14.成長
クレイグ様とリベラが正式な婚約を結んで半年が経った。
私がそうであったように、リベラも忙しい日々を過ごしている。
リベラお付きの侍女である私も忙しくなる…と思いきや、むしろ半年前よりも余裕を持てるようになった。
不思議なことに、満月の夜にリベラと2人でお庭に出て語り合う習慣はまだ続いている。
勿論リベラの多忙を考え、長くても1時間では切り上げるようにしている。
「お嬢様、休憩に致しましょう」
「…そうね、ありがとうメイリー」
口調もだいぶ大人びて、淑女として立派になろうという努力が見て取れる。
(リベラ、偉いわ。偉いわよ貴女…!)
まるで親になったような気分で、心の中でリベラに声援を送る。
「どうしたの?そんなに見つめられたら穴が開いてしまうわ」
「お嬢様、ご立派になられたなぁと思いまして」
「メイリー、本当にリラみたい。それに、私なんかよりメイリーの方がずっと立派だわ」
「そんなことありません…」
気の利いたことまで言えるようになったなんて、本当に感動ものだ。
リベラが万全な状態で励めるように努めなくては。
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私がここ、コールドローズ家で侍女となって2年目の冬。私の記憶していた通り、クレイグ様のお父上が国王となり、クレイグ様は第一皇子となった。
婚約を結んだ後よりも根を詰めて頑張るリベラは、まるで何かに取り憑かれたかのように、休憩も取らずに忙しなく動いている。
正直いつ倒れてもおかしく無い状況だ。
(これは、無理矢理にでも休ませないと…身体を壊してしまう)
「ねぇ、リベラ。少しは休憩を挟まない?」
「休憩なんて無くたって平気よ。私は、こうやって2人で話してるだけで癒されてるの」
満月の夜、思い切ってリベラに休憩を取ることを提案してみたが、あえなく玉砕してしまった。
私だからこそ、リベラの気持ちがわかる。
クレイグ様が第一皇子となってからは、周囲からの圧力や期待の目も格段と増えた。
焦りや不安、その全てを振り払うように私もひたすらに頑張っていた。
「でも、リベラの為なのよ。身体を壊してしまっては出来ることも出来なくなってしまうわ」
「…大丈夫よ」
「幾ら何でも、頑張り過ぎよ。貴女の為にも、少しでも休んだ方が良い」
「大丈夫、だから…」
「…けど、」
「私のため私のためって、メイリー私のこと全然わかってない!」
「えっ、ま、待ってリベラ…!」
ガタン、と椅子から立ち上がったリベラの表情は、逆光になっていて見えない。
そのままリベラは、走って部屋へ戻っていってしまった。
訳が分からなくなった私は、先程までリベラが座っていた椅子が月に照らされているのを、ただぼんやりと眺めることしか出来なかった。
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頂いたレビューを見た時、泣きそうになるくらい嬉しかったです。正直泣きました。本当にありがとうございます
もう少し先になるとは思いますが、完結までメイリアとリベラの物語にお付き合いいただけると幸いです。