何か黒くなったのである。
カンカンの陰になっていて見え難かったので、ずらしてみたらその姿がよく見えた。
よく見えてたのだけれども……これは一体なんであろうか?
寄りかかっていたカンカンをずらした衝撃で大きな芋虫っぽいナマコがクルンと丸まったのだが……丸まりきれてない。
どこか苦しそうである。
でも、なにか綺麗であるな。
赤や青、黄、橙色なんかの半透明な物が鱗のように、高さも大きさもまばらに生えてる。
そして、赤には10、青は15、黄は20、橙は5とそれぞれ数字が入ってる。
っていうかコレ、ネジ屋さんに見せてもらった平形とそのミニと低背のヒューズそのものであるな。
ヒューズを大量、というか身体全面に生やした触手?
つまりはコレはヒューズを食べてヒューズを生やす触手であるという事なのかな?
あぁ、ヒューズナマコがびちびち暴れている。裏返っちゃったのであるかな?
面も裏も分からんのであるが……。
コロンと転がしてやった。
お、足が付いたのかな?
と、思った瞬間、ポンッと跳ねて僕の触手の一本に飛び付いた。
おっおわぁ⁉︎
引っ付いて離れない!噛まれてる⁉︎
ぼ、僕は食べても多分美味しくないのであるよ!
(……ッ……イ……)
にゃ⁉︎
(……ッテ……カラ……)
お、おぅ。ごめんにゃ。話しかけたかったのであるな。
(カラダ オモイノ ナニ アル……トッテ……カラダ……)
……?
そのウロコみたいになってるヒューズが邪魔で動けないという事であるか?
自分で生やしたのに⁇
(オナカ スイタ……カラダ オモイノ……)
そういえばネジ屋さんの所の機械触手も食べ過ぎとかで動けなくなっていたとか言っていた気がするのである。
……取ってあげたらいいのであるかな?
噛まれてる根っこさんを持ち上げたらそのままぷらぷらとぶら下がった。
丁度目の前にあったヒューズを掴み、グッと引っ張ってみた。
スポッ
(アッ)
スポスポッ
(ァアッ)
それはどういう声なのか?
痛そうではないから、それはそれでいいのであるかな?
ビクビクと震えているが……。
スポポポポポポポポ……
(……ッ……ウッ……アァ……)
ポンッ
全部取れたかな?
持ち上げたまま、クルクルと回して見ても残っているヒューズはなさそうなのであるが……ヒューズがなくなったヒューズナマコは黒いウネウネとしたよく分からない塊にしか見えない。
機械ではなさそうであるが、コレは何触手なのであろうか?
ビクッビクッと身体を震わせていたヒューズナマコは根っこさんから離れてペチャッと下に落ちた。
小さな黒い水溜り?みたいである。
そこからまたナマコのような形にして戻り、頭のらしき物をブンブンと振って見せてきた。
お礼を……言っているのであるのかな?
嬉しそうではある。
ん?
振っている先が何か、不自然に膨らんでいる……ような?
振るのをやめたかと思ったら、先っぽ何か丸い玉が付いていた。
ヒューズナマコはそれを僕に向けて差し出してきた。
くれるのであるかな?
その玉を受け取ると、ヒューズナマコはフヨフヨと身体を揺らし、滑るように走って目の前のカンカンに飛び込んで行った。
す、凄い速かったのであるなぁ。
身軽になるとそんなに素早く動けるようになるのであるなぁ。
カンカンの中から、コリコリと音が聞こえる。
早速お食事に入ったようであるが……食べる事でヒューズが生えて動きが鈍くなっていっているのは理解しているのであろうか?
全く難儀な生き物である。
しかし……この多量のヒューズと、貰ったこの玉はどうしようか?
コリッコリッ
ヒューズは……二、三個貰っておいて後は放置でいいか。
玉はネジ屋さんに持って行って、見せてみ……ん?
玉?
玉に根っこさんが、刺さってる。
コリッコリッ
あぁ、このコリコリ音は根っこさんだったのかー。
僕の根っこさんは自由であるなぁ。
バーミキュライトや土や砂から水や液肥も食べるのであるから、何を食べても不思議ではないのであるが、意図せず食べてしまうのは少し困りものではある。
しかし、僕の根っこさんはなんでも食べるのであろうか?
試しに散らばったままになっているヒューズを根っこさんで持ってみるが……食べないのであるな。
あと他には……と覗いたカンカンには電子部品らしい細かい物がガチャガチャとある。
これは食べる?
と根っこさんを差し込んでみると……。
カリッコリッ
おお、食べてる食べてる。
他には……ネジ、ネジはどうであるか⁉︎
電子部品を食べてる根っこさんをそのままに、ネジのカンカンに別の根っこさんを差し込んでみた。
……ゴリッ……ゴリッ
おぉ、これも食べてる。
とすると、ヒューズはプラスチックだから食べなくて、金物は食べる。という事になるのであろうかな?
ふむぅ。
これを食べたことによって、僕にもネジやら電子部品やらが生えてきたりするのだろうか?
疑問は尽きないのであるが、触手という生き物は知れば知るほど謎だらけなのである。
翌朝。
起きて見たならば、一本の触手と根っこさんが黒く、そして少し太くなっていた。
僕の場合はそういう変化になるのであるか……。
僕はどんどんと謎の触手になっていっているのではないかと、少し怖くなったのであるが、よく考えてみたら触手という存在自体が謎なのであるから少し変化した位なら誤差の範囲な気がしてきた。
とりあえず僕は深く考えるのをやめた。




