41話
気分的にやっぱりもう一話投稿しようかと。そんな訳で41話目!!
レオンの目の前にある水晶玉。それはレオンの記憶にあるようなガラスが球体になったものだと勘違いしてもおかしくないものだった。唯一違いがあるとすれば……
【妖精迷宮の水晶玉】
迷宮の主が迷宮を操作するために使うもの。魔力の塊で出来ている。尚、迷宮主が亡くなった場合一度壊れるが、前迷宮主が迷宮の存続を望む場合指定された相手が触った時に迷宮を受け渡す事が可能。
ただのガラスでは無い事か。
「まあ、持ってみるか」
「キュウ」
そう言いレオンが水晶玉を触ると……
「うわっ!?」
「キュキュ!?」
突如水晶玉が光を発しながら光だしたのだ。そして……
「うわっ!?体にっ!?」
レオンの体の中に入っていったのだ。それだけでは無くレオンの目の前に半透明なボードが現れる。
迷宮名 14の理を司る最恐の迷宮
DP 82000
階層 2
「っ!……此処に来てから驚いてばかりだな。で、だいたいは小説読んでいたから予想していた訳だが……説明出るかな……やっぱり出るか」
レオンがその半透明のボードの言葉をタッチすると説明が出てくる。
迷宮名
→ディエウスによって決められた妖精迷宮・迷宮の名前。
DP
→迷宮主が自然に出している余りものの魔力と、迷宮に侵入した生物、迷宮で死んだ生物の魔力を迷宮が吸収した魔力を数値化したもの。魔物を生み出し、仕掛けを作り、階層を増やすなどが出来る。
階層
→設置された階層を表示する。
DPは普通の者ならば自分の魔力だけで今のレオンの量まで貯めるには一年ほど掛かるだろう。
それ程レオンの迷宮は狂っていた。だが、その理由をレオンは知っていた。
「原因は転移か。俺の魔力は微量しか出ないっていうのは確かだけど、質が質だからな」
レオンは魔力の入った履歴を見ながらそう呟く。普段のレオンも『魔溜の靴』の影響で結構な量が吸い取られているのだが、それでも余るほどの魔力が出ていたらしい。異常なスピードでDPが現在進行形で増えているのだ。
「じゃ、ちょっと迷宮改造といきますか」
レオンはそう呟き、DPを押し、階層のカテゴリを選ぶ。そこには様々な階層が存在していた。
「『石の回廊』に『洞窟』、『マグマフィールド』、『極寒の地』に『風なりの谷』『暗黒の回廊』『光の回廊』……たくさんあるな。しかも、全部1000以下か。とりあえず5層分買うか。といっても王都全般が一層目で、此処が2層目だから必要性を感じないな」
レオンは1層目に200DPの『洞窟』、2層目に400DP『光の回廊』、3層目に600DP『乱雑の強弱丘』、4層目に800DP『常闇の仕掛け迷路』、5層目に900DP『空間歪みの回廊』を選ぶ。
尚、全てで2900DPだ。これらは総じて階層では弱い部分に入るが使い方によっては良いものばかりだ。
例えるのならば『乱雑の強弱丘』では、先に弱体化する場所でオーガを置き油断させてからたくさんのゴブリンを強くなる場所に置き、オーガが弱かったと油断している相手を強化能力の掛かった数のゴブリンで叩きのめすというものだ。
「次に仕掛けを置いてみるか……『落とし穴』に、『遊戯の転移穴』、『バウンディングホール』……穴だけでも結構な数があるな」
複数の仕掛けをそれぞれの階に置き、魔物も適当に配置しておく。そしてレオンの目にある項目が目に入る。
「『便利物』?何だ?とりあえず開いてみるか」
その中には『迷宮出入口増加』や『ダミードア』、『視えない扉』など面白い物がたくさんあったのは言うまでも無い事だろう。
レオンは遊びと称した迷宮創りに嵌っていくのだった。
これが、王国の発展に繋がるなどこの場では誰も予想の出来ない事だった。
「キュキュ!キュ!」
髪を引っ張りながら鳴くサンの声でレオンは迷宮創りから我に返る。時計を取り出し魔力を込めると昼になっていたのはレオンを驚愕させるには十分だった。
「じゃ、城に戻るか」
「キュイ♪」
そこからレオンは水晶玉を取り出し、『迷宮出入口増加』と『無の扉』『創の鍵』の項目をタッチし、自分の部屋、すなわち城へと繋げる。
