表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/37

9.何か



頭が真っ白になった。

目の前にいる女の子は、間違いなくリベラだ。かつての、私だ。


「…メイリアさん?」

「メイリアっていうのね!どうしてここに居るの?」

「メイリアさんは本日から侍女として旦那様と奥様、そしてお嬢様にお仕えするのですよ」

「リラといっしょってこと?」

「そうなりますね」

「ねぇねぇ、メイリアっていくつなの?」

「な、なさいです」

「私も!私も7さいなの!」


一緒だね!とはしゃぐリベラを前にどうしたら良いか分からなくなり、無意識にリラの方を見つめてしまう。


「お嬢様、メイリアさんはお着替えしなくてはならないのですよ。自己紹介はまた後にしてくださいな」

「え〜リラのケチ」

「本日のティータイムのお菓子は半分ですね」

「何で何で!もーリラきらい!」


はいはい、とリラに背中を押され部屋の中に入る。扉の外からはまだリベラの声が聞こえてくる。


「今のお方がリベラ様でございます。滅多に外へ出ることもありませんから、メイリアさんが同い年で嬉しかったのでしょう…服はクローゼットの中に用意してありますので、お着替えが終わり次第先程の歩廊へいらして下さい」

「はい…ありがとうございます」

「いえ。では」


リラの後ろ姿を見送り、簡素なベッドに腰掛ける。

(どういうことなの…?)


私はリベラだ。

リベラ・コールドローズとしての記憶は、確かに16歳までハッキリと覚えている。

でもさっきの女の子はリベラで、私ではない。

(意味が、わからない)

まるで自分が2人居るようじゃないか。でも、今の私はメイリアで、あの子はリベラで。

それなら私が偽物ということになるのだろうか。リベラとしての私は、偽物?


そもそも私のリベラとしての記憶が、嘘なのだろうか。

(頭が割れそうだわ…)


覚束ない足取りでクローゼットへ向かい、侍女服を取り出す。


(…これが私の、メイリアの服)


あの女の子の、リベラの服とは似ても似つかない程質素だ。

袖に手を通し、襟を整える。


お腹の奥から、悔しさなのか怒りなのか、悲しみなのか絶望なのか、形容し難い何かが這い上がってくる。


それらを喉の奥に無理矢理押し込み、私はリラの元へ向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