15.風波
翌朝、リベラの部屋に行く所をリラに呼び止められた。
「…言い難いのだけれども…お嬢様がお付きの侍女を変えたいと、私に仰ってきました」
「……どうして、でしょうか」
これは事実上の、解雇だ。
お付きの侍女を降ろすというのは、余程何かをしでかしてしまった時だ。
お付きの侍女を降ろされたと知られれば、私はもう侍女として生きて行くことすら出来なくなるだろう。
「どうしてなのかは、私にもわかりません…。ですがお嬢様は、メイリアさんに処分を求めている訳では無いと仰っていました。ですから明日からはまた、一侍女としてお屋敷に仕えて頂きます」
「はい…ありがとう、ございます」
足元の覚束ない私に部屋で休むように言って、リラは行ってしまった。
自室で頭を落ち着かせ、先ずはどうするべきかを考える。
(リベラと話をしたい…けど、リベラの邪魔はしたくない)
今は、何事も無かったかのように侍女として勤めるのが、きっと1番良いのだ。
(一月後の満月の夜、リベラとゆっくり話をしよう。話せばきっと、分かり合えるわ)
私はリベラだったのだ。あの子のことで、分からないことは無い。
分かり合えないことは、無い───と、思っていた。
私の思いとは裏腹にリベラは私を避け続け、1週間に1度リベラの顔を見れれば良い方になってしまった。
その、週に1度見るリベラの顔も段々とやつれてきているように見える。
そうして私がお付きの侍女を降ろされてから1ヶ月後の満月の夜、私はいつものように椅子に腰掛け、静かにリベラを待っていた。
どう謝ろうか、どう話しかけようかをグルグルと頭で練習しながら、リベラが来るのを今か今かと待った。
しかしこの夜、リベラが庭へ訪れることは無かった。