僕を見つけたかったら専門家でも連れて来い、である。
よもやこんな事態になろうとは、思いもよらなかった。
申し訳ない事をしたのである。
僕が警戒されて探されたとしても、特に問題にならないであろう事は分かっていたのである。
そもそも猫である前に植物触手である僕が木に潜んだなら、その時点でそう簡単には見つけられないのである。たとえ見つけたとしても、立体的な機動性に富み、猫より俊敏で知能も高い僕を捉えるのは至難なのである。
なので特に気にしていなかったのであるが……。
まさか、町の猫という猫をみんな捕獲してしまうとは思いもよらなかったのであるなぁ。
もう気軽に猫に紛れて猫の練習も出来なくなってしまったのである。
最近は触手でニョロニョロしているより、猫の姿でいる方が落ち着けたのであるのに……。
やれやれ。
それにしても僕を探している毛なし共は間抜けなのである。
何を探しているつもりであるのか、下を向いてばかりで上を見る気がまるでない。
しかも……。
「本当に寄生種がいるんですかね?」
「複数の目撃証言があるからな。植物触手で特徴的な黒い二本の触手を持って、猫に寄生してるって話なんだが……」
「それ、どこか間違ってるんじゃないんですかね?」
「猫の姿をしてたって事は寄生し終わってるって事だ。寄生した触手はもうその姿から変えられないし、猫くらいの大きさの寄生種なら大して知能も高くない。それに寄生した生き物の習性に沿った動きをする筈だ」
「っていう専門家の先生の話でしたっけ?」
「お前……、何が言いたいんだ?」
「もう猫なんていないんですよ?なのに見つかってないってんなら、もうこの辺りにいないか、寄生種じゃそもそもないって事になりません?」
「じゃ、お前がそれを上に言えよ」
「いやですよ。専門家の先生によくわかんない単語を聞かされるだけなんですから」
「じゃ、黙って仕事しろよ」
「まぁ、そうなんですけどねぇ。被害報告も別に上がってないのが気になりません?」
「上がったらダメだろうが」
「でも、寄生種が出たら多かれ少なかれ出るものなんでしょう?」
「まぁ……なぁ」
お喋りをしてるのか、お仕事をしてるのか。
その辺であまり見かけない毛なしに付いて回ると、だいたいこの手の話が聞けるのである。
人海戦術はいいと思うのであるが、情報が筒抜けなのはいただけないと思うのである。
ま、僕が普通の寄生種と思われている内は大丈夫そうである。
別に何かを襲っている訳でもないのであるから、その内に治るのであるかな。
さて、女の子は何をしているのであるかなー?
色々と情報を集めながら女の子の様子も見に行っていたのであるが、ここ最近、一度も見かけられなかったのである。
もしかして、お家にいないのであろうか?
でも何故……?
おや、女の子のお家の前に車が止まったのであるな。
アレはタクシーであるな。
見ていると女の子のお母さんがちょっとした荷物を持ってお家から出てきた。
……。
気になるのであるな。
そういえば、前にも女の子のお母さんが荷物を持ってタクシーで帰ってきてたのである。
さっきの僕を探してた毛なしは、もう見えなくなっている。
他に僕を探してる毛なしの姿はないのであるな。
よし。
女の子のお母さんが、 荷物をトランクに入れている隙に木から降り、タクシーの下に潜り込んだ。
……えっと、どこにしがみ付いたらいいのであるかな?
掴みやすそうなところが熱いのである。
これかな?後ろタイヤと繋がっている、何なら膨らんでいる所が収まりのいい感じである。
そうしている間にドアがしまり、ほどなくブロロロロと走り出した。
おおぅ。
膨らみに繋がっている鉄の棒が凄い勢いで回り出したのである⁉︎
これが回ると車が走るのであるか⁉︎地面も凄い勢いで流れていっているのである!
……面白いのであるが、どこに向かって走っているのか分からないのであるなぁ。
僕の縄張りの外に絶対にいくのであろうし、どうやって帰ろうか。
というか、帰れるであろうか?
走るタクシーの下から外を覗いて見ても……、もうどこか分からないのであるな。
大人しく諦めるか。着いてからまた考えるとしよう。
……。
しばらく走ったり止まったりを繰り返した後、ゆっくりと走るようになり、程なく止まった。
着いたのであるかな?
ガチャッと音がした。
ドアが開いたのであるな。
タクシーの隙間から這い出て……緑はどこだ!
あった!
見えた植え込みに素早く飛び込む。
おぅ、隠れるのに丁度いい植木である。身を潜ませるにはうってつけであるな。
それで……誰にも見つかってないのであるよな?
よし、誰にも
ブロロロロ
あ、タクシーが走っていったのであるな。
あっ⁉︎女の子のお母さんは⁉︎
あー……居ないのである……な。
もう。ここどこよ?
……。
毛なしの病院?




