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脅されたのである。

 しとしとと降り注ぐ雨が身体をしっとりと濡らす。


 猫の時にはただただ不快であったこの雨も、触手となった今の僕にとっては面白いものでしかない。


 しかしこのどんよりとした暗い空の時に降ってくる、この雨というものもまた不思議なものである。


 何故に空から水が降ってくるのか。


 当たり前にそういうものとして享受していたものの中に、なんと不思議の溢れていることか。


 そう考えてみると川というものもまた不思議である。


 この水はどこからきているのか?


 もしや今この降っている雨がひと塊りになり、川となっているのか?


 いや、まさか。

 雨は降らずとも川は流れているのであるから、それだけではないと思うのだが……。


 むむむ。


 川を遡ってみたなら分かるのであるかな?


 ……。


 さて。


 帰るか。


 三枚のヒューズといくつかのよく分からない電子部品を持って、前に来た電柱の上にまた登ったのであるが……誰もおらん。


 やはり雨であるからなのか?


 鉄が錆びるのは分かる。機械も鉄だから錆びるのは分かる。

 それと同じように機械触手も錆びるのであろうか?


 まだ、錆びた機械触手に出会ったことはないのであるが……錆びて動けなくなっていたならそもそも出会う事もない気もするのであるが……。

 また持ってくるのも面倒であるし、ここに置いていってもいいかな?


 とっておきの情報というのも気になりはするのだが……面倒なのだから仕方がないのである。


 充電して帰る事としよう。


 黒くなった根っこさんを電線に絡めるとジワジワと何かが溜まってくる感じがしてくるのであるなぁ。


 なんとも不思議な感覚なのである。


 昨日色が変わっていることに気付いてからネジ屋さんの所に見せに行き、一緒に色々と調べてみたところ、機械触手に似た性質があると言われた訳である。


 とりあえず、電気を溜められてピリッと出来るのは分かったのであるが、その他に何が出来るのかはまだ不明なのである。


 僕にもネジとかヒューズとか生えてくるのであろうかなぁ?

 それはそれで楽しみであり、ちょっと怖い気も


 ツンツン


 お?

 今誰かにつつかれ……?


 振り向いて見ても誰もいない……訳はないか。


 よく見ると後ろに走っている電線にコード触手が巻き付いて、僕に差し込みのような先っぽを伸ばして居るのが見えた。


 コード触手はクイックイッと手招きするような動きを見せると、電線に巻き付いて滑るように戻って行った。


 あのコはピリッが出来ないのであるかな?

 それとも雨だからしないだけなのか。呼ばれているみたいなので付いて行ってみるであるか。


 コード触手の伝っている電線は、毛なしの家に繋がっている電線であるな。


 とすると……とついて行った先の屋根からは軒に空いた穴にコード触手がスルリと入って行った。


 なるほど、そこで雨露をしのいでいるのであるな。


 コード触手の入った穴を覗き込むといるわいるわ機械触手がみっちりと。


 ちょっとドン引きする量である。


 その中の見覚えのある蜘蛛型機械触手が前に出てきた。


 ピリッ


(こんな所まですまねぇな。俺らはどうしても雨が苦手でよ)


 まぁ、その気持ちは分からんではないのである。

 が、それより……今、黒い所でも根っこさんでもない所でピリッされたのに聞こえたのであるな。

 僕の触手は一体何になろうとしているのであろうか?


 別な何かになるのであれば、猫にならないかなぁ?

 猫。

 猫いいなぁ。


 ピリッ


(電柱に来たって事はヒューズとCPU持ってきてくれたんだろ?見せてくれよ)


 ん?

 おぉ、そうだったのであるな。


 尻尾触手のフサフサの中に埋めて持っていたヒューズと電子部品を取り出し、機械触手の前に並べて置く。


 それを見ていた機械触手達が一斉にわちゃわちゃと騒ぎ出した。


 むぅ。大人気であるな。

 ヒューズがオシャレというのもあながち冗談でもなさそうである。


 機械触手が目の前に置かれたヒューズに身体を輝かせ、伸ばそうとした触手を黒い触手で弾いた。


 情報というのが先であるよ。


 ピリッ


 蜘蛛型機械触手がたじろいでいる間にヒューズと電子部品を尻尾の中に入れた。


 ピリッ


(おいおい、どういうつもりだ?情報なんていつでもやれるんだから、先にヒューズとCPUくれよ)


 む?随分と高圧的であるなぁ。

 まぁそれは許してやってもいいのであるが、ヒューズが欲しいのなら情報が先であるよ。

 それもちゃんと僕が納得できるものでなければやれないのであるなぁ。


 ピリッ


 僕が持ってきた物に対価も出さず、先に手を出そうとはずうずうしい横着者であるな。


 ピリッ


(おい、ここがどこだか分かって言ってんのか?)


 お?


 入ってきた穴が塞がっているのであるな。いつの間にやら玉が並んでくっ付いているような機械触手が穴を塞いでいるのである。

 それに倣うように他の機械触手達も、触手をイカラセながら詰め寄って来ているのである。


 ほぅ。

 僕を脅す気かね?

 元野生の猫を舐めないで欲しいのであるなぁ。

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