ネジ屋さんなのである。
雑然と積まれた金属、もとい何かしらの機械の山。
車の物ではない何かしらのタイヤの山。
そして真ん中に鎮座するマダラ模様のテント。
それらの物が建物から突き出した屋根の下に収まっている。
シャッターの開け放たれた建物の中には何やら雑多にもが置かれているようであるが……ここは本当にお店なのであろうか?
建物には大きく『カスタムショップ』と書かれていた。
「着きましたよ」
と御神木の兄さんが言った。
とすると、ここがネジ屋であるか?
ネジの類は沢山置いてありそうではあるが……何故にネジ屋?
ポンッ
「あはは、ボルトナットなども奥に行けば売ってありますよ。まぁ他にもペンキであったり、色んな機械であったり……他にも最近では色とりどりの布なんかも売るようになりましたが」
……益々よく分からないのであるな。
「本人に言わせると、ネジとは浪漫なのだそうですよ。それそのもの、姿形から機能、その全てがカッコいいと。だから『ネジ屋』なのだそうです」
……なるほど。
僕の理解の及ばない話であるという事を理解したのである。
触手にも様々よく分からない感じの形にをしたものがいるであるが、毛なしもまた千差万別なのであるなぁ。
「この時間なら、大体お店に居たと思っていたのですが……あぁ居ました。そういえば今はお昼過ぎでしたね」
テントに視線を向けながら御神木の兄さんが呟いた。
よく見るとテントから、テントに似た色のズボンを履いた足が生えている。
寝て……いるのであるか?
お昼寝であるか?
何もこんな所で寝なくても良いであろうに、ここの主人はトメさんと比較にならない程に変人であると見受けられる。
「多分もう少しで起きると思いますが、出直しましょうか」
そうであるな。
猫の時にも寝起きの悪さで起きた争い事が沢山あったのである。
食べ物の次に争いになるのが寝床と寝起きの絡む問題であったなぁ。
「その声は御神木か?別にいいぞ、今起きるとこだったからな」
とテントの足がもそもそと動き、這い出て来た。
……触手?
テントから這い出てきた毛なしの頭に大量のウネウネとしたものが張り付いて……いや、アレは生えているのであるな。
しかもうねうねとした黒い触手にネジっぽい物が沢山付いていて、何の触手なのか分からない。
兄さん、ネジ屋とは毛なしの姿をした触手であるか?
ポンッ
「あぁ、なるほど猫さんにはそう見えましたか。よく見てくださいあれは髪ですよ。ドレッドヘアという髪型なのです」
髪?あれも髪なのであるか。ではネジが埋めてあるのはファッションというものなのであろうか?
毛なしの考える事はよく分からないのであるな。
「何だ?その蔓触手。そいつと話してんのか?」
「はい、この子は猫さん。多分トメさんと同じ世界から転生してきた元猫の触手です」
よろしくなのであるネジ屋さん。
僕は特に名前のない野良触手であるからして、好きに呼んで欲しいのである。
ポンッ
「ふぅん。猫が転生ってのも聞いた事がねぇが、触手ってのはなお珍しいな。お前、なんか出来んのか?」
何が出来ると聞かれてもよく分からないのであるが、機械触手とお話し出来るのが珍しいとは言われたのである。
ポンッ
僕の身を食べたネジ屋さんが固まった。
驚いたような顔で僕を見た後、
「ちょっとそこで待ってろ」
と、店の中に歩いて行った。
何であるかな?
中に入ってったネジ屋さんはすぐに何かを持って戻ってきた。
ネジ屋さんの持っているのは……棒の生えた箱?
「おーい、昼終わってんぞ、出て来い」
まだ誰かいるのであるか?
店の方を見ていても誰も出てくる気配が……。
ガチャリ、と音がした。
音の方を見てみると山と積まれた機械から何かが出てきた。
ゾロゾロと……。
ガチャガチャガチャガチャガッチャガッチャガッチャガチャガチャガチャガッチャガッチャ
やかましいであるな‼︎
小鳥位の大きさから中型の犬位のまで、何匹いるのか数えられないのである。
その中でも一際うるさく、一番大きな触手が機械の山から出て来られずにもがいている。
「あ、お前また食い過ぎたな⁉︎だからいつも程々にしろっていってんだろ」
ネジ屋さんが引っかかってもがいているし機械触手の腕を掴み、足を掛けて乱暴に引っ張り出した。
ガチャガチャと音を立てて一部の機械山が崩れ、機械触手が引っ張り出された。
足が一本取れてるように見えるのであるが……いいのだろうか?
「バランス悪いな。ちょっと待ってろ」
と再び店の奥へと消えたネジ屋さんが今度はガラガラと大きな棚を押して出て来た。
棚には工具らしい物がいっぱい積んである。
な、何を始める気で?
「もしかしなくても猫さんは機械触手の整備を見るのは初めてですか?」
もちのろんである。
あのネジ屋さんが持っている大きなハンマーとノミのような物は、その整備に使うものなのであるか⁇
ポンッ
「あぁ、でしたら少しショッキングな光景かもしれないですねぇ。
あれはノミではなくタガネといいましてね、ああして……」
ネジ屋さんが機械触手の出っ張りにそのタガネを当てがい、ハンマーを振り下ろした。
バキィッと激しい火花を散らして出っ張りが弾け飛んだ。
「余分に膨れ上がってしまった部分を削り落とすのに使うんですよ」
コッカァァン コッカァァン コッカァァン コッバキィ
は…は…激しいであるなぁ‼︎
次にネジ屋さんがコードの付いた機械を……
ギュィィィィィギギャギャギャギャ
「あれはサンダーといいまして、表面を削ってるところですね」
次に長い先っぽの曲がった鉄の棒を……
「あぁ、あれはバールといいまして……」
次に……
「あの三本爪のやつはベアリングプーラですね。本来はベアリングを引き抜く為のものはなのですが、何を引き抜く気ですかね?」
「おや、ショックドライバーを持ち出しましたね。ネジが硬くなってたのでしょうか?」
「あ、ガス溶接の準備を始めましたね。あれは酸素とアセチレンというガスを混合させまして……」
御神木の兄さん、やたらと詳しい気がするのであるが、それは一般的な知識なのであるか?




