53話 戦いだ!!根本は面倒くさい
53話目!皆様お久しぶりです!アルファポリス様の方の投稿がひと段落着いたので、投稿します!尚、目標50~60話の投稿だった筈なので、一応目標達成の筈です!ま、時間が許す限り今日は投稿バンバンしますよ~
オルガとレオンは城にある訓練場にて向き合っていた。
「ルールは簡単で始まりはコインを投げ、落ちた瞬間に攻撃の開始、勝敗は先に相手を降参させた方か気絶させた方が勝ち。それと相手を殺すのは負け。それ以外は問答無用よ。ま、あなたみたいな子供が私に勝てる訳が無いだろうけどね」
自分が負ける未来など想像出来ないと言わんばかりにオルガはルールを説明する。
だが、それに対するレオンの応答は単純なものだった。
「それは実際に戦ってみないと分からないからな」
その応答にオルガは思案する。
(簡単な挑発に乗ってくれるかと思ったけどこれはちょっと警戒した方が良いわね。挑発の効果が全く無い)
ちなみに『偉大なる魔術師』は個々で結界を張っており、マーティンに至っては意識だけを人造人間に移し、観戦すると言う絶対安全な状態となっている。
……魂にダメージを与える魔法には酷く無防備なのだが。
レオンが後で聞くと実験の途中らしい。
「そろそろ始めないか?」
「ええ、良いわよ」
オルガはレオンの提案に賛成し、空中に投げる。
だが、このルールには穴があった。それはどちらも理解している事で……
「『魔法の眼』『魔纏化』『魔宿化』『震動拳』『超速加速』『物質創造』……からの設置型魔法陣複数展開」
「設置型魔法陣複数展開。『付与:超加速』『付与:筋力増加』『付与:五感強化』!」
ルールの穴、それはコインが落ちたら攻撃の開始であってその他の行為、すなわち強化などは行っても良いというものだ。
そして――
「流石にルールの穴には気付くのね?」
コインが落ちた。
「当たり前……だ、ろっ!!」
先手を打ったのはレオンで、その拳に纏った籠手によりオルガに殴り掛かる。
だが、伊達に6位では無いのだろう。オルガは自分の武器である『深淵たる天雷槍』に魔力を流し、レオンの攻撃を迎え撃つ。
その攻防に勝利したのは……
「クッ!?」
「っ!?……雷を纏う、か。が、ダメージは無いから大丈夫だな」
どちらでも無かったというのが正しいのか、どちらも勝者であると表現するべきなのか。はたまたどちらも敗者と表現するのか。結果はオルガがレオンの『震動拳』によりダメージを受け、レオンはオルガの雷によりダメージを受けていた……否、ダメージは無いが痺れはしたようだ。
「予想以上に強いみたいね。でも、私だってまだ本気を出した訳では無いの……」
「じゃあ、俺もギアを上げよう」
オルガとレオンは瞬時に判断し、それぞれがギアを上げる。
オルガは槍へ流す魔力の量を上げ、本気を出す決断を。
レオンは神槍ブリューガングを出し籠手に更に魔力を流し、強固に。
先ほどのじゃれあいから一転、勝負は唐突に始まる。
レオンは強化されたオルガの状態を確認するためこの世界に転生したばかりの時の戦闘スタイル、すなわち上空に己を待機させブリューガングを使うスタイルになり、+αとでも言うように更に自分も創造した籠手でオルガへ襲い掛かる。
「空を飛ぶなんてズルいわね?」
攻撃を避け、いなし、魔法を使いながらも上空にいるレオンへ話し掛けるオルガ。
「それだって俺の戦闘スタイルだ。自由だろ?」
「そう……ねっ!」
オルガは今までいなしていた攻撃を力強く弾き、胸の前に刃を下にして槍を構える。
(何を?)
レオンは警戒し、ブリューガングを防御に適したクッション状態に変える。
その判断は間違っていなかった。
『雷の天罰』
その職技は鑑定眼を使っても技の威力が高すぎてレオンでも規模が想像出来なかった技だ。
それに生命の危機を感じブリューガングを完璧な防御形態の【太陽の領域】へと変化させた。
「神槍ブリューガング 第Ⅰ形態【太陽の領域】」
『雷の天罰』。その技はオルガを中心として雷が暴れまわるもの。効果は単純、しかしその単純さ故に威力は相当なものであった。
(この雷、ブリューガングの結界を破りそうだな。もっと魔物の魂を吸収させて能力を上げておいた方がいいか?)
レオンは今の事態よりも先の事を考える。だが、これは余裕のための行動では無く一種の現実逃避のようなものだった。
そして、【太陽の領域】に罅が入ったのを見ていたオルガは内心で喜んだ。
(もう少しであの結界を破れるわ。魔力はまだ6割はあるから……)
オルガが戦闘の予定を考えている間にもブリューガングの結界には、罅が入り始めていた。
(やばいっ!?『雷の天罰』で魔力が乱れているから転移の座標もあまり解らないし。……って、え!?)
