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神槍使い  作者: 怠惰な男の子
2章~偉大なる魔術師(仮)~
23/58

21話

21話目!!そして今日2話目!!

20話と合わせると4398文字+3388文字

合わせて7798文字です。

1万字には及びませんでしたが、21話もお楽しみ読んでくださると嬉しいです。

 アブルは夢のようなものを見ていた。

 子供の頃に友達と摸擬戦をした夢、学園に通った頃の夢、戦争の夢、魔物を殺す夢、友人とも呼べる人が出来た時の夢、好きな人を、淡い疼きが心の中に芽生えた時の夢。

 いろんな時代の夢が流れていきまた新しい夢が出てくる。


「今度は『偉大なる魔術師』になった時の夢か」


 心地良い夢の中で彼は次の夢を、その頃を思い出しながら幸せな時間を送っていた。

 もうずっとこのままが良いなという願いを胸に抱きながら。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


空を飛ぶ敵を駆除していたイーゼは苦戦していた……否、敵に苦戦していたのではない。味方に苦戦していたのだ。


「アブル!どうしたの!?なんで私達、味方に攻撃するの!くっ!」


 イーゼは真正面にいるアブルの攻撃を杖で受け、吹き飛ばされた。

 そして民家の壁に叩きつけられその勢いは止まる。


(話し掛けていてもきりがない!それにアブルが今かかっているのは深い幻術。やっぱり治恵に来てもらうしかない!)


 そう判断したイーゼだったが、連絡をしてみても魔力の繋がりを感じられず困惑する。

 そしてその時気が付いた。


(アブルの魔法でここら一体が隔離されている!?)


 完全に後手に回ったイーゼ。その間もアブルはイーゼに攻撃を仕掛け続けていた。



 イーゼはアブルと別れた後は敵を探し、敵を倒していた。そして『火の支配者』に恥じないような魔法を使い簡単に敵を葬り去っていた。途中までは……

 最初に異変に気が付いたのは移動している最中だ。

 十数分前に敵を効率良く倒すために別れたアブルがこちらに向かってくるのが見えたのだ。その時は「何かトラブルでも遭ったのかな」という軽い感じでアブルを見ていた。その後にイーゼは今交戦していた敵を倒し終わり、アブルの方へと走った。そしてその距離が十五メートル程になった時に唐突にアブルは剣の柄に手を掛け、呟いた。

 その瞬間イーゼは後ろに跳んだ。

 そしてイーゼがいた場所には『空異の跳剣』が剣の途中から存在し、攻撃が外れたのを確認するとその刀身は元の場所に転移していった。

 その結果からイーゼは知っていた。あの呟きの意味を。

 イーゼは知っていた。その後に起こった出来事でその呟きが何だったのか。

 そしてイーゼにアブル自慢の『空異の跳剣』の先が向けられた先に起こった事は……


「聞いてる!?なんで私に職技なんて使うの?明らかに殺す気だよね?『抜刀術:太刀転斬』なんて職技を使ったから!」


 職技『抜刀術:太刀転斬』。その技は名前の通り抜刀術の部類に入り、剣が鞘に入っているときに使える技だ。その内容は遠距離から転移魔法『物体転移(アポート)』を使った太刀の抜刀術だ。その威力はアブル本人の技術に、職技の影響で物凄く強い。

 こんな技を使ったアブル。またイーゼの問いにも心此処にあらずと言った感じで魔法・職技を絶妙なタイミングで使ってくる。


「はっ!」


 しかしそんなアブルにイーゼも護身術程度、否、一般の剣士など話にならないレベルの杖術で吹き飛ばす。

 だがアブルはすぐに空中で態勢を立て直して魔法を使う。酷く無機質な声で。


『その空間は今、時が止まる。故に足場となれ』


固定空間(ストップ・ワールド)


