31話
31話目!!
それと、11月14日に学校でテストがあるため、それまでは更新頻度が遅くなります。予約投稿などを使って3日に一回といった感じでしょうかね。
では、31話もお楽しみください。
暫くするとレオンの部屋に段々とクッキーの焼ける匂いや、紅茶の匂いが立ち込めていく。
その匂いに準備が終わったと反応したレオンが錬金魔法の本をパタン、と音を立てて閉じ、それと同時にブレンダが高そうなお盆にクッキーと紅茶を乗せ持ってくる。
「持ってきました」
と言って。だが、レオンはそこであることに気付き、ブレンダに言う。
「口調、柔らかくなったな?それとクッキーと紅茶は何味なんだ?」
その言葉を聞いたブレンダは先ほどまでの硬い口調とは一変、感情豊かな口調でレオンに文句を言う。
「先ほどレオン様が直せと言われたからです。侍女にはそういう対応も必要ですから。一応先ほどの対応が侍女にとっては普通なのですよ?それとクッキーの味付けは砂糖などのシンプルなもので、紅茶はルプルの実から搾り取った果汁を中心に作られたものです」
「俺みたいな対応のさせ方をさせる貴族はいるのか?それと、クッキー美味しいな」
クッキーを食べながらブレンダに質問をするレオン。その光景は小動物が小さな口で一生懸命にクッキーを食べている姿にも見え、ブレンダは心が穏やかになるのを感じる。
「ほとんどいません。というか貴族の見栄って所ですかね?私も人前では一応しっかりとした口調をとらせて頂きますよ?しかし、侍女にこういう態度をさせる貴族の方々は侍女間では噂になり人気が出ております。後、クッキーは私自身が有りますので褒めていただき嬉しいです」
その言葉にレオンは紅茶を飲みながら眉を顰める。
「侍女に人気って面倒臭い事になる未来しか想像出来ないな。例えば、横暴な貴族の坊ちゃんとかに茶々付けられたりとか?自分でも自覚してるからな、この容姿は」
それに付け加え「ローブを着てなくちゃ面倒臭そうだな。でも、ローブを着ていると面倒臭い」と一人で呟くレオン。だが、レオンは機嫌が良くブレンダにとって嬉しい事を言う。
「なあ、ブレンダ」
「何ですか?レオン様」
そこでレオンは口に出すのを躊躇うように一拍置いてから口を開く。
「……明日から部屋入っていいから時々クッキーとか紅茶とか作ってくれ」
その言葉にブレンダは仕事が出来る事への喜びを露わにしながら、「はい!」と威勢良く返事をする。
その頃アレックス達は……
「兄ちゃん!僕、新しい魔法考えたんだ。名前は『創造砲』でね、破壊が出来るなら創造も出来るかな……って、お兄ちゃん聞いてる?」
「……う?……うん。で?何だ?」
ぼーっとしていたアレックスはアゼルの声を掛けられ、我に返る。
「聞いてないじゃん。じゃあ、後で話すよ。どうせまた考え事に入るでしょ?」
そう言いアゼルはまた本を読み始める。ベッドの上アレックスは本を読んでいるアゼル見て、また昔の事を思い出していた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
暗い部屋の中。そこで、自分たちは復讐の方法を考えた。
「兄ちゃん、まずはさ、いじめを使って『遠吠えの谷』まで連れて行ってもらってそこで魔法を使うってのどう?」
「何の魔法だよ。というか近場で良くない?」
何故遠くまで行くのか?そう疑問に思った自分。だが、アゼルは自分よりも復讐に心を燃やしていたのだと思う。自分では思い付かないような事を、流石に自分でも躊躇するような復讐の仕方をたくさん考え付いたのだから。
「それはね、事故死って事で」
アレックスは息を飲んだ。
その音は狭い床下部屋の中で異様に響いたように聞こえた。
学園が終わる時間になり今日は自分の『精神操作』で仕込んだ通り『遠吠えの谷』まで強制的に――仕組んだ事ではあるが――連れていかれる事になった。