その時、ブリューガングの結界が飛び散る。
〈神槍ブリューガング、【第Ⅰ形態 太陽の領域】の破壊を確認。
よって再起動まで10分を有することになります〉
〈神槍ブリューガング、【第Ⅰ形態 太陽の領域】の凍結を確認。
再起動まで9分59秒の時間を用います〉
「チッ!」
結界を破られたことに舌打ちをしながら魔法を使う。
『集中する空間』
「『記憶の追走』神槍ブリューガング 【第Ⅴ形態 黒炎の蒼花】」
レオンは苦し紛れに魔法である程度の雷を一点に集め、オルガの魔法をブリューガングにより無効化する事に成功する。
「いたっ!!」
そう、ある程度、なのだ。そのためレオンの魔力によって微力に集められた雷は無効化されなかったものはレオン本人へと当たっているのだ。
だが、レオンには治療の魔法もあるし、それまで自分を守るもの、否、魔法もある。
一方オルガは職技へと昇華した自慢の魔法が通用せず戸惑っていた。
(え?私の魔法を殆ど無効化させた!?でも――)
だが、彼女は偉大な魔術師なのだ。戦場で思考に浸るほど馬鹿では無い。
(――もう一度使うまで。それに設置した魔法二つはどちらとも『雷の天罰』で三つを同時に使えば倒せるでしょう)
オルガが計算をし、レオンに勝つための算段を立てている中、レオンは回復を行うため設置した魔法を使う。
「設置型魔法陣発動!!」
今回レオンが発動させたのは五つ設置した内の二つ、『守壁』と『刻壁』だ。
『守壁』は単純に魔法、物理攻撃を防ぐもので、『刻壁』は壁の中の時間を早くするという効果だ。
前者は人気なのだが、後者は寿命が縮まるため殆ど使う者はいない。だが、レオンは寿命というものが無いため一瞬の躊躇なく使う。
そして二つの魔法を唱える。
『慈悲の光よ、我は今汝の力を必要としている。その慈悲を我に集め暖かい癒しを与えよ』
『慈悲の暖』
『清き流れに従い、我を蝕む害を流せ』
『聖浄』
詠唱を行ったのは先ほど【太陽の領域】と【黒炎の蒼花】に【黒炎の蒼花】の無効化を大量に使ったため。【黒炎の蒼花】は万能な能力を持つ能力だ。しかし、その代償は無効化する度に多大な魔法を使う、その反撃も少しだけ魔力を使うものとなる。
「呑気に詠唱している時間なんて無いわよ!!設置型魔法陣展開」
『雷の天罰』
オルガが雷と供に切り掛かって来て、レオンの作った障壁が砕け散る。
それは本来ならば無理なことなのだが、オルガの腕と付与された雷に増幅された筋力によりレオンの基本的に鉄壁の障壁は砕け散ったのだ。
「――え!?」
「残念。回復済みだ。それと――」
だが、オルガが見たのは怪我を負ったレオンではなく、一冊の本を広げた状態で手に持ち、オルガにその本を向けるレオンだった。
そして本に描かれた魔法陣に魔力が流され、魔法が唱えられる。
『燃える星闇』
それは対個人に特化した様々な属性が合わさった魔法。
そしてオルガは攻撃の動作が終わることなく『雷の天罰』と共に漆黒の闇に包まれる。
「……これで終わり、か」
「え?……レオン、ちょっと何をしたのか説明して貰える?」
アブルが丸い闇に囲まれたオルガの方を見ながらレオンに問う。
「ん~……後々本人に聞け。説明が面倒臭い」
「……分かったよ」
レオンが面倒臭がり屋だから説明しなかったとアブルは片付けたようだが、本当にこの魔法を面倒臭いのだ。
効果は闇属性と空間属性で闇の無限空間を創り出し、炎属性と土属性で隕石を落とす。ちなみにオルガは永遠に落ちてくる隕石に心が折れそうになっていると思う。そして一部細工して生命体に当たった場合粉々に砕け散るようになっている。
それにアブルの教えては他の属性に無知なアブルに基本的なことから教えていかないといけないのだ。
「レオン、オルガをそろそろ解放してくれないか?下手にオルガがトラウマを持つと大変だ」
「マーティンか。別に良いぞ?」
レオンは殆ど魔力が残っていないため『燃える星闇』を純粋な魔力に還元し、己に取り込む。更に『魔溜の靴』からも少しだけ貰い6割ほどまで魔力を回復させる。
ちなみに今回の魔力の消費は9割方【黒炎の蒼花】になる。本来ならばここまで使う事は無いのだが、攻撃が雷という事で何十、何百、何千も攻撃が別々に来た為大量に無効化する事になったのだ。
要するに、一回一回は微力な魔力消費で済むものの連続で魔法を使われると魔力の消費が激しくなるという事だ。全ての魔法攻撃を無効化する【黒炎の蒼花】の弱点が二つも色濃く出た試合だろう。
一つ目は『連続攻撃に弱い』、二つ目は『範囲攻撃には弱い』。
否、もう一つあるだろう。三つ目は――




