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拉致られるのである。

 ブランコ揺られてゆらゆらり。


 尻尾を振ってゆらゆらり。


 触手も一緒ににょーろにょろ。


 ゆらりゆられて花も咲く。


 ポンッ


「きゃーお花咲いたー」


「触手ってお花咲くの!」


「触手だって植物だもんね!」


「摘んでもいいかな……」


「やめてあげて」


 ……。


 尻尾をモフられてしばらくなるというのに……この人たち飽きない。


 思わず現実逃避していたらうっかりお花が咲いてしまったのである。


「尻尾気持ちいいけど、やっぱりさわられてる方も気持ちいいのかな?」


「お花咲くの、気持ちいい時」


 否定はしない。


「じゃ、やっぱり気持ちいいのかー。んふふー」


 うねうねと尻尾触手を振り、三人組の手から逃げたり叩いたり。


 遊んであげるのも疲れるのであるよ?


「連れて帰ってもいいかな」


「犬猫じゃないんだから、触手が何食べるのか知ってるの?」


「バーミキュライト」


「なにそれ?」


「園芸に使う砂」


「……詳しいのね」


「好きだから」


「知らなかったわ」


 あれ?何か尻尾触手がムズムズする?

 何であろうか?

 何かこう……ギッギッてするのである。


「あれ?何か尻尾が震えてるよ?」


「あ、本当だ」


「進化するの?」


「え?マジで!」


 あっ


 ボフッ


「ちょっ‼︎」


「えっ!何⁉︎」


「広がった……」


 ……ぇえぇ……。


 尻尾触手が……平たくなった?


「ねぇちょっと!大きくなったよ‼︎触手って大きくなるの⁉︎」


「な、なるよ?知らなかったの?」


「知らなかったのね」


「ちょっやっば!気持ちいいよコレ!」


「本当だすっごい‼︎」


「も、持って帰りたい……」


「だ、ダメだよ。野良触手被害のビデオこの前見せられたばっかりじゃん!」


「うっうぅ……愛があれば……きっと」


「泣くほど⁉︎」


 猫からどんどんと程遠くなっている気がするのであるが、ウケがいいのは何故なのか。


 パタパタバフバフ


 まるで団扇であるな。


 平たくなった尻尾触手を目一杯広げて触手をその中に収めて丸くなってみた。


 窮屈で動きにくいのであるが……。


「毛玉になった!」


「何コレヤバい!かわいい!」


「……尊い」


「尊いは違くない?」


 やはり受けがいい。

 このまま動けるだろうか?


 よっほっはっ


「は、跳ねてる……」


「ふよふよしてる……」


「尊い……」


「尊い……のかな?私、もう尊いという言葉がゲシュタルト崩壊したわ」


 尻尾だけで動くのは難しいのであるな。触手を出して歩くのであれば簡単なのであるが……。

 猫に触手は生えてない。


 被せた尻尾の内側から触手で足を作って歩いてみる。


 よっほっよっほっ


「歩いたよ!」


「この子本当に触手⁉︎触手ってこんな事も出来るの‼︎」


「……」


「あんた今何考えてんの?狩人みたいな目してるよ?」


 まだまだぎこちないのであるが、頑張れば猫に近付けるのであるかな?


 前足後ろ足をしっかり意識して、いっちにいっちに。


 にゃ⁉︎


 急に持ち上げたりしたら危ないのであるよ⁉︎


「私この子飼う!」


 あっちょっ待っ!あれっ触手が絡まった⁉︎


「そんな乱暴にバックに入れたら可愛そうだよ」


「ちゃんと優しく扱ってあげなきゃ」


 と、止めないのであるか⁉︎さっきまで抑えにはいってませんでしたか?


「え……止めないの?」


 あんたも言うんかい!


「いやぁ、アレ見ちゃうとさぁ、気持ちが分かるというか……」


「賢そうな感じだし、大人しそうだし、触手好きなんならまぁ仕方ないのかなぁ……って」


 いや、確かに褒められてるのが楽しくて調子に乗ったのであるよ。それは認めるけど!

 それとこれとはっ⁉︎


「ありがとう!私、ちゃんと育てるね‼︎」


 走り出したのであるな。

 バックの中でわちゃくちゃにされてるのである。


 やれやれ、僕の意思を無視するのはいただけないのであるなぁ。


 まぁ、それでも尻尾触手の無限の可能性を知れたのは君たちのお陰なのである。

 そこは感謝するのであるよ。


 絡まった触手を解いて平たくなった尻尾触手を元の大きさに戻した。


 少し、元の形に戻らなかったらどうしようかとも思ったのであるが……。

 今まであまり気にしていなかったのであるが、この尻尾触手、思った以上に自在に動く。


 毛の出し入れも自由だった。


 激しく揺れるバックの中、上を見るとお空がチラチラと見える。

 手でバックの口を押さえて、抱えて走っているのであるな。


 申し訳ないのであるが、そのくらい空いていたら出られるのであるよっと、揺れるバックからスルッと抜け出し、地面に降りた。


 抜け出た僕に気づかぬままに、全力で走っていく三人組の一人の背中を見送った。


 必死に抱えてるそのバックの中身が消えてると知ったら落ち込むのであるかなぁ……。


 ま、自己責任という事で。


 後は普段から毛を隠して過ごす事としよう。

 次なら会ったなら、きっとまた面倒になるであろうしなぁ。


 さて……ここはどこであろうか?

 いくら全力で走ったとて、あの公園からさほど離れてはいない筈であるが……。


 見覚えのない場所であるな。


 ん?


 何か不思議な匂いが?

 美味しそうなような、液肥にも似てるような……後ろ?


 っ⁉︎


 魚⁉︎


 真後ろにしゃがんで覗き込むように見てくる変なオスの毛なしが居た。


 青い肌にチラチラと鱗が見える。耳の所がヒレであるな。髪も生えてるし、顔の形も普通の毛なしと変わらない感じではあるのだが……陸地に魚とは、君の存在は触手より不思議ではないか?


 こんな毛なしもいるのであるな。

 触手が受け入れられているこの世界が、あまり不思議に感じなくなってきたのであるよ。


 しかし……いつまで見つめているのであるかな?この魚さんは。


「お前よ、ウチで働かねぇか?」


 今、すっごい嫌な予感がしたのである。

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