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神槍使い  作者: 怠惰な男の子
1章~異世界へ~
16/58

15話 ギルドカードだ!!なぜ城に?

15話目!!

今回から物語が大きく動き始めますよっ!!

なのでここで章をここで切っても良いのか不安だったのですが、ここから2章に突入しました。ただ、2章の題名はまだ決まっていなかったため決まるまでは無題名になります。

これからもよろしくお願いします!!


レオン達はスラムの住人、言ってしまえば盗賊擬きを倒した後ギルドに行くとギルドマスターであるイーゼに呼ばれギルドマスター室に来ていた。


「ハァ……アブル久しぶりね」

「はい、なんですか?『偉大なる魔術師』のイーゼさん?」

「ちょっ!私がそれだって秘密にしているのに……」


 そこでイーゼは違和感を覚えた。自分の正体が分かったのになんの反応を起こさないで欠伸をしているレオンに……


(ということはこの子は私の正体を知っている?でも私が『偉大なる魔術師』だということを知っているのは他のメンバーに一部の貴族。それに冒険者時代に親しかった仲間とかだけの筈。もしかして他国のスパイなの!?)


 レオンについて考えているとイーゼが勝手に翻訳機と思っている――アブルはもうつっこむのが疲れたため放置していた――アブルからイーゼの考えている事を反対する声が聞こえてきた。


「残念。イーゼが考えている事は全部ハズレだよ。レオン面倒臭い事になるから色々と話して。僕が全部説明するよりもレオンが説明した方が良いと思う」


 「面倒臭いからって急に俺に押し付けるなよ」という言葉をレオンは飲み込んで事情を話す。


「ついさっきに此処に……ギルドマスター室に来たじゃないですか?その時に俺が去った後にプーサと話していましたよね?」


 イーゼはこの時内心びくびくしていた。その話はレオンに聞かれないためにレオンを追い出したのに、何故聞かれているのか?聞かれたらやばい。そんな思いがイーゼの中でぐるぐると回っていたのだ。

 だがイーゼが焦っていると話が進まないためレオンが口を開く。


「別に俺の身辺を調査した所でなにも出てきませんから良いですよ。それに……ほら、今俺怒っていないじゃないですか?それに俺はこのレナグに拠点を構えるつもりですし。辺境だから」


 この言葉で一番安心したのは誰よりもイーゼだっただろう。この大事な時期に街に来た貴重な戦力を逃したく無かったのだから。反対に一番損をしたのは国王の命令でこの街などに回っていたアブルだろう。このまま王都に連れて行き、できれば王都に滞在して貰おうとしていたのだから。

裏切りは?と思う者もいるだろうが魔道具やマジックアイテムで思考が読めるため心配ない。もっとも、心の奥底にある無意識レベルの考えは読めないため不安は残るのだが。

 そのためイーゼは喜色に顔を染め、アブルは溜息を吐く。だが、レオンの次の言葉でその表情は正反対のものになる。


「なにもなければ……っていう前書きがつきますけどね」


 悪戯っ子のような黒い笑みを浮かべながら言うレオン。

 その言葉一つで二人の表情は反対のものとなる。


(何気に二人ってお似合いだよな)


 レオンは笑いながらアブルとイーゼを見据える。そこには何だかんだ言って互いの顔を見て笑い合っているアブルとイーゼがいた。


「それは別としてなんで此処に呼んだの?」


 今の言葉は聞いていないと話を進めるアブル。イーゼと雰囲気は良かったが、そこだけは譲れないのだろう。


「そうね、一つは礼……かな。うちのギルド受付嬢を助けてくれたから。もう一つはレオン君に関しての事……このことに関しての内容は二個ね」


 こっちもそういう事にしたらしい。


「礼は分かりますけど、俺に関して……とは?」


 レオンは一々反応していると話が進まないので反応をせずに疑問を口にした

 その言葉を聞いて「そう!」とでも言いたそうなイーゼ。だが口調は深刻で、内容は結構やばいものだった。


「レオン君。あなたがこの街に入ってきたのは今日で何日前?」


 そう言われ過去と呼べる記憶は少ないが、振り返るレオン。


(まずデューイに潰された日、ギルドに来た日、もう夜中だからついさっきで三日目、今日で四日目……)


 そこで大事な事を思い出すレオン。


「あ……今日で四日目だ。そういえばデューイが三日までって言っていたよな」


 デューイに言われたこの街に滞在していい日は三日。凄くやばいことだ。


「えーと、三日過ぎるとどうなるのですか?」


 恐る恐る聞くとレオンにとって致命的な言葉が返ってくる。ちなみに後半の言葉は綺麗に流された。


「最悪の結果から言うと、この街にはある事が解決するまで入れなくなる」


 即答で答えるアブル。

 だが、それをイーゼは否定する。


「最悪の場合よ。それに、ギルドカードを見せればレオン君の場合は金貨二枚位なんじゃないかしら?」


しかしこれもレオンにとって最悪だった。金貨二枚払うと、ヴェルから貰った分を含めても全財産が白金貨一枚に、八枚、銀貨一枚なのだ。全財産がこれでは少ないという訳ではないのだが――そもそも白金貨一枚で数か月は大丈夫だ――もしもの時を考えると少ないとしか思えなかった。

 それに悩んでいるとギルドマスターことイーゼからさすがギルドマスターといった案が挙がった。


「だったら依頼受ければ良いじゃない」

「えっ!ギルドカード貰っていないですけど?」

「えっ?」


 この言葉でイーゼは暫く考えた後、納得した表情をしてギルドマスター室から出ていく。

 レオンが急に出て行ったイーゼに茫然としていると、アブルが真面目な顔をして話しかけてきた。


「ねぇレオン。王都に行くと約束してくれたでしょ?」

「ああ、それがなにか?」


 レオンはここで「忘れないで」と言われると思っていたが、予想とは全く違う答えが返ってきた。


「イーゼが帰ってきたら今すぐ行くよ!レオンにもちょっと手伝ってもらうから。僕のそばにできるだけいて」

「どういう――」


 バタンッ!!

