枯れ木さんの扱いが雑である。
猫の服。
というと毛なしの作る服を着せられている飼われ猫を見た事がある。
とはいえ猫は毛なしと違って自前の毛皮があるのであるから、実際に意味がないどころか苦行でしかない。と思うのであるのだが……、まぁやられてる奴がそれでいいのなら、それはそれでいいのだろう。
猫の勝手である。
僕はお断りであるが。
それが触手となるとちょっとばかり事情が変わる。
なにせ、触手に毛皮はついていないのであるが……。
まぁそれも冬を体験していないのであるから、実際のところ、どうなのかはよく分からない。
なので、尻尾を広げて触手を包んでみた。
……。
よく考えてみたらそもそもから寒いもあったかいもよく分からない触手だったのであるな。やっぱりよく分からないのである。
む?
三人組の前で毛玉になった時より、よく伸びるのであるな。
枯れ木さんからご馳走になった栄養剤のおかげであるかな?
お陰でフォルムとしては大分猫に近くなったと思うのであるが……。
顔がない分、化け物に変わりはないのであるなぁ。
それに足の長さが猫売り場でたまに見る短足猫くらいの長さしかないし、何より肉球がないからよく滑る。
えっちら おっちら
つるん すてん
……思う以上に歩けないのである。
元が猫なのだから猫のように歩くくらい簡単だと思ったのであるが……、よく考えてみたら猫だった時分に猫のような歩き方を猫が意識してしている訳がないのである。
つまりこれは猫の骨格を触手で真似る必要があるということなのか……。
猫への道も一歩から、課題は山積みであるなぁ。
「君は……誰だい?」
この声はわかめさんであるかな。
思ったより早かったのであるな。それとも僕がのんびりし過ぎていたであろうか?
と、後ろを振り返ってみたら、なんか居た。
革っぽいぴっちりしたズボンに腹を出して革っぽい上着を羽織ったメスの毛なし。青い肌をしてるからわかめさんだと思うのだが……、その頭何?
重力に逆らって上に上にとわしゃわしゃに伸びた髪が……特徴的であるなぁ。
広げた尻尾を畳んで触手を出した。
その頭は……どうなっているのであるか?
ポンッ
「君は、さっきの触手君なのか。色々と技を持ってるんだなぁ。ふむ」
と、実を食べた。
「あぁ、コレ?慣れると結構簡単なんだよ。それに目立つから覚えてもらいやすいしね」
と、手をふりふりしながら笑った。
ネジ屋さんといい、変わった頭が色々とあるものなのであるなぁ。
「まぁおいでよ。さっきの猫の毛玉みたいなのも含めて色々と聞きたいし」
そう言って先を歩くわかめさんについて枯れ木さんのいる部屋に戻った。
枯れ木さんは語っていた姿のまま、そこに居た。
チャラエビさんの言葉ではないが、動いてないと本当に置物にしか見えないのであるな。
というか生きてる?
わかめさんは置物になってる枯れ木さんに目もくれず、台の奥に入っていってカチャカチャと何かやり始めた。
僕も台の上に登って待っていると、手早くグラスを二つ用意したわかめさんが一つを僕の前に置き、もう一つのグラスに口を付けた。
その……枯れ木さんはいいのであるか?
ポンッ
「あぁ、コレ?いいのいいの。一日の大半はこうやって寝てるんだから。それよりさ、さっきの毛玉は何?」
お、おぅ。いいのであるならいいのである。
えっとどこから説明するか。
僕は元猫なのであるが、女の子にお世話をしていた猫であると分かって欲しいのもあったのであるが……。
よく分からないのであるが、トメさんの所で液肥を食べて、トメさんの吸った触手の葉っぱ煙草の煙の中に居たら触手に毛が生えたのである。
ポンッ
「それは最初から平かったの?」
それは女子高生三人組に撫でられてたらそうなったのである。
ポンッ
「ふーん」
と、わかめさんが難しい顔をしてグラスを傾けた。
「ねぇ君、寄生種ってどんなものか知ってる?」
いや、全く。
ポンッ
「うん、だよねぇ。それで裏森は知ってる?」
それは知っているのであるよ。御神木の兄さんから聞いたのである。
「御神木さんも知ってるのか。まぁあの人?はどこにでも現れるからねぇ。まぁそれはいいや。裏森も知ってるなら話が早い」
またグラスを傾けて、コトッと台の上に置いたわかめさんが、台の上に肘を突いて僕に顔を近付けた。
「君が本当に寄生種なのかは分からない。けど、酔っ払いのボケオーナーが言ってたように君が寄生種である可能性は高い。そうなると寄生種でありながら寄生せず、かつ寄生能力を保持したまま各種生物の能力を取り込める新種の触手。という事になるんだろうけど……」
枯れ木さんの扱いが、チャラエビさんとは違った方向に雑に見えるのであるな。
「その場合、というか新種なのはもう確定だけど、その能力の危うさから、君は裏森に放り込まれる可能性高い」
ふぁ⁉︎




