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いっぱい食べると粉が出るのである。

 捕まった木の枝がバッサバッサと激しく揺れる。


 よく分からないが、水の中に引き込まれたら負けな気がする。


 まぁ、よい。

 僕を食べようというなら僕の力も見せてやろう。


 くらえ!

 根っこさんアタック‼︎


 カリカリ カリカリ


 残った根っこさんを外からぶつけるシンプルアタック。


 ……。


 金魚の鱗が硬くて中々うまく食べられない様なのである。


 困った。


 すでに半分位が金魚の触手に捕まり、呑み込まれている。


 ここからでも逃げるのは多分、簡単である。


 水草の触手さんが言っていた、嫌な気持ちの実を出すと嫌がるというのをやれば、多分、離れてくれると思う。


 ただ、その時は僕も三割程の触手を食べられたままになってしまうだろうし、次に来た時には水草の触手さんは居なくなっていると思う。


 それは駄目であるな。


 折角会えたお話し出来る触手さんである。お友達になれそうであるのに、触手付き合いもいいかな?と思った所なのである。


 彼の為にも引くわけにはいかないのであるな。

 どうしたものか。


 考えている間もバッサバッサと木の枝がしなり、身体が、もとい、触手が飲み込まれていく。


 うーむ。


 果たして、困った。


 ……。


 しかしこれは……何かに似た感じであるな。


 そうだ、思い出した。


 これは釣りに似ているのだな。


 ……。


 釣れるかな?


 伸ばせる分の触手を全部伸ばし、木に絡ませてしがみ付く。


 そこから力任せに引っ張ってみるが、金魚が激しく暴れてうまく引き上げられない。


 重いのもあるが力も強い。


 暴れない様に触手で縛りあげてやりたいが、残った触手ではそれも難しい。


 の⁉︎のぉぉぉぉ‼︎


 急に金魚が激しく暴れはじめた。


 飲み込もうと、引き摺り込もうと暴れていた感じから、吐き出そうと、食い千切ろうとしている感じに変わり、激しさが増した。


 何が⁉︎


 あ、


 アレかな?


 もしかして、飲み込まれた根っこさんも中から金魚を食べてる?


 僕の根っこさんは貪欲であるなぁ。


 僕自身も若干引くのである。


 ただ、このままでいると本当に食い千切られそうなのだが、そうはいかん。


 外から食べようとしていた根っこさんを戻し、金魚の口に押し込む。


 さぁ行け!


 根っこさん、反撃である‼︎


 少しずつ、少しずつ根っこを刺し込み、食い千切られないように手の触手で抑え、金魚の体力を少しづつ奪っていく。


ふっくっく、逃がさないのであるよ。


 少しずつ、少しずつ、岸へと引っ張り、陸地へと完全に引っ張りあげられた時には大分時間が経っていた。


 つ、疲れたのである。


 揚げられた金魚は水中で見たよりも遥かに大きい気がした。


 そして、ヒレや鱗も触手で出来ていた。


 こうして見ると激しく気持ち悪い魚である。


 放置もして置けないのであるが……根っこさんコレ全部食べられるであるか?


……。


食べれそうであるな。


 この大きさの魚(?)を食べたきってしまったなら僕はどの位大きくなってしまうのだろうか?


 とも思ったのであるが、身体から少し粉が吹いただけであった。


 あの大きさの物がどこにいってしまったのか、甚だ疑問である。


 まぁ、これで水草の触手さんも、無事外を眺められる程に大きくなれるだろう。


 めでたし、めでたし。


 である。


 水の中に触手を一本伸ばして差し込んだ。


 金魚はもういなくなったのである。

 安心して大きくなって欲しい。


 ポンッ


 実を一つ、水の底へと落とした。


 すると、水草が水面に浮かんで来た。


 根っこさんで食べた。


(ありがとう)


 ふふ。


 今日は疲れたけど、よく眠れそうなのである。




 何日かした後、流れない川に来た時、水面に見た事のない花が一つ、咲いていた。


 ピンク色の大きな、綺麗な花であった。


 きっとあの水草の触手さんが水面に辿り着いたのであろう。


 その日一日、僕はその花をのんびりと眺めていた。


 後、大きな金魚を食べた場所、僕から吹き出した粉を落とした所に木の芽がいっぱい生えていた。


 なんとはなし、僕から出た粉が原因であると思うのだが・・・。


 触手にはならないのであるな。


 芽を見るにつるつたになる感じでもない。


 大きくなったらどうなるのか、それもそれで楽しみなのである。

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