漫画のような世界になった!
ゲームのような世界があるなら、漫画のような世界があってもいいと思う
それに気付いたのは、五年目の春だった
どこかの国の偉い学者さんが論文を出したのが切欠だったらしいが
それは余りにも馬鹿げた話で、当初は誰も本気にしなかったという
だが検証すればするほど、その論文の正当性は確定されていった
論文から十年後、始まってから十五年後
政府は遂に国民へ真実を伝える事を決意する
───地球は十五年前から、サザエさん時空に入っていた!
☆☆☆
「喪武君おはよー、ねぇ知ってる?」
「おはよう博士、何を?」
僕の名前は喪武太郎丸 永遠の十七歳(+二十五歳)だ、間違ってもモブだろう。じゃない……多分
そして僕に話し掛けて来たのはマッドサイエンティストの本名不明こと、博士
あだ名通りの白衣を着た童顔ポニーテールの背が低い少女だ……だが巨乳!
「この地区が、来週から新しいフィクションになるらしいよ」
「やっとラブコメが終わるんだ、次は何になる予報なの?」
十年前の政府発表によって、僕達はこの世界の不条理を認識出来るようになった
もっとも、認識出来るだけで逆らえないのが現状だけど……
地区や大きければ国ごとに様々なジャンルの世界観へと変わる事に、人類は未だに対抗策を持ってない
「モンスターが出るとか言ってたから、良くてロープレ悪くてクトゥルフ」
「ロープレだったらいいなー、モンスター倒したら小遣い稼ぎが出来るから」
「クトゥルフだったら……私はさっさと殺される方がいいわ……」
不定期で変化するジャンルは、その度に世界をリセットする
死者は甦り、不都合な記憶は消え去る
そのせいで僕達は永遠のループ……サザエさん時空から抜け出せないでいた
「博士はいいよね、どんな世界でも活躍出来るジョブだから……僕が活躍できる世界はないだろーなー」
「活躍出来るも何も、活躍しようとしないじゃない」
僕達はそれぞれ役割を得ていた、そしてそれに応じた能力も
例えば博士のマッドサイエンティストのジョブなら大抵の物を作り出せる能力、今期のラブコメ空間で主役張ってる男なら、諦めない限り問題を解決する能力(女性限定)
不思議な能力はその世界観毎に多少は変化するけど、根本的には変わらない
そして世界に選ばれたヒーローとヒロインと呼ばれる者達を中心に、必ず有力なジョブが集まりイベントを起こすんだ
「助手なんてジョブで何が出来るって言うんだよ、求められた情報や素材を集める能力しかないんだから」
「今期はヒロインの好感度をヒーローに教える役割ご苦労様でした」
「言わないでっ!上がってく好感度に嫉妬で狂いそうになったんだから!」
本当は出鱈目教えてやろうかと思ってたんだけど……ヒーローが誰とも結ばれなかったら、僕との友情エンドになるぞって脅されて、泣く泣く頑張ったんだ……
「僕はやっぱり博士と一緒(に裏方やるの)がいいな……」
「……え?」
何故か顔を赤くして僕を見詰める博士
…………あっ、僕さっき凄く誤解される事を言ってる!
「待って違うから!そういう意味で言ったんじゃないから!」
「……」
だからジッと見詰めないで!こっちまで顔が熱くなるから!
「ぷっ……あはははははははは、慌てて可愛いー」
笑われても言い返せない……何故なら今は顔が熱くて、恥ずかしさで博士を見れない……
「ねぇ、そういう意味ってどういう意味だったの?」
「……ううー」
分かってて聞いてるよね?止めてよ、横向いて変な声しか出せなくなる!
「ううーじゃ分からないなー」
満面の笑みで問い詰める博士が、僕の腕を掴み抱き締める
胸を当てないで!
彼女の悪い癖だ、僕を弄る時に露骨にスキンシップする!そしたら僕が何も言えなくなると知ってるから……
───ちきしょー!僕に少しでも勇気があったら、絶対にやり返すのに!
ピコンッ♪
今……フラグが立った
一瞬で血の気が引いて、冷や汗が流れる
「博士どうしよう……僕……次のヒーローに選ばれたみたい……」
ギギギギギっと音が鳴りそうな動作で博士の方を向くと、彼女も固まっていた
「……もしかして……博士……」
「うん、私もヒロインに選ばれたみたい……」
力なく笑う彼女が、僕の腕をより一層強く抱き締めるが、さっきまでのような邪な気持ちは湧かない
不安なんだ、ヒーローとヒロインは余程の事がない限り、途中で降りれない
それがどんなに恐ろしジャンルであっても、簡単には死ねないようになっている
世界が死なせないようにしてる
「僕が……僕が守るから……」
「あはは、震えながら言っても説得力ないよ…………でも、ありがとう」
彼女を持ち上げ抱き締める、少しでも震えが止まるようにと力強く………………
………………………………いつの間にか僕と博士は部室に居た
『怪奇現象研究倶楽部』
僕と博士が立ち上げた倶楽部だ、生徒からの依頼で怪奇現象を調査し、場合によっては退治する活動を行っている
「モンスターって幽霊じゃないかっ!」
「こう来るとは予想してなかったわね」
世界はリセットされたみたいだ
新しいジャンルに変化して、人々の記憶も整合性を保つ為に改変されている
「それもデフォルメされた幽霊を、博士のトンデモ科学で追い払うってギャグなのっ!」
「やったことになってる過去の怪奇現象調査は、どれもこれも子供のイタズラよね」
腕の中の博士も呆れている
僕の一大決心は、どうやら弄ばれたみたいだ……この世界に
「良かったじゃない、お望み通り活躍出来そうよ」
「僕が活躍したかったのは、こんな子供向け漫画みたいな世界じゃない!」
世界の改変には、高位次元の観察者が関与してるという俗説があるけど
───多分それは正解だ
絶対に僕と博士とのやり取りを見てこの世界にしたに決まっている!
何故ならこの世界は、幽霊退治をしながらヒーローとヒロインが愛を育むラブコメだからだ!
僕の中のヒーローが囁いている、怪奇とかほっといてヒロインとイチャイチャしろと……
「……でさ、そろそろ降ろしてくれないかな」
そう言えばずっと抱き締めたままだった……
でも、僕の中のヒーローが囁くんだ
『聞こえなかった振りして、もう少しこのまま抱き締めていたい』って
「聞こえてるよね?顔が赤くなってるから」
それはお互い様だと思う
僕は考える、どうすればハッピーエンドを向かえられるかを
誰でも主人公になれる可能性がある世界ってコンセプトで書いてみました




