狭間の夢
『……姫様』
自分が見つけた探し人は、もう使われていないはずの旧時計台のふもとにいた。
うららかな日差しの下で、綺麗なドレスの裾が汚れるのも厭わずに地面に座っている少女は、じっと目を閉ざしていた。
『……あら、よくここがわかりましたね』
自分の気配に気づいて目を開いた彼女は、自分を見つめて微笑んだ。
『さすがに、一人では危険かと』
『大丈夫ですよ。*****もついていますし』
そう言った少女の微笑は、可憐な花のようで、しかし、どこか寂しそうな色をしていた。
『……ここは、わたくし達の思い出の場所なのです』
『姫様、方の……?』
複数形……つまり、他にもいたのだろうか。
彼女が心を開き、一人でこうして浸りたくなる思い出を作った相手が。
『……ごめんなさい。今は、そんなことができる状況ではありませんでした、よね』
『……いえ……こんな時だからこそ、そのような時間も必要でしょう』
本当は、彼女の言う通りなのだが、それでも、何かと無理をし過ぎる彼女の数少ない自由を、邪魔したくなど無かった。
『……ありがとう、*****』
悲し気な、けれどその感情をも懐かしむような微笑。
普段は見られない、そんな感情を引き出せる、名も顔も知らない誰かのことが、少し羨ましかった。




