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恐怖の求触手広告なのである。

 では、雨に打たれて踊っていても黒触手さんには怒られないのであるな?


 ピリッ


 カッチョンカッチョンうるさかった機械触手の動きがピタリと止まった。


 急に動かなくなると壊れたように見えるのであるが……。


 あ、動き出した。少しぎこちなく静かに歩いて屋根の下に戻っていったのである。


 やっぱり怒られるのであるな。

 だが、残念ながら手遅れなのである。君の歩いた後は水でベチャベチャになっているのだから。


 それはさておきと。


 コレ使う?


 ピリッ


 と、ぎこちない動きのままの機械触手の前にヒューズと電子部品を並べてみた。


 またもやピタリと動きを止めた機械触手がまたもや陽気に踊り出した。


 やはりヒューズは人気なのであるかな?


 ピリッ


(これくれるの?本当に⁉︎いいの⁉︎黒触手さんも持ってるけど、触ると怒られちゃうんだよ!本当にいいの?)


 必要のなくなった物であるから、欲しいのであるならあげるのであるよ。


 ピリッ


 小躍りした機械触手がヒューズを一枚触手に取り、裏返った。

 何をするのかと思ったら横向きに寝転がって触手を広げ、触手と触手の間にヒューズを差し込みはじめた。


 メリッメリッと音がしてねじ込まれていくヒューズが、パキッと音がして頭を残して綺麗に埋まった。


 食べるのかと思ったら、そういう飾り方なのであるな……少し怖い。


 残りのヒューズも同じように埋め込んだヒューズの隣に差し込んだ。


 残った電子部品は……あぁそれは食べるのね。


 コリコリと電子部品を食べながら歩き回り、差し込んだヒューズをチラ見せしてくる。


 ピリッ


(ねぇどう?カッコイイ?カッコイイ⁉︎)


 ちょっとウザい。

 けどまぁ、チラッと見えるヒューズが何やら機械っぽさを演出しているように見えなくもない。


 ここはおとなしくカッコイイと言ってあげるべきだろうか?

 素直によく分からないと言った方がいいのか。


 カッコイイと言えば、会う度にカッコイイと言わねばならなくなる気するので、ここはやはり……。


「お?お前また今日も来てんのか?」


 おぉ!何と丁度いい頃合いに!ネジ屋さんおかえりさんなのである。


 気付いた機械触手も小躍りしながらネジ屋さんの周りはじめた。

 ヒューズを差し込んだ触手の付け根をチラ見せする事も忘れていないが……気付いてもらえるのであろうか?


 気付かれないなら少し可哀想なので教えておくであるかな。


 カクカクな理由で屋根裏にミッチリしてた機械触手に脅されたので、必要のなくなったヒューズをシカジカしたのであるよ。


 ポンッ


「ん?あぁなるほど、ヒューズ貰って付けたんだな。道理で……」


 ん?ネジ屋さんが機械触手に触った途端、厳しい顔になったのである。


 あっ!


「お前……また雨の中で踊ってたな‼︎」


 小気味いい程に機械触手がビクンと跳ねた。

 おぅおぅ面白い程に動揺しているのであるな。

 なるほど、トメさんの言ってた表情というのがちょっと分かったのである。


 しかし、色々と効果のあるペンキ塗ってもらってあるから平気と言っていたのであるが、やはり機械触手が雨に濡れるとよろしくないのであるか?


 ポンッ


「ん?」


 と僕の実に気付いたネジ屋さんが、逃げ出した機械触手を追うのをやめた。


 ネジ屋さんが実を食べている間に機械触手は機械の山に逃げ込んで行った。


「あいつ、そんな事まで言ってたのか。まぁ確か今はまだ大丈夫な筈なんだが、あいつに使ってるペンキはまだ試作段階のやつなんだよ。ペンキの効果がいつまで続くかも分からねぇから、雨に当たるなっつってたんだが……。

 まだちゃんと意思疎通すんのは難しいな」


 なるほど、であるな。


 ネジ屋さんは機械触手の隠れた機械の山を見ながら、ふんっと息を吐いた。


 ふむ。

 こうして見ると、触手より顔のある毛なしの方が、何を考えているのか分かりづらい気もするのである。


 触手に限らず、生き物とは皆複雑なのであるなぁ。

 不思議不思議。


「おぅ。そういやぁお前、とっておきの情報とかの為にヒューズ持って歩いてたんだったか?」


 そうであるよ。

 まぁ実際に、本当に有用な情報であったのかは怪しいものであるが、それでも得るものもあったので、特には気にしていないのである。


 ポンッ


「ふん。まぁそれでいいっちゃいいんだが、ウチのヤツにヒューズをやったんだ。代わりに俺がお前に情報をやろう」


 ほう?

 ネジ屋さんの話であるなら、それはそれで興味があるのであるな。


「お前、えびわかめ堂って知ってっか?」


 えび?わかめ?

 食べ物屋さんであるか?


 ポンッ


「まぁ、食べ物屋……でもある。触手限定だが」


 触手限定⁉︎


「トメさんの所に行った事あったんだよな?あそこを触手に極振りしたらえびわかめ堂だ」


 それは一体、どんな魔境なのであるか‼︎


「俺もえびわかめ堂には結構世話になってるんだが……」


 えっ⁉︎

 じゃネジ屋さんって本当に黒……。


「特殊ペンキの材料だったりは、あいつからこそぎ落とした触手の廃材何かが代金になってんだよ」


 ネジ屋さんが機械の山にくいっと顎でしゃくった。


 あぁ、そうであるよな。

 うん、よかったビックリした。


「あぁあと、えびわかめ堂で求触手広告出してた筈だな。えっと、どこに置いたっけな」


 そんな事を言いながらネジ屋さんがお店の中に入っていった。


 求……触手広告⁉︎

 そういえば、この世には猫カフェなるお店もあるらしいのであるからして、触手カフェというのもあるの……いや、ないだろ。

 多分。


「おっと、あったあった」


 とガサゴソしていたネジ屋さんが帰ってきた。


「ほれ、コレだ」


 と、渡された一枚のチラシには。


 募 私たちと働いてみませんか?

 えびわかめ堂


 ・やりがいのあるアットホームな職場です。

 ・犬・猫・■■・触手 優遇。

 ・未経験者・観察対象者 歓迎。

 ※妄想、空想の餌食になっても我慢出来る方。


 よろしくおねがい致します


 と、書かれている。


 えっと……えぇぇぇぇぇ⁉︎


 ち、ちなみに……、この塗り潰されている■■の部分は何だったのであるか?


 ポンッ


「いや、知らん。俺の所に来た時にはそうなってた。

 お前……行ってみるか?」


 力の限りお断りしたいのである。

 とても有益な情報だったのである。感謝するのである。


 ポンッ


「あぁ、うん。だよなぁ。分かるわ」


 うん。

 恐怖しかない。

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