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笑われてしまったのである。

「んー……」


 わかめさんが何やら唸っている。

 僕は紙袋の中であるから、何をどうしているのか分からないのであるなぁ。


「小児病棟は第一病棟の三階か。小学生だし、多分ここにいると思うんだけど……ここ以外にいるとしたら、あとは個室くらいかな?」


 ふむふむ。


「それでも一つ一つの部屋を覗き込んで周る訳にはいかないからね。えびほどは怪しくなくても、女だったらオールオッケーって訳でもないんだし」


 ふむ。


「あと女の子と、そのお母さんの顔を教えてよ」


 了解である。


 女の子はこんな感じの子で、こっちでの顔はこんな感じで、お母さんはこんな顔のこんな感じの服であるよ。


 ポンッ


「うん。会話するにはちょっと面倒だけど、イメージを伝えるにはこの方式は楽だよねー。お母さんってまだ病院から帰ってないんだよね?」


 タクシーだけは見ていたのであるから、タクシー以外で帰らない限り、ここにいるのである。


 ポンッ


「お母さんを見つけられたらいいんだけど、まぁ取り敢えず病棟の待合室に行ってみますかね」


 ありがとうなのである。


 ポンッ


「ん?ん、あぁ、まぁ僕もその女の子が気になるしね。後はしばらくお喋りは出来ないからね。大人しく待っててね」


 了解なのである。


 ポンッ


「んっ」


 ふむぅ。

 袋の中で揺られているだけというのは、もどかしいのであるなぁ。


 チーン


 ぬ、この音は何であるか?


「上へ参ります」


 誰⁉︎

 ぬぉ⁉︎何かふわっとくるのであるが⁉︎


 チーン


 ふぁっ⁉︎


 ……。


 着いた?


 着いたの⁉︎


 着いた……のであるな。

 小児病棟というのはどのくらい広いのか分からないのであるが、思ったよりも静かな感じなのであるなぁ。

 子供が沢山いる場所であるのなら騒がしいのかと思ったのである。


 あぁ、お外を覗きたい……。


 ちょっとだけならいいかな?


 ちょっとだけなら……


「居たよ」


 にゃっ⁉︎


 大人しくしているのであるよ?決してお外を見たいとか……。


 ん?

 居たの!


「しっ!こらっ動かないで」


 むー。


「丁度帰る所みたいだね。少し待ってから行こうか」


 そう言ってわかめさんはカラカラと戸を開けて何処かに入った。


 椅子に座り、何かを取り出してカリカリとしはじめた。

 何の音であるかな?


 ……。


 ねぇーまだー?


「はい」


 ん?

 ストンッと紙が入って来た。これは?


「エレベーターから、その女の子の部屋までを書いた地図だよ。まぁ、触手君はエレベーターを使っては来れないと思うけど」


 おぉ、ありがたいのである。


「ん、お母さん帰ったね。それじゃ見に行ってみますかね」


 了解である。


 カタリと音がして、わかめさんが歩きだした。


 カラカラと戸を開ける音が聞こえる。


 通路に出たのであるな。


 それからゆっくりと歩き……止まった。


 ちょっとドキドキするのであるな。


 ……。


 ……?


 わかめさん?


「触手君、見える?」


 ?


 そっと袋から触手かおを出して周りを見る。綺麗な所であるな。


 すぐ近くに戸が少し開いているのが見えた。その奥には、女の子が……アレはなんであるか?


 女の子の姿が……ブレてる?

 黒い髪の女の子と、緑の髪の女の子が、重なり合ってるみたいな……なんであるか?これは⁇


「じゃ、帰るよ」


 え?

 ちょっと待ってわかめさん。


 ポンッ


 袋から身を乗り出したまま実を出した。けど、実を差し出す前に袋の中に押し込められた。


 わかめさんが足早に歩いているだけ、分かる。


 わかめさんは何を焦っているのであるかな?

 誰かに見つかったのであろうか。


 まぁそれは今はいいとして……あの女の子の状態は一体?


 しばらくして袋に入ってくる空気が変わった。

 お外に出たのであるな。


「触手君、女の子は見たかい?」


 見たであるよ。アレは一体なんであろうか?


 ポンッ


「僕もあんなのは初めて見るからね。正確には分からないんだけど、多分あっちの女の子とこっちの女の子がぶつかり合って反発し合ってる状態なんだろうね」


 反発、であるか。


 ポンッ


「僕らも一つの身体に二人いるからね、なんとなく分かるんだけど……」


 アレは病院で治るものなのであるか?


 ポンッ


「いや、無理だと思う。というか、今の女の子の状態すら、見えてないと思う」


 見えて……ない?

 あんなにハッキリとおかしいのにであるか?


 ポンッ


「そこだよ、触手君。君は御神木さんの立て札は知ってるかい?」


 御神木の兄さん?もちろん知ってるのであるよ。

 その立て札の前で御神木の兄さんと初めて会ったのである。


 ポンッ


「その立て札、見える人が限られてるのは知ってるかい?」


 あぁ確か御神木の兄さんがそんな事をいっていたのであるな。


 ポンッ


「それと同じだね。まぁ、ほぼだけど。転生した人の多くはアレが見えるんだけど、元々からこっちに生きてる人達にはあの立て札は見えないんだ」


 ということは?

 それはつまり


「病院で調べられる限りじゃ、あの女の子は原因不明の病にしか、見えないと思う」


 ……。

 女の子は、このままでは死んでしまうのであるかな。


 ポンッ


「分からない」


 で、あるか……。


「申し訳ないけど、僕に出来るのはここまでだ。後は……、もしかしたら、こっちの世界に一緒に来た猫である君には何か出来る……かもしれない」


 分かったのである。色々と助かったのであるよ。

 ありがとう、なのである。


 ポンッ


「いや、あんまり力に力になれなくてゴメンね」


 いやいや、僕一人であったなら、女の子を見つけられたらのかも分からないのであるから。


 ポンッ


「ん、じゃ僕は行くね?」


 あっ、ちょっと待ってほしいのである!

 もう一つだけ、大事な事を聞き忘れていたのであるよ!


 ポンッ


「ん?どうしたんだい?僕で答えられる事であれば……」


 帰り道はどっちであるか⁉︎タクシーの底にへばり付いて来たので、この場所がどこなのか分からないのであるよ。


 ポンッ


 難しい顔をして実を食べたわかめさんに、笑われてしまった。


 笑い事ではないのである。

 死活問題であるのですよ?

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