出されたものはちゃんと食べる主義である。
お店の奥でカタリカタリと音がしている。
枯れ木さんが何か準備してくれているようである。
ここは腹をくくるしかあるまいな。
そろりと扉をくぐり、店の中に触手を踏み入れた。
お店の中は……何かビンが一杯なのであるな。
壁一面が棚で収まった大きいのから小さいののビンで埋まっているのである。そのビンは色とりどりの液体が入っていて心なしか綺麗なのである。
で、あるのだが……何かこのお店、変であるな。
猫であった僕が毛なしのお店の中にお邪魔するというのは、めったになかった話なので普通というものは分からないのであるが……なんであろうか?
壁には物が沢山あるのであるが、お店の真ん中に植物が生えている他は、棒が立っていたりお皿が置かれているだけなのである。
枯れ木さんの入っていったお店の奥の方には大きな台があるのであるが、台にはゆるい階段があり、何本かの材質の違う棒があり……。
この棒はもしかして、触手用?
木で出来た棒に触手をかけてみた。
何かしっくりするのである。
登って見ると驚くほど触手に馴染み、スルスルと登れた。
……なるほど、これは触手が登る用の棒なのであるな。
とすると、こっちのケーブルっぽい棒は機械触手用?であるか?
確かネジ屋さんが……トメさんの店を触手に極振りした店、のような事を言っていたと思ったであるが、なるほど。
このお店、毛なしの店なのに毛なしの座れる場所がない。と、すると、あのお皿は犬猫用?
「おめぇ……普通のツル触手じゃねぇとは思ったが、随分とおかしげじゃねぇか。植物用栄養剤はヤんのか?」
そう言いながら枯れ木さんがゴトリとゴツいコップを置いた。
角の丸い厚みのある真四角いコップに青い液体が入っているのである。
栄養剤?であるか。
まぁ、一つ頂いてみるとしよう。
自分でも変わってるのは自覚しているのであるが、一応は植物触手であるよ。
では、遠慮なく頂くのである。
ポンッ
と出した実をコップの脇に置いて根っこさんを青い液体の中に差し込んだ。
チュウ チュウ
……。
お魚の味がする⁉︎
いや、味としてはトメさんの液肥に似たものを感じるのであるが、何かこう……さっきチャラエビさんに感じた匂いかと思いきや、チャラエビさんとはまた違う感じが……。
っというか、コレ。トメさんの液肥より美味しいのであるな。御神木の兄さんの実に迫るものがあるのである。
「それ、気に入ったか?コレも食ってみるか?」
と、次に枯れ木さんが出したのは桜色の花みたいな小鉢に入った……何であるか?
豆粒のような黒い玉がコロコロと入っているのである。
一つ取って見てみても、これは豆ではないのであるな。土、というよりは鉄の砂を固めたような感じである。
これは、トメさんが機械触手にあげてたアレであるかな?
黒くなった根っこさんでプスッとやってみた。
シャリ…… シャリ……
味は……分からんな。そういえば、バーミキュライトを食べた時もこんな感じであったか。
何か、食べてるって感じなのであって……。
シャリ シャリ シャリ
でも何か癖になるのである。
やめられない止まらない?
ん?
枯れ木さんに何かジッと見られてる気がするのであるが……目のところが落ち窪んで影になっててよく見えないのである。
「ふん」
?
息をついたと思ったら背中を向けて、なにやらガサゴソと……。
「コレも食うか?」
と、少し大きなお皿に乗せて出したのは……メザシ⁇
竹の串に五匹連なった見事なメザシであるが……何故にメザシ?
まぁ……くれるというのならいただこうかな。
串からメザシを一匹引き抜いて、根っこさんでプスリと突き刺した。
ふむ。
昔々に若い猫の時に一度食べたことがあったのであるが、なにやら懐かしい。
味は何か美味しい気がする。くらいのものであるが、このメザシの匂いが猫だった頃を思い出させるのであるなぁ。
「ふん。えびは阿呆なんだが見る目だきゃありやがる。どこでこんな希少種見つけてきやがったんだか」
ん?
どういう意味であるかな?
「その様子からすっと、おめぇ自分がどんだけおかしな事をしてんのか、分かってねぇな?」
どういう意味であるか⁉︎
ポンッ
枯れ木さんは実をつまむと親指でピンッと弾いて口の中に入れた。
もごもごと食べてるけど、この枯れ木さん表情が動かないのであるな。
「やはり自覚なしか。普通の植物系触手は水や土は食っても鉱物や生物は食わねぇんだよ」
なんと⁉︎
「食性種じゃねぇなぁ。万能種か、魔王種か……、ところでおめぇ触手が三本変な感じになってるが、そりゃなんだ?」
三本?
二本は黒くなった触手と根っこさんの事であろうし、もう一本は……あぁ、尻尾の触手がなにやらやたらと太いのであるな。
これか。
えっと、なんと説明したものか?
黒い触手はナマコみたいな黒い子から貰った黒い玉を食べたらこんな感じになったのである。
機械触手とお話するのに便利なのである。
この太いのは、昔に猫だった名残なのか、尻尾になったり広がったりするのであるよ。
ポンッ
僕の実を食べた枯れ木さんは……動かなくなった。
トリップしたトメさんみたいなのであろうか?
目が見えないからトリップしてるのか、考え事をしてるのか、はたまた寝てるのか分からないのであるな。
……帰っていいかな?
そろそろと触手用の木の棒に触手をかけようとしたところで、
ガタッ
と枯れ木さんが今まで見た事のない素早い動きで台の上に身を乗り出してきた。
「おめぇ寄生種か‼︎」
ビクッてなったのである。
なんであるか?その物騒な感じの種は。




