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プロローグ
由緒ある家柄、将来国王となる婚約者、美しい容姿。
何一つ、手に入らないものは無い──
「リベラ・コールドローズを、学園から追放する」
──筈だった。
「どうして、私が?クレイグ様、私何か」
「惚けないでくれ、リベラ。僕はもう全て知っているんだ」
「惚けるだなんて、私は、ただ、」
息が詰まる。こんなの、まるで悪夢だ
私は今、きっと酷い夢を見ているの
あぁ、早く覚めて
「行こう。セラフィ」
「で、でもリベラ様は」
「放っておけ、もう会うこともない」
本当に、酷い夢
婚約者の冷たい瞳も、去り際に薄く微笑んだ女も
「待って!…お願い、待って…覚めてよ、夢なんでしょう、早くこの下らない夢を終わらせて!」
「騒ぐな、コールドローズ!セラフィ・シートへの脅迫と暴行により追放する。去れ」
「ジル、どうして…!私は何もしていないわ!やめてっ、触らないで!」
「…連れて行け」
「嘘よ、ジル信じて!何もやっていないの、ジルッ」
バタンと大きな音を立てて閉められた扉が、これが夢では無いということを物語っていた