本来ならばこのような事も城のマジックアイテムが反応するのだが、アドルフが遊びで作った『迷宮』には勝てなかったらしい。
尚、消費したDPは7000程だ。
【迷宮出入口増加】
迷宮に本来1つしか存在出来ない出入口を設置する。5500DP。
【無の扉】
対になる魔道具【創の鍵】を持っている者のみが認識できる扉。1000DP。
【創の鍵】
対になる魔道具【無の扉】の存在を認識できる。500DP
「何処に設置するか……」
そう呟き、レオンは適当に一縷の望みを掛けて設定する。するとレオンの目の前には扉が現れる。
「成功だな。行くか」
「キュ~」
「きゃっ!?」
「わっ!?」
レオンが扉を開けると目の前にはイーゼとアブルがいた。
レオンは一瞬自分の後ろを見てしまうが『創の鍵』を持っていないと視認、存在を確認する事が出来ないのを思い出しなるべく自然体でアブルとイーゼに話しかける。
「……ふ、二人共どうして俺の部屋に?」
だが、レオンの反応が以外過ぎたのだろう。アブルとイーゼは不審に思いながらもレオンに話し掛ける。
「マーティン陛下からレオンへの言付けを頼まれたからよ。……それよりもどうしたの?」
イーゼは普通だったのだ。だが、流石は空間魔術師、アブルは違っていた。
「……レオン、今、本当に『転移魔法』で此処に来た?不自然な魔力がレオンの後ろにあるような気がするけど?」
レオンは反応に困ってしまう。だが、此処は何かあると断定させても答えてならないためそういう反応をする。
「ん?何だろうな?それよりもイーゼ、その言付けっていうのは何だ?」
それに訝しむアブルだったが、イーゼは何事も無かったように反応する。
「簡単に説明するとレオンには正体を隠してもらいイナグの街に1年ほど滞在してもらうという事よ」
そう、不気味なほどに。
「……何でだ?」
「レオンが来た頃は公開する予定だったのだけども……この数日で城の情勢も変わってね、レオンには1年後にある事をして貰う事になったわ。ある事というのはまだマーティン陛下から許可を貰っていないから教える事は出来ないわよ」
「ハァ、分かった。イーゼもイナグにいるんだよな?」
「ええ、勿論いるわよ。他の国がレオンにちょっかいを掛けてこないように見張るというものや、陛下とは違う派閥の貴族に良いように騙されないか確認するなど色々な任務を任されているわ。特に魔族の事に関しての事なのだけどもね」
レオンへ目配せをしながらイーゼは溜息混じりに言う。
イーゼが反応を起こさなかったのは厄介事の匂いしかしない仕事を押し付けられてしまったからだろう。
だが、そこでアブルが口を挟む。
「レオン、本当?レオンの転移時の魔力が全く感じら――」
――のだが、部屋にレオンの腹の音が響く。
「すまない。朝は簡単な不味いご飯だけで色々と熱中していたからな」
「それと今の関係は?」
「ある……訳無いだろ!」
レオンの気を抜いた瞬間を狙ってきていたアブル。
この関係性はアブルの中で決定事項のようだ。レオンは今度アブルを迷宮に誘い苦しめようと考えるのだった。
(いや、今日やるか。昼ごはんを食べた後に)
レオンは心の中でこっそりと決意する。
「アブル、イーゼ。色々と教えるから一先ずは昼ごはん食べに行かないか?前、赤髪の身長高そうで、軽い雰囲気を出している冒険者に聞いたら美味しい店見つけたんだ。そいつには初対面で魔力を威圧として出されたけどな」
苦笑いしながらレオンは二人を誘う。
アブルとイーゼは苦笑いをしながらレオンの提案に答えるのだった。
「まさか……ね」
「まさか……よね」
と言いながら。
「オークのシチュー三つだってー!お父さん!」
「だから毎回こっちに来てから注文しろって言っているだろうが!!」
「お父さんだって家で二階にいる私を大声で呼ぶじゃん!」
そして常連にとっては慣例行事となっている喧嘩は店に入ってレオンたちが注文すると、すぐにアブルの耳のすぐ後ろで喧嘩が始まるのだった。
アブル可哀そう……




