
「そんなに心配なら俺も一緒に持って行こうか?」
「いいえ!私が持っていきます」
「そうかそうか、じゃあ俺は戻るけど…頑張れよ」
「ありがとう、ございます」
快活に笑う料理長は、一見何も考えてないように見えて実は鋭い。
ひたすら掃除に打ち込んでいた私を呼び、リベラに軽食を作って持って行こうと持ち掛けてきたのは料理長なのだ。
形の悪いサンドウィッチ持っていくのは気が引けるが、料理長に背中を押され、勇気が出た。
(今なら、持っていけるわ…!)
サンドウィッチの乗ったお皿を両手に、意気揚々と屋敷の廊下を歩きリベラの部屋へ向かう。
「ふふ、リベラお嬢様へですか?」
「あら、お料理されたのですね!」
「メイリアちゃん偉いねぇ、自分で作ったのかい?」
お屋敷の人に声をかけられる度に段々と恥ずかしさが増していき、リベラの部屋の前に着く頃にはもうすっかり勇気は消えて無くなっていた。
「メイリアさん?」
「リラさん、これっ」
遂に恥ずかしさに耐えきれなくなった私は、偶然通りがかったリラにサンドウィッチを押し付けて、逃げた。
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