38話
38話目!!
今回はサンのユニーク魔法が活躍しますよ?
レオンは宙を危なげなく飛んでいくサンを捕まえ、頭の上に乗せる。
その行為に「キュ?」と疑問の声を出すサンだったがレオンが「完璧に飛べないなら飛ばずに俺に頼れよ?」と言うと納得したような声を出し、レオンに前、前!と頭を叩きながら進ませるのだった。
その階段は『龍の迷宮』、否、『迷宮』の入り口へと繋がっていた。
(空間魔法でここに繋げていたのか?維持が大変なのによくやるな)
レオンの思う通り、空間魔法を維持するには多量の魔力を必要とする。何故なら本来あるべきでは無い空間がこの世界に魔力によって創られるのだ。強制的に。そのためアブルは『偉大なる魔術師』では3番目に多い魔力を持っている。尚、1番多いのは序列12位のレオン、2位は先日まで序列1位だったフレデリックだ。
(ま、でも俺にとっては好都合だ。あそこを錬金とかする個室にするのもありだし、サンの土魔法で部屋を作るのもありだな)
レオンがそのように考えていた時だった、その瞬間世界に掛かっていた時魔法が無くなり時間が進みだす。
「……?レオン殿、良い宝物は見つかりまし……っ!」
「キュ?……キュキュ!」
セフィスが唐突に消えたレオンを探しにレオンのいる場所に近づいてくる。そのためレオンもサンを隠さなくてはならないと急いでローブの下に隠そうとするのだがサンはまだ生まれたばかりの好奇心いっぱいの状態だ。窮屈な所に入れられたらもちろん逃げ出そうとしてしまう。そしてそれがセフィスに見つかり……
「レオン……殿?理由を聞かせて頂きましょうか?」
満面の意味でセフィスが杖を取り出しながらレオンに問う。
もちろんそんな子供を怯えさせるセフィスの笑顔にレオンが勝てる筈無く……
「は…ハイ……」
「取り敢えずはマーティン陛下の所に行きましょうか」
レオンはセフィスに連れて行かれるのだった。もちろん謁見の間へ。
「完全に黙秘……か」
そんな言葉をレオンの目の前のマーティンが呟く。
この言葉通りレオンは謁見の間の連れてこられても完全なる黙秘を行っていた。いや、もちろんそれに触れない部分では話すのだ。今日の午前中にしていた事などは。しかし、龍の話題に触れた瞬間レオンは黙ってしまう。これが悩み事だった。もちろん王命としてレオンに拷問させて、レオンに無理矢理吐かせると言いった方法はある。現に今も『転城石』を持っているデューイに来て貰い、ユニーク魔法『審判者』で吐かせようとしているのだ。だが、何かによって『繋がりを断たれて』いる。
これはサンのユニーク魔法『絶縁者』の効果だ。これによってレオンはデューイの『審判者』との繋がりを断たせてもらっているのだ。
(デューイには悪いな)
そうレオンは思う。だが、後で何かやれば良いだろうと結論を出しマーティンに話し掛ける。
「言っておくが俺はお前を裏切った訳では無い。だから一応契約に『マーティンとシシャルミア王国に害を成す事をしない』を付け足して置く」
そこでレオンは一言、二言と呟く。するとマーティンには契約がしっかりと行われたのが判った。そしてレオンを見据えてからマーティンは溜息を吐く。
(取り敢えずレオンが俺たちに悪い事をした訳では無いのは分かった。だが今度は『時止め』に龍か)
マーティンがそう思っていると唐突にレオンが一冊の本を取り出す。だが、マーティンが王家の者だからだろう、すぐにそれがエイブラハムの魔力の塊で出来たものだと分かった。しかも恐ろしい程の高純度の。
「ま、悪い事はしただろう。デューイにもな。だからといって事情を話す訳にはいかないけど……お詫びだ」
そう言いレオンは本を開き適当に紙を破る。それは奇しくも龍魔法の上級に入る『星々の明石』と竜魔法の最上位に入る『獄煉橙蛇』という魔法だった。レオンとしては24時間で魔法陣が再生するのでなんの損害も無いのだが、龍・竜魔法の資料が殆ど存在していない彼らにとっては違った。レオンはその二つの紙を『念力者』の力で『星々の明石』をマーティンに、『獄煉橙蛇』をデューイに渡す。
「一応それ国宝にはなると思うぞ?ま、マーティンの方は迷惑料として、デューイの方は罰金と迷惑料にしてくれ」
二人は何も解っていないようだったが魔力が異常に込められたものだと理解し受け取る。
この時レオンの目にセフィスが魔法陣の意味が解った上で驚いた顔をしているように見えたのは気のせいだろう。
「あ!そういえばアブルとイーゼのいる場所に入っていいか?少なくとも手助けにはなるだろうし」
その言葉にマーティンは驚く。
(何故治療中だとレオンが知っている?言った覚えは無いぞ)
「ああ、サンの魔力が在れば二人も目覚めると思うぞ?」
だが、その驚きを顔に出さないマーティン。そこは王として賞賛すべきだろう。
そしてレオンはマーティンの言葉を聞いた後二人のいる場所へ空間転移するのだった。
