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女の子と女の子じゃない女の子なのである。

 日が暮れた。


 広い駐車場は何本もの灯りに照らされて、僕が隠れている植木の影をより一層に濃くしている。


 ほんのり冷たくなった夜の風が心地よいのであるなぁ。


 このくらい暗くなるとちょろちょろと歩き回るのに丁度いいのであるが、病院はまだあちこち明るいのである。


 まぁ僕は女の子の部屋さえバレずに行けたらいいのであるから、さして問題もないのであるが。


 さて、とメモを取り出して眺める。第一病棟の三階であるな?


 第一、第一……。


 第一病棟って……どれであるかな?


 そういえば僕、ずっと紙袋の中に居たからどこが何なのか知らないである。


 病院の中に見取り図があると思うのであるが、そもそも僕は入れないのであるしなぁ。


 まぁ三階のどこかに居るのは分かっているのであるから、しらみ潰しに探せば見つかるであろう。


 植木の中から這い出て、明かりを避けて暗がりを走り、壁に張り付いた。


 壁に触手を這わせて掴み、壁を登る。


 猫では味わえない感覚である。

 トカゲやクモが壁を歩けるのは知っているのであるが、触手はどうやって壁を登れるのであるか。


 割と普通にやってはいるが、考えてみると謎である。


 まぁ、壁を這って伸びる植物もいるのであるから、きっとそういう事なんだろう。


 壁を登り、三階の窓から部屋を覗き、また隣の窓へ。


 女の子の部屋は個室であったから、個室を探して歩けは、そのうち見つかる筈であるが……。


 いや、待てよ。


 明かりの付いている部屋ばかりを探していたのであるが、個室である女の子が寝ているのであれば、部屋の明かりは点いていない?


 ……。


 居たのである。

 明かりの点いてる部屋に。


 女の子の部屋の中には白い服に変わった形の帽子を被った女の毛なしが一人。

 看護婦さん、という奴であるな?いや、看護師さんであったか?まぁどっちでも僕には関係ないのであるな。


 毛なしの女が、何か喋りながら動いているのであるが、何を言っているのかは分からないのである。


 女の子は……眠っているのであるな。

 姿がブレたままである。


 このまま少し待っているであるかな。


 ……。


 僕は、何をしているのであろうか?


 僕に何が出来るというのであろうか?


 また、ニボシが食べたいのであるな。


 また……笑ってる女の子が見たいのである……な。


 しかしぼんやりと壁に張り付いて、お外を眺めるというのは不思議な感じであるなぁ。


 色々と、何か考えてしまうのである。


 ……。


 お、明かりが消えた。


 部屋を覗くと、ゆっくりと戸が閉まっていくのが見えた。


 ……。


 ふう。


 さて、行くであるか。


 細く絞った触手を重なり合った窓の隙間にねじ込み、内鍵に触手を伸ばす。


 ん?

 あれ?

 開かない……。


 ん……っと、コレがロックであるか?

 コレを上げて?下げて……お、開いた。


 ゆっくりと窓を開けた。カラカラと小さな音を立てて開いた窓から風が部屋に入り込み、カーテンが大きく揺れた。


 窓の淵に立ち見た女の子は、前より少し小さく見えた。


 ふっくらした顔が少し、痩けて見える。


 猫皮を出して、被ろうかと思ったのであるが、何となく、見ていないにしても見える所で着替えたくなかった。


 淵から降りてベッドの下に潜り込んで猫皮を被った。


 猫骨格よし、猫筋よし、尻尾よし、耳よし、お髭よし。

 全部よし。


 おっしゃ!


 ベッドの下から這い出て、ベッドの上に飛び乗った。


 点滅するみたいにブレたままであるが……。


 心なしか、感覚が長くなってる?


 猫ならここで……鳴く所であるかな?


 鳴き声、鳴き声……っと、口を開けて……


「ギョァ」


 ……。


 もうちょっと泣き真似を練習しておくべきだったのであるな。


 心無しか点滅が早くなってる気が?


 あと猫といえば……。


 女の子の上に乗って、丸まった。


 何か……こう、不思議な気分である。


 なんであろうか?

 そわそわしてくるのである。


 ん?

 前足がにぎにぎしてる。


 立ち上がると前足がふにふにと動き出した。


 女の子のお腹の所を踏み踏みしてる。


 おぉ、これは猫っぽい。というか、猫そのものであるな。


 ……。


 何が⁉︎


「ニャーー」


 っ⁉︎

 ちょっと待って僕、鳴いてない!鳴いてないのであるよ‼︎


「猫さん?」


 ……え⁉︎


 女の子が目を開けてる!

 髪が黒い!

 何が起こったのであるか⁉︎


「猫さん……、会いたかった」


 女の子が手を伸ばして僕を抱き上げた。

 やっ!ちょっと待って、僕、今、目が触手なのであるよぅ‼︎


「ニャー」


 何であるかこれは⁉︎身体が動いてるのに触手からだが動かないのである⁉︎


ゴロゴロ ゴロゴロ


……猫?猫なのであるか?


「聞いて、猫さん。私、凄い怖い夢を見てたの」


 ……夢?


「みんな知ってる人なのに、みんなちょっとずつ姿が違う夢。お母さんも、お父さんも、お母さんとお父さんなのに、変わってないのに変わってるの」


 ……。


「凄い怖かった」


 僕をギュッ抱きしめて、毛皮に顔を埋めてる女の子。


「猫さんなんてね。ニョロニョロした変なツルになってたんだよ」


 変な蔓であるか。


 同感である。


「でもね。あそこに居たのは私だけど、私じゃないの。私だけど私じゃない、あのお母さんとお父さんの私が、あなたはだあれ?って聞いてくるの。私を返してって言ってくるの」


 それは……怖いのであるな。


「その夢からずっとさめないの。眠っても起きても、すっと夢の中なの……。私、どうしちゃったんだろ」


 もしかして、車に轢かれた事を……覚えてない?

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