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マタタビ系触手になったのである。

 草木を盾に身を隠しながら、尻尾触手を扇の形にしてパタパタと風を送る。


 その先にいるのは公園の真ん中で日向ぼっこをして目を細めている猫だ。


 大きさとしては中猫から大きな猫になりかけ、といったところ。

 マタタビが良く効くお年頃である。


 お、耳がピンッと立って、目が開いた。

 マタタビの匂いに気付いたであるな。


 ささっこっちにおいでー。


 猫にマタタビとは、いわば興奮剤である。媚薬と言ってもいい。

 だから子供の猫にはあまり効かないし、子供がお腹に入っている猫にもあまり効かない。


 だが大人の猫には効果が強いのであるが、マタタビ慣れしてない猫には、使う量を気をつけないと馬鹿になる事があるので注意しなければいけない。


 寄ってきた猫にマタタビを入れた実をポンッと出して見せた。


「フニァッ!」


 喰いついた。


 実を齧り、ふわふわとした顔でゴロゴロと遊び始めた。

 効果絶大である。


 マタタビを食うと頭にスカァンとくるのであるのよな。毛なしは良くマタタビをお酒で例えたりするらしいのであるが、どうなんだろうか?多分違うと思うのである。


 さて、あまりあげすぎないように調整しながら、マタタビ酔いした猫に触手を絡ませる。


 よしよし、いい子である。


 最初は実とか葉っぱを使って酔わせようかと思ったのであるが、与える分量の難しさに頭をひねった。

 やり過ぎると馬鹿を通り越して死んじゃうこともあるのであるから、こればかりは慎重にならざるを得ない。


 そこで考えたのが、僕自身がマタタビの実や葉っぱを食べて、僕の触手から擬似マタタビの実を作れないか?

 という事である。


 実を言うと、実を食べた事はあっても草木って食べた事なかったのであるのよな。

 僕自身、植物であるし。


 そして食べてみた結果は、予想以上に僕の触手からだによく馴染んだ。


 多分、植物だからこそなのかもしれないのであるな。

 よく分からないのであるけども。


 マタタビ作戦に切り替えてから、もう何匹の猫を酔わせたか忘れてしまったのであるが、大分完成度が上がった筈である。


 触手を猫皮に変えて触手からだを包み、触手を意図的に硬くして擬似骨格を作る。

 擬似骨格の周りをさらに触手で擬似筋肉を作って覆う。


 これで見た目は猫のはずである。


 立ち姿、歩き姿は……ちょっと見ただけでは分からないくらいには猫になったのであるな。

 流石にまだ走れないのであるが。


 猫皮の造形も、まだ昔の僕には程遠いものがあるのであるが、及第点といっていいと思うのである。


 まぁ、猫に紛れるだけであるなら、十分に可能なのである。

 やつら外見はあまり気にしないのであるから。


 けど、毛なしは多分騙せないのであるなぁ。

 抱っこされたら即バレると思うのである。


 どんなに猫に似せても植物の僕には猫の体温は真似できないのであるし、肉球や爪は再現出来ても、目は真似られなかったのである。


 あとゴロゴロは出来るのであるが、鳴く事は出来ないのである。まぁここはまだ要研究中であるけども。


 ……。


 ふむぅ。


 女の子に猫の姿で会っても近寄れないのであるから、難しいのであるなぁ。


 まぁ、遠目に存在だけ教えてやるくらいなら……。


 おや?

 アレは女子高生三人組であるかな?


 っと、そういえば、ここはあの三人組に絡まれたブランコのある公園であったか。

 猫皮を被ると周りが見えにくいのが難点であるな。


 ささっと逃げた方が……。


 おや?迫ってくる気配がないのである。


 バレてない?

 のであるのか?


 なにやらこっちをチラチラと見ながらコソコソと……。


 あの四角くて薄べったい板は、携帯電話?


「ねっ、違うってやめよう?」


 小さい声でお話ししてたのが、ちょっとずつ大きな声になってきてるのであるな。


「でも、あそこにグッタリしてる猫がいるじゃん!きっとあいつ!」


「あ、こっちに気付いたよ!」


「どうする⁉︎」


「どうもしないよっ!」


「でもあの猫、あの時の黒い触手の二本生えてたヤツでしょ⁉︎あの時の広がった尻尾と模様が同じだし!」


「かもしれないけど、だからってそれとは限らないじゃん!あの時の触手さんはいい子だったじゃんか!」


 ……おや?

 これは、どういった……?


「その触手が今じゃ猫と変わらない姿になってるってどうなのさ!きっといっぱい猫を」


「違うよ、あの触手さんはそんな事しないよ」


「でも、猫を襲う触手の警報が出てるんだよ⁉︎見たって人もいっぱいいるし!」


 あぁ、そういえば、何回か見られたのであるなぁ。でも、みんなむしろ元気になってる筈であるよ。

 マタタビはちゃんと使うと体調もよくなるのであるし。


「それにいっぱい猫がいなくなってるって」


 そうであるかなぁ?基本、猫は自分の縄張りからあまり離れないのである。ふらふらしている猫は大体新参の捨て猫であるし、僕の見た感じでも減った感じはないのであるが……。


「でも、寄生種級の警戒種だって言われてるんだよ?大丈夫なら捕まっても放されるって聞くし、一回……」


「そんな事したらここからいなくなっちゃうじゃんっ!」


「でも、ほら。グッタリしてた猫、消えてるよ?」


「もしかして」


「もしかしない!」


 ん?

 あぁ、酔いから覚めたのであるな。

 今頃きっと……ってそこにいるのであるな。


 おや?僕に気付いた?


「ニャー」


「ほら!いるじゃん!」


「あ、ホントだ。さすがに考えすぎたったかな……」


「そうだよ。ほら、仲よさそうにしてるじゃん」


 あぁ、こらこら、そんな身体を擦り付けてこないで。


「フニャフグルルルルル」


 あ、そうか。僕からマタタビの匂いがしてるのであるな。

 さっき、パタパタしたヤツがまだ残っていたのであるな。


 ⁉︎


 あっ、ちょっ引っ張らないで皮がズレるっ⁉︎


「ギャーーーーー‼︎」


 っえ?まだズレてない筈であるが。


「キャーーーーー⁉︎」


「イヤァーーーー!」


 あっ

 お腹の方から引っ張られたから、頭の方が剥けちゃったのであるか。


 そりゃ猫の頭の皮がズルッと剥けて口のところからペロンと触手の骨格が見えたらビックリするのであるなぁ。


 失敬失敬。

 よいしょっと、これで元どおりであるが……。


 三人組は既に居ないのであるな。


 これは……僕、やらかしちゃったのであるかな?

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