遠吠えの谷。そこは狼の群れが巣くっている少し深い谷で、エルフの民でさえも緊急時以外は近づく事を躊躇する場所である。何故なら、その狼とは『戦闘狼』と呼ばれるCランクの魔物で、群れではAランク指定されているがこの谷では群れの大きさなどを考えSSランク指定されている場所である。そして『戦闘狼』が忌避されているのはそのランクに相応しい戦闘力……では無く、群れの統一性だ。本来なら『戦闘狼』とはDやEランク程の強さの個体なのだが、常に複数で行動しているためこのランクになっている。それが何百、下手したら何千という群れで襲ってきたらどうなるか?討伐はSランクでも難しいだろう。尚、ランクとは下からH・G・F・E・D・C・B・A・S・SS・LEランクまである冒険者ギルドで決められたランクである。
そんな場所へ自分らは連れてこられていた。普段であればいじめをする者たちはどんな事があってもこんな場所へは来ないだろう。しかしアレックスの『精神操作』によって『今日、あの目障りな二人を殺す』という思考を埋めつけてここへ連れてこさせたのだ。
ドサッっと物を落とした時に出るような音を出して二人はいじめをする者たちに崖に入る一歩手前の場所に投げられた後、腕以外の拘束を解かれ、罪人のように崖へ進むように命令される。
「ほら、行けよ?ここがお前等の処刑場だ。狼に血一滴、肉片の一欠けらも残されないように喰われるんだぞ?」
(食われるのはお前等だ)
いじめのグループのリーダーに先に行くように促されそう思いながら歩いていった自分。
「………」
「霧が深くなってきたな。ようやくお前等が食われる時間だ。……こいつらが襲われたら走って谷の外に向かえ!俺達まで巻き込まれる事になるぞ」
自分たちは静かに歩き続けていた所、リーダーが前半は自分たちに。後半は付いてきたグループの人らに言った。
もう遅い。それを聞いた自分はそう思った。
そして自分はアゼルと目を合わせ作戦の開始をしてからこう呟いた。
「この場所はもう俺たち領域なんだよ!……『ファイヤ』『暗黒の呪印』」
まず、魔法適正は無いが、火の魔法で縄を焼き切り自分の怨念(努力)の成果を。そしてアゼルも呟いた。
「『風斬刃』ついでにいじめをする人にもあげるよ。今度は違うけど……『破壊砲』そして『虚無の呪印』」
次にアゼルが『風斬刃』が縄を斬り、『破壊砲』で武器を破壊。『虚無の呪印』を使う。
「おまっ!何出来そこない(おまえら)如きが逆らってんだよ!」
「あまえらはここで死ぬために来たんだよ!そんな音を出していたら狼に喰ってと言っているようなものだぞ?そんな事も知らねぇのかよ?」
一秒ほどで使われた二人の魔法。そして飛んでくる罵倒。しかし二人はそんな罵倒を無視し、急に大声を上げて笑いだす。
「ははははははっ!」
「何急に笑ってんだよ?」
そこでアゼルは言った。冷酷に、残酷に死亡宣告のようなものを。
「さっき兄ちゃん言ったじゃん。『ここは俺たちの領域』って。そしてさっきからクズのような君たちが大声で僕らを罵倒しているのに狼が来ないじゃん。気付かないの?でも、大丈夫、僕が……殺してあげる」
狂喜の顔とは今のアゼルの顔なのだろう。そんな事を自分は思っていた。
そして、そんな顔を見ていじめる側も怯えている。知性ある生物は未知に恐怖を抱くものなのだから。
なぜ狼がいない?何で出来損ないに負ける?何で武器を持っている?どうやって狼を殺した?
このような疑問で頭を埋め尽くされたように見えるいじめる側。
今、蹂躙が始まる。……の
急に笑い出すってどんな場所でもどういう理由があっても怖いですよね。しかも「あははは――」ですよ?恐怖です。
それと、明後日位にはまた更新可能かと。
では、次更新する日まで。




