元猫は猫の姿に戻りたいのである。
「寄生種、というのは未だ研究段階で、分かっていない部分の多い触手なんだけど、危険性という点に置いては他の触手と比べても段違いなんだ」
と、わかめさんは喋り出した。
「まず寄生能力。寄生種の触手は何の性質かによって好みもあるんだけど、生物であるなら何にでも寄生出来る。と言われている。人であれ、触手であれ、なんでもね。
その上寄生種はそろって悪食でね、目に付いた物、気に入った物を延々と食べ続けて枯らしてしまうなんてのは珍しくない。人どころか、それより遥かに大きなものすら食べてしまう事だってある」
確かに僕の根っこさんは悪食であるなぁ。
好みはちょっとだけあるけど、殆どの物は食べてしまえるものなぁ。
「あと寄生種の特徴として、他に寄生した生物の成長限界を超えて食べた分だけ成長してしまう。というものがある。これは魔王種にも言えることなんだけど、食べて成長した分、それに比例して知能も上がるため、世には隠れて巨大化してしまった触手が各地に存在してる。なんて言われてもいたんだけど、これは最近の研究結果によって否定されてる」
思い当たる触手に一度会った事があるのであるな。
流れない川に居た何でも食べちゃう金魚。あれは悪食であったし、人もたべれそうであったなぁ。
ポンッ
「君はそれをどうした?」
根っこさんが全部食べちゃった。
ポンッ
「……それで何か変化は起きたのかい?」
粉が出たのであるなぁ。その粉が出た辺りから普通の木の芽が出てた所までは見ていたのである。
ポンッ
「まるで普通の植物系触手みたいだな。君は……猫を食べた訳じゃないんだよね?」
そもそもから同族を食べる主義は持たないのであるが、それ以上に生き物を狩って食べようという気がないのである。
お日様の光と水と、あと適当に土を食ってたら事足りるのである。
ポンッ
「お腹が空いたとか、美味しかった物を一杯食べたいとか、思った事ない?」
お腹が空いたと思った事はないのであるなぁ。御神木さんの実が美味しいとか、トメさんの液肥が美味しいとかはあるのであるが、それでそれを一杯食べたいとかは、特にないのであるなぁ。
ポンッ
「ふむ、興味深いなぁ……君は」
その、大きくなって頭の良くなった寄生種とお話ししたりはしないのであるか?
ポンッ
「寄生種は基本的に駆除されるか隔離されるからねぇ。会話が出来るまで大きくなった野生の触手は人に懐かないし、人の手で大きく育てた寄生種は、何故か知能レベルが上がる前に枯れてしまうから、分からないんだよ」
なるほどなぁ。
「そういう意味では、君は触手理解の大きな架け橋になるかもしれないね」
特別であるか?
ポンッ
「格別に特別だね」
ふんすっ
ちょっと気分がいいのである。
「なんだったらウチで保護するけど、ウチに住む?」
いやぁ、僕は気ままな一匹野良がいいのであるなぁ。
有難いお話なのですが、お断りするのである。
ポンッ
「それは残念」
特に残念そうでもなく、微笑みながら言うのであるな。わかめさんは。
「けど、それなら君はかなり気をつけないといけないよ」
それは、御神木の兄さんにも言われたのであるなぁ。
ポンッ
「でしょう?君が寄生種がベースになってるのは多分、間違ってないと思うから、見る人が見たら誤解されるかもしれない。僕たちみたいな触手に理解のある人たちばかりじゃないからね」
で、あるか。
「さて、君の話はまぁいいとしても、本題は女の子の話だったね」
そうであるな。危うく忘れるところだったのである。
「とは言っても、僕は何も出来ないんだけどね」
どういう事であるか?
ポンッ
「その女の子の転生がちゃんと出来てなかったとしても、僕たちが外から出来る事は何もないってことさ」
そうなのであるか……。
いや、そうであるよなぁ。何が起こったのか、そもそもよく分からないのであるから。
「それにもし、関われるとしたら……」
としたら?
「いや、存在するかも分からないものを当てには出来ないね。今のは忘れて」
存在するかも分からないもの、であるか……。
「今、君に出来る事は、その女の子が大丈夫な事を願うだけだよ」
……。
女の子は、多分、猫だった時の僕を探していると思うのである。
だから、僕は猫の姿に戻りたいのである。
ポンッ
「さっきの毛玉はそういう事だったのね……。それが出来るかどうか、僕には分からないけど、それはとても危ない事だよ?」
寄生種の姿に似ているからであるか?
ポンッ
「そう。猫の姿から触手が生えているのを見られたら、確実に追われるよ?」
そうであるか。だからわかめさんは毛玉の僕を見て慌てたのであるな。
ポンッ
「そうだよ。君はえびより賢いね……」
ふふっ照れるのであるな。
ポンッ
「ふふっ」
色々と教えてくれてありがとうなのである。
僕も、はっきりとやりたい事が出来たのでそれを頑張りたいと思うのである。
ポンッ
「そっか。気を付けて頑張りなよ。何か困った事があったらいつでもここに来るといいからね」
ありがとうなのである。
ポンッ
と、わかめさんに実を渡して、棒を伝って台から降りた。
扉の横にある、小さい戸を押し開けて外に出た。
おおぅ、日差しが眩しいのであるなぁ。
さぁ、がんばるぞ!




