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神槍使い  作者: 怠惰な男の子
2章~偉大なる魔術師(仮)~
44/58

42話

では、今回は0時ギリギリの投稿です。42話目!!

今回は約2600文字なので少ないです。

 お盆と共に渡された皿の上にあるパン。それは運良く焼き立てのようでモチモチしていた。そのパンをオークの肉の入ったシチューに浸け、肉と共に白く染める。

 それを口の中に運ぶと焼き立ての温かいパンの味、煮込まれたシチューのコクのある深い味、噛むと繊維が柔らかく解れていき染み込んでいた味が滲み出てくる。

 だが、レオンたちは――この味を楽しみに来たという理由もあるが――これが目的で来たのでは無い。


「それで、レオンがいた場所っていうのは何処なの?」


 レオンがシチューを楽しんでいる最中に話し掛けてくるのはアブルだ。尚、サンは眠そうにしていたため、本人にしっかりと確認を取ってから置いてきている。


「私は気になるけど……そこは危険な場所では無いのよね?」


 こちらはレオンと同じスピードで食べているイーゼで、まず確認したいとシチューを食べながら話し掛けてくる。


「ああ、危険な場所では無いさ。ま、今は、っていう但し書きが付くけどな。それとアブルの質問には流石に答えられないな……ちょっと待てよ」


 レオンはアブルとイーゼの質問に答えながらある可能性を思いつく。


(イーゼの場合は興味が少しあるか、というレベルだが、アブルは興味津々といった感じで、しかも空間魔術師だ。一応仕掛けは必要か)


 レオンはそう結論付け、水晶玉を取り出す。


「レオン……それは?」

「これは、今から行く場所のちょっとした下準備だよ。後、誤って死なないように、っていう配慮だ」


(魔物はもう配置してしまっているからな。人を殺さないように設定しておくか)


 アブルが問いかけてくるのに答えながらレオンは水晶玉に魔力を込める。


迷宮名  14の理を司る最恐の迷宮

DP   53070

階層   6


 尚、6層目があるのは最初から配置されている場所の事だ。

 レオンは使ったDPがもう回復し始めている事に驚きながらDPの覧を開く。

 そして開いたのは『その他』。そして先ほど見つけたものを探すためにスクロールしていく。


(購入、っと)


  【反響のマジックコーティング】

  本来なら転移出来ない迷宮は一定以上育ったものだが、その状態を強制的に生み出す。これがコーティングされた迷宮は壁の向こうを探知出来なくなり、転移が出来なくなる。3400DP。

 「痛くない値段だな」そう思いながらレオンは水晶玉をリングに仕舞う。


「それで、僕たちは気を付ける事は?」

「特に無いな」


 そこでレオンは二人がもう食べ終わっているのに気付く。


「早いな。二人共」

「レオンが少し水晶玉を触っている間に食べ終わっちゃったんだ」


 そう言われレオンはシチューを急いで食べる。

 実はレオンはこの体になってから食事を必要とする量が減っていて、日本にいた時よりも食べる量は減っているのだ。

 そのため最後の方は無理矢理食べるのだった。


「じゃ、行くか。代金は賭け試合をしてたんまりあるから俺が奢るぞ」

「ありがと~」

「レオン、ありがとう」


 そう言い二人は先に店を出ていく。


「ミリーか。昨日ぶりだな」

「昨日ぶりなんて言葉初めて聞いたわね。オークのシチュー3つで銀貨2枚と銅貨1枚よ」


 会話をしながらお金を計算していくミリー。それは、長い間店を開いている為出来る事なのだろう。


「冗談で使った言葉だから忘れてくれて大丈夫だ。そういえば少しだけ安くなったな。はい、銀貨2枚と銅貨1枚」


 レオンも会話をしながらお金を払う。


「ええ。今日は昨日より多く仕入れられたからね。銅貨1枚安くなっただけよ。後、子供の友達もしっかり作りなよ。さっきいた大人の人たちとは仕事の話しをしていたようだけど」

「分かってるけど、俺は学園には通っていないからな」

「ならこの街には旅行で来ただけなの?」

「まあ、子供にも事情があるからな。それと今日以降は暫く来れないから」


 来た回数は少ないが仲良くなったかもしれないミリーにレオンは報告しておく。


「分かったわ。今度王都に来た時も此処にも来てね」


 そう言われレオンは店を出ていき、店の外で話していたアブルとイーゼに話し掛ける。


「アブル、イーゼ、行くぞ」

「分かった」


 アブルがそう答えレオンは二人に目を閉じるように促す。

 その二人を見てレオンはリングから鍵を取り出すと、レオンの目の前に扉が現れる。そして二人を無魔法で浮かばせてから扉をくぐる。

 尚、闇魔法『隠密』で一般市民には見つからないようにしているため安心だ。


「着いたぞ」


(イーゼは俺が空間魔法で来たって判断して、アブルは転移以外のナニかで来たって判断するんだろうな)


 そう言いレオンは二人を地面に下ろす。


「ここ……何処なの?」

「この床硬いけど冷たくて良いね。夏とか来たいな~」


 イーゼが真剣にレオンに問う中、アブルは床に手を置いて涼んでいる。それでも、しっかりと自分のいる場所を探知しているのは流石というべきであろうか。


「魔力が跳ね返ってくるってことは、迷宮?」


 アブルが自分の探知の結果からレオンに問い掛ける。


「いいや、迷宮では無く迷宮(ラビリンス)だ。ちなみに俺はここのマスター」

迷宮(ラビリンス)?どこかで聞いた事があったような……」

「レオン!どういう事?」


 レオンの言葉を聞きアブルは悩むが、その言葉の意味を理解したイーゼが杖を構える

「どういう事もこういう事も……遊びだが?」

「そういう事じゃ無いわよ!あなたは魔物なの?人間なの?」


『追跡弾道炎球』


 レオンはイーゼの質問に答えながら魔法を撃ち、『魂通のイヤリング』に魔力を込めるが妨害されていて念話出来ない事に気が付き眉を顰める。


「いきなり魔法を使ってくるなんて……どうしたんだ?別に俺は人を殺そうなんて行為はしないぞ?」


(ハァ~……面倒臭い事に……)


 だが、イーゼの使った魔法により出た煙から出てきたのはクッション状態のブリューガングを盾にし、全くダメージを受けていないレオン。そしてアブルは急に戦いになったレオンとイーゼに困惑しながらもイーゼに問いかける。


「イーゼ、迷宮(ラビリンス)って何?というかレオンに何で攻撃するの?」

「妖精迷宮と迷宮はシャルミア王国では同じ扱いがされているの。厳密に言えば妖精迷宮は人工物、迷宮は自然物、と違うのだけど昔に聖封の方々が作ったものだから……」


『咆剣』


 イーゼがアブルへ説明している最中酷く無機質な声でレオンが魔法を放つ。その魔法は剣の形をした超音波となり二人へ襲い掛かる、が寸での所で二人は避ける。


「レオンっ!?何する……っ!?」


 レオンの感情の抜けた顔の額には、今イーゼの話していた聖封の紋様が浮かんでいた。

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