 魔法でイーゼに勢いを付けて飛びかかる。そしてアブルが落ちる筈だった地面では無詠唱で放たれた『炎球』が地面を破壊する。

 そのいきなりの方向転換についていけなくなりイーゼは咄嗟に杖を前に振り落すが……


『小規模転移』


アブルが魔法を使い転移をして杖が通ったのは虚空。

そしてそれに焦ったイーゼがその場から離れようとする。それが功を成したのだろう。ブンッ!!と音を鳴らしながら通り過ぎたのもイーゼの杖と同じく虚空。

 アブルはイーゼの真上に転移していたのだ。そしてまた転移した。


「残念ながら私には当たらないよ。私の方が一つ分も位が違うから。『偉大なる十属性の魔術師』にとって一つは大きいから。アブル、ゴメン気絶してもらうよ」


 イーゼの後ろに転移した筈なのに、いつのまにかアブルの背後に移動していたイーゼがアブルに手刀を入れ気絶させようとする。

 そして、アブルは魔法や職技を使って魔力が消費しているため反応が一瞬遅れた。


「残念。それはさせないよ!」


 一瞬の判断でその場を跳び退ったのは長年の勘なのかもしれない。もし、もう一度やれと言われたら出来ないと思う位に。

 だが、それだけの援護である闇属性の魔法が何時の間にかイーゼの体に命中しようとしていたのだ。


「誰っ!?」


 イーゼの前、アブルの横に立ったのはアブルが先ほどあった魔狐の女だった。

 その姿を見た時イーゼは一瞬で悟った。こいつは魔族で魔狐という事とアブルが攻撃をしてくるのは幻術を見せられているからという事を。


「仲間同士で殺し合うのは良いね~。さ~て、これで二対一。勝てると思うの?」


(アブルと一対一なら。本気を出せば勝てる。でも、あの女の魔力、私じゃ無理。やっぱり此処は逃げるしか……)


「逃げるなんて無理に決まってるでしょう?」


 そんなイーゼの考えが焦って顔に出ていたのだろう。ミリアムは攻撃をアブルと共に仕掛けながら言う。


「何……!」


 だがイーゼは気付いてしまった。先ほどの行動を思い出して。すなわち……


「このアブルって子に空間を隔離して貰っているからね!だから空間に入って来れるのはアブルって子より空間の魔法に長けた人だけ!でもこの子が王都で一番空間の魔法に長けているから無理だね!アタイの勝ちよ、貴方もアタイの奴隷になりなさい!」


 そこからはまるでいじめのようだった。

 イーゼが魔法を唱えようとすると二人に挟み撃ちにされ魔法を中断せざる終えなくなり、近くまで来ると少し嗜んだ程度でしか無い杖術で攻撃する。しかし、それを本職としたアブルには到底敵う訳がなく、しかもミリアムもいるためイーゼの体の傷はミリアムの打撃による打撲にアブルの大太刀による切り傷が時間の経過と共に段々と増えていく。さらに詠唱の暇がないため無詠唱で魔法を使い、魔力も著しく無くなっていく。


「『散爆(ボム)』!ハァ、ハァ、アブル!やめて!」


 そんな中でもこういう風にアブルに話し掛けるが返ってくるのは……


「………」


 無言のみ。

 そして話し掛ければ掛ける程息は切れていく。それだけでは無く隙も大きくなり攻撃の回避が間に合わず無理矢理に体を酷使して、さらに疲れるという悪循環に陥っていた。

 そのためイーゼはアブルが死ぬのを覚悟した上で、今無詠唱で撃てる一番強い蒼炎魔法を撃つため隔離された空間の端まで一気に下がる。


「ふっ、何をしても無駄だよ!」


 イーゼはその言葉と共に駆けてくるミリアムとそれに付いて来るアブルを無視して蒼炎魔法に付与魔法を付けて撃つ。


「アブル!ごめん!『領崩㷔(サークルインフェルノ)付与(エンチャント)威力増強(ハイパワーマジック)”』」


 イーゼはこの魔法が終わった後に気絶する――魔力を使い切ると気絶する――覚悟で魔法を撃った。

 そんなイーゼの覚悟を呼応するように蒼い炎はイーゼの周りを囲むそして意識が朦朧としているイーゼが……


『終焉』


 と呟いた瞬間に三つの出来事が起こった。

 一つ目はイーゼがもう一つ『終決』と呟き倒れた事。

 二つ目はミリアム達を蒼い炎がサークル状に囲み爆発した後に爆発した炎が二人を中心に集まりもう一度爆発した事。

 三つ目はある者がこの空間に入り込んだ事。

 そして爆発の後には何も残らなかった。


「危なかったわ。アブルがいたから生き残れたし」


 その場には……だ。

 ミリアム達は転移魔法を使って被害が無い場所に移動し、爆発を免れたのだ。

 そしてミリアムはイーゼの元に歩いていき「『幻術発動』」と呟き舌なめずりをした。「これで二人目」と。


ギィィン!


 その瞬間ミリアムの首を目掛けてある物が飛来し、それをアブルが防いだ。

 それを行った者は飛来させた武器をユニーク魔法で手元に戻し、武器を『操られている者』では無く『本当の敵』に向けて呟いた。


「まさか幻術で人を操れるとは思わなかったな。でもアブルもイーゼもお世話になっているからな助ける義務位はあるだろ」


 そこで彼は息を吸った。いつもみたいに少し笑みを浮かべて。

 そして宣言した。まるで散歩に行くような穏やかな声で。

「ま、人を操ったからには地獄でも見せてやるよ」

 彼、レオンはマーティンに渡されたローブを着てブリューガングを『念力者』で操りながらミリアムに向けて構えた。


魔法などの更新は夜に行います。

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