尚、レオンの渡した魔法陣が驚きを顔に出さないマーティンを気絶させ、デューイをいろんな意味で苦しめるのだがそれはまた別のお話。
城の治療室。そこにアブルとイーゼは横に寝かされていた。二人共身体に影響は無いようだ。しかしこの二人が起きない理由。それは『幻術』で見せられている幻が心地よすぎて現実へ帰るのを拒否するというものだ。
治すには幻術の魔力を体から取り除くのだが、生憎魔族に勝てるような回復魔法を使う者は年単位の緊急の用事で今は城にいない。そしてセフィスも、魔力を取り除くのでは無く、怪我を回復・薬草の調合・攻撃と防御の魔法しか使えないため術者たちはもう降参している状態だった。
「ふーん。ま、幻術をそういう風に使ってたからな。あいつは。だから俺も怒った訳だし」
そこへ空間転移でやってきたレオンは呟いた。
「キュ♪」
「うわっ!」
「きゃ!」
「誰だっ!」
驚き方も人それぞれ。驚く内容も人それぞれ。
レオンは治療中のアブルたちの元へとやってきて鑑定眼で視てからそう呟く。
サンは初めての転移に機嫌を良くしている。
「何でも無いよ。一応陛下に許可は貰っているから」
今の自分はローブも来ていないただの一般人。そう判断して陛下と呼ぶ事にする。だが、治療しているのは一部の者しか知らないためレオンの言葉を信じ治療を再開する。が、そこへレオンが口を挟む。
「言っておくけど二人の意識は根源……要するに魔力だな。を取り除かないと戻らないと思うぞ?」
「何を言っている!こうやって回復魔法を使っていれば……」
「目覚めかったんだろ?どんなに回復魔法を使っても、薬を飲ませても。ちょっと俺に任せてくれよ」
「キュキュ♪」
何も知らない子供に口を挟まれるのが癪に障ったのだろう。怒りに任せて言い訳を言おうとするが結果が結果だけに途中で口籠り、歯切れを悪くする若い男性。尚、この若い男性とはこの場であって年齢としては30代半ばだ。
「小さい子供が何も出来る筈が無い。もし、危害を加えるのならば斬り捨てる」そう判断し、リーダーのような男性はレオンを近づかせる事にする。もちろん自分は彼の近くにいるのだが。
「ったく、『偉大なる魔術師』のくせして夢に溺れるって格好悪いな。ハァ。じゃ、サン頼むぞ」
「キュ!」
「っ!……」
レオンはサンに頼みアブルの懐に置く。尚、この時レオンの言葉に治療者たちが怒ろうとしたのだが、レオンが面倒臭いと思い魔力で黙らせたために静寂がこの部屋に広がる。
『キュイキュイ』
龍でいう魔語なのだろう。魔力の籠った言葉を呟きアブルに触れるサン。
今回サンが使ったのは魔法では無く特殊能力の『絶対遮断』だ。その能力は物でも魔力でもはたまた錆がこびりついている剣を、錆と剣に絶対に遮断、分離できるという能力だ。一応限度があるのだが、サンの魔力を考えると未知数といえるだろう。
(このユニーク魔法があったらサンには絶対に合成魔法は効かないだろうな)
レオンがサンのユニーク魔法に対しそんな事を思っていると『絶対遮断』が効果を表し始める。
大好きなレオンに命令されたサンは褒めて貰うため一生懸命頑張っていた。
最初に、二人の魔力の中に二人とは違う魔力を見つけそれを自分の魔力を流して一ヵ所に集める。
次に、一ヵ所に集めた魔力を自分の『絶対遮断』により孤立させる。
最後にもう一度『絶対遮断』を発動させてアブルと変な魔力を、イーゼと変な魔力を分離させる。
「キュ?……キュキュ!」
「出来たよ?褒めて褒めて~」とレオンのローブに顔を擦り付けてくるサン。レオンはそれに微笑ましさを感じながらサンの少しだけ金色に輝いている冷たい鱗を撫でる。
「キュ~」
それが気持ちよかったのだろう。サンが抜けた声で鳴く。
「んぅ……ん?あれ、ここは……?」
「アブル様!イーゼ様!」
そんな二人の声で起きた訳では無いだろうが二人は目を覚ます。それに気が付いたレオンは、サンのお気に入りの場所となっている自分の頭の上に乗せてから二人に話し掛ける。
「おはようアブル、イーゼ。随分と幻術に惑わされていたみたいだな」
「その声はレオンか。なん……っ!ってなんで龍がいるの!?」
「あー、これはその色々とあってな……」
「キュ!」
「自分は龍では無くサンだ!」とサンは胸を出しながら威張る。
レオンはそんな二人の被った突っ込みに歯切れを悪くしながら答える。
「じゃ、俺はマーティンに報告しにいくから!後、俺の部屋がこの城の6階の所にあるから……ブレンダ!」
「はい!」
一瞬で現れるブレンダ。
「二人を後で部屋に入れといてくれ!」
「かしこまりました」
レオンはなるべく人を入れたく無い性格だが、二人は仲が良いと思ってはいるので一応招く。
「……あいつは何者なんだ?」
レオンは治療者たちに怒られるものか、とレオンは二人に自分がこれからやりにいく事を言ってから速攻で転移するのだった。
皆様にお知らせを!!今日は10時も投稿したいと思います。