 ドアを思いっきり閉めドタドタッと走ってくる音が聞こえる。


「アブル、行くわよ!後レオン君ギルドカード!」


 そういいながら渡されたギルドカードにはプーサのギルドカードにも書いてあった名前、年齢、職業、冒険者ランクが書いてあった。


名前  レオン

年齢  十二

職業  無職

ランク E


 何故アブルやイーゼが焦っているのか分からないレオン。

 しかし現実は無常にもレオンを置いて進んでいく。


「アブル!レオンはどうするの?」

「もちろん?なのかな?まあどちらにせよ手伝ってもらうよ」

「アブル、イーゼさんなにかあっ――」

「僕に触って!」

「はい!」


 アブルはレオンに叫び、レオンが自分に触った瞬間手の中にある石をギルドマスター室の大理石の床に叩きつけた。

 それはいつかの石ように怪しい光を発するのではなく、翠色の光を発してから二人の手の中に戻って、光がさらに強くなる。


(あれ?イーゼって何時着替えたんだ?)


 光が最高点に達し、ふとイーゼを見たレオンが思ったのは「この石はなに?」などではなくこれだったそうだ。

 光が収まった時にはそこに三人の姿は無かった。


 此処は王都パウラスにある王宮の一室。名は『魔術師の転移(てんい)()』。使用用途としては、名前の通り『偉大なる魔術師』に配られているマジックアイテム――名を『転城石(てんじょうせき)』という――の転移先だ。この魔道具は緊急の事態の時に迅速に『偉大なる魔術師』達を集めるために、今度は魔道具の『魂通(こんつう)のイヤリング』――ダンジョン産であり、効果は魔力を流すだけでどんなに離れていても念話が出来る――で念話をし、召集するための物だ。ちなみに王宮には必ず二名以上の『偉大なる魔術師』が常駐している。

 今まで全員が呼ばれた例としては、『ズーサティン連盟国家』との戦争時や、Sランク魔物の、『獄㷔(ごくえんちょう)』『多頭邪竜(ヒュドラ)』が現れた時などだ。


 【獄㷔鳥】

  地獄にあるような黒い焔を操る鳥のためこの名前が付けられた。その性格は非常に獰猛で目に入った生物を全て殺し、燃やし尽くす。また、別名『ダンジョンの鳥』と言われ、基本的にダンジョンでしか発見されておらず地上で発見された場合でもダンジョンからでてきた個体のみだ。略して『ダン(だんちょう)』と少し遊び心を入れられている。


 【多頭邪竜】

  頭が八本あり、それぞれの頭はこの世にある下位十三属性の内の火・風・水・土・雷・時・治療・闇を司っている。しかし、これはあくまで普通の場合で、個体によっては上位属性を操る。倒し方としては治療→時→闇……と倒さないと、治療で回復されてしまい、時で時間が巻き戻され、闇で精神攻撃をされてしまうのでこれが定石。また、それぞれの首が別々の意識を持っているため弱点と呼べるものは光属性の攻撃しか存在しない。単独では討伐不可能と呼ばれている別名『傀儡師(くぐつし)


 ちなみに下位十三属性――基本の属性――とは無・火・風・水・土・雷・氷・時・空間・治療・光・闇・付与だ。下位があるという事は上位があり、上位は虚無・蒼炎・嵐・激流・大地・紫電・氷寒・時間・異間・治恵(いやし)・白・黒・支援付与(バフ)阻害付与(デバフ)――上位になると付与は弱体化させるのと、強化するのが得意な者に別れる――という風になっている。その他にも特異属性と呼ばれる魔法が存在するのだが後々話すとしよう。

尚、下位はだれでも努力をすれば使えるようになるが、上位は魔法適正がなければ、どんなに頑張ってもできるようになる事はない。しかし上位の魔法を使える者は殆ど、全くいない。なぜなら適正があっても修業する時間が足りないだとか、その属性が開花する事が無かったためだ。

 なので、レオンの目の前にいる二人、正確には上位属性を使える『偉大なる魔術師』は一人で都市を壊滅させる事も可能なのだ。

 もっともそんな事をするような者はいないが……

 だが、今レオンの目の前で「びっくりしただろ」とも言いたげな表情をしているアブルでも凄い、それもシャルミア王国の住民では知らぬ者はいないほどに。


「おもしろいでしょ?これがコストを度外視して作った、何度でも使える『転城石』の能力だよ」


 だがレオンは既に鑑定眼を通して知っているので……


「だから?」


 となる。そんなバカな事をしているレオン達をイーゼが叱る。


「アブルいい加減にやめなさい!今は緊急時なのよ?行くわよ。レオンは途中まで私の後についてきて」


 そう言うと二人を置いて部屋をでるイーゼ。

 それに習いレオンも部屋の外に出ると高性能な耳が城内も騒ぎ声を正確に聞き取る。


「ダンジョンが『氾濫』を起こしたぞ!早く配置に着け!」

「これで今年に入って何回目なのかしらね?」

「これが大規模なダンジョンの近くに王国を作ったからの宿命なんだろう」

「また魔王の仕業だろうか?」

「『獄㷔鳥』がいるらしいぞ!気を付けろ!」


 色々と聞き逃せない単語がたくさんある騒ぎだった。しかもレオンはこの戦いにアブルのせいで巻き込まれる事になった。

 本人曰く、「また俺の休みが消えた」だそうだ。



今日の一話目!